あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

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第4部 グランダ魔道学院対抗戦

第94話 出場者変更!

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いいなあ。対抗戦第五戦で。

古の魔女と。

真祖吸血鬼が。

口喧嘩で勝負。
まあ、そっちに誘導したロウが見事だったとほめてあげたい。
本気で自慢そうなロウだったが、ぼくは取り敢えず、にっこりしただけで、ほめてはやらないことにした。

だって結局、負けてるし。
ラウルが、「さすがはザザリ、わたしとロウが一人に戻っても勝てないかも・・・」と見当違いな感心のしかたをしていが、口喧嘩ってそういうものではないよね。




「それでは、これからドロシーの快気祝いをいたします。
アルコールがイケる方は、アルコールを!
そうでない方には、とっておきのケルビン茶を容易いたしました!

みなさん、グラスをお手にお取りください!
では、か」

ルールス分校が借り切った屋敷のリビングだ。
いつもよりお料理はちょっと豪華だぞ。

お酒もたくさん容易した。

「ちょっと待て!」
この中ではわりと常識人のルールス先生がとめにはいった。
となりには包帯姿もいたいたしいネイア先生が傅いている。
「なんで、エミリアと戦ったリアとやらもここにいるんだ!」

「いや、なに。リアも退院できたので、一緒に快気祝いをしようか、と。」

「なら、なぜドロシーと戦ったジウルがいる!」

「いやだなあ、ヨウィスだっていますよ。」

「まあまあ、おめでたいことは一緒に祝いましょう。」

「・・・というか、ウィルニア! おぬしまでなんでここにいるのだ!」

「戦いが終わればともに魔道の研鑽に歩む仲間ではありませんか。」
にこにことウィルニアは言った。
「学校対抗戦ってそんなものでしょう?」

「終わってないだろっ! まだ第六戦が残っているし!」

「なるほどなるほど。」
ウィルニアは、勝手にグラスのワインを飲み干した。
「乾杯前にお話しておきましょうか。でも少しアルコールをいれてからのほうがききやすいと思うんだけど。

結論から言うと、勇者アキルは逃げました。」

ルールス先生の顎ががくん、と落ちた。「に、逃げたああ・・・・?」

「うん、あのままだとアウデリアに殺されちゃうのが明白だったので。」
ロウも勝手にグラスに口をつけはじめた。
「ルトとわたしが逃した。なので第六戦は、なし!」

「え、え・・・・いいのか、それで。」
ルールス先生は、ウィルニアに食って掛かった。

「もちろん、よくはありませんよ。第六戦も予告のパンフレットも配布済み。特別付録は、ドロシーちゃんの一糸まとわぬオールヌードポスターです。」
「な、な、な、な」ドロシーが立ち上がった。「き、きいてないしっ!」

「大丈夫です。後ろ姿ですから。」

パラリと開いたポスターは、ドロシーの後ろ姿。顔は横向き、軽く足を開いて直立。滑らかな肌に、しなやかな筋肉の躍動が美しい。首筋から背中はもちろん、お尻のすぐ上、というかほぼお尻まで見えている。
うん、きれいだな、ドロシー。

「原画はいまのところは、ラウル=リンドの手作業だけどね。」
ウィルニアは感慨深げに言った。
「フルカラーというものが、こんなに大衆にうけるとは思わなかった。上古に廃れた技術だけど復活させようかなあ。」

「こ、こ、こ、」
「うむ、もう少し広背筋を鍛えたいところだな。」
ジウルが、淡々と言った。若い女性をみる男の口調ではない。
「明日から筋トレメニューを増やしてみよう。ベッド生活で下半身も衰えているはずだ。あわせて体内の魔力を循環させ、攻撃力、防御力のアップにつなげる。」

「はい!師匠!」

「し、ししょうおぉ!?」

「ドロシーは三ヶ月ばかり、魔道院に交換留学させます。」
ぼくは出来るだけなんでもないことを、報告するようにうきうきした口調で言った。
「ドロシーの打撃、組技に魔法を組み合わせる技も、ジウルさんには新鮮にうつったみたいですからね。持ちつ持たれつってことです。」

「そ、それはかまわないと、思うが。
交換留学って、かわりに誰を」

「まあまあ、ルールス分校長、疑問点にひとつひとつ、答えていては話がすすみません。」
ウィルニアが、ルールス先生のグラスになみなみと酒をそそいだ。
「話を少し戻しましょう。」

「せ、せいとをまるはだかにして、そのいらすとを・・・・」

「あれは、検査中にロウが見た記憶映像をラウルに転送して、イラストにおこしたものです。わざわざ裸にしたわけではありません。」

「でも実物どおりなんだろ? これ。」

「まあ、そうですね。ラウルにはデフォルメはしないようにお願いしてるので。
で、もう少し話を戻しましょう。」

「アキルが逃げた・・・」

「そのもう少し前です。勇者が逃げちゃっけど、第6戦の予定は組んでしまったよ、のところからです。」

「そ、そうなのか。」
無意識のうちに、ルールス先生はグラスをいっきに空けている。いやあ、いい飲みっぷりだ。
だいぶストレスたまってたんだなあ。
ウィルニアは、またがばがばと酒を注ぐ。
がばがば。
ごくごく。
がばがば。
ごくごく。

ルールス先生の顔がとろんとして、息が荒くなってきてから、ウィルニアは、パンフレットを開いて、ルールス先生に突きつけた。

「にゃんらあ・・・こんどはだれのぬうどじゃあ・・・くけけけけ、そうだネイアいっしょにぬごう!」

ネイア先生が、水を差し出した。それをこくこくと飲みながら・・・

「にゃうに? 第六戦・・・急遽カードを変更?・・・だと。

『斧神アウデリアが出ることが出来ないというなら、このわたしが出るしかあるまい。魔道院新学院長“賢者”ウィルニアがついに闘技場におりたったぁ』」

ほえ、という顔でルールス先生はウィルニアを見上げた。たいへん可愛らしい。
ウィルニアもとてもいい笑顔で、はい、と言った。

「・・・・ならば、勇者不在の今、わたしが立とう! ついに神秘のベールを脱ぐか!
冒険者学校の前学長! ルールス・ヴァエランド・ローゼバック! これが最終! これが究極!
ラスボス対決にふるえろ!人類社会!」

ルールス先生の口から注ぎ込まれた清水がそのまま、床にしたたっていた。

泣き叫ぶ声はけっこう大きかったので、ホテルではなくて屋敷を丸借りしておいて、よかったなあ、とぼくは思った。
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