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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第162話 星を見る真祖
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「ご真祖様」
ネイアは、ロウに詰め寄った。
「いつからです!」
「わからない。わたしが、最後に会ったのは一昨日。西の解放通路だ。」
ロウは。けっこうな、迫力にたじたじしながらも、言い返した。
「それから今まで誰も見ていなかったのですか?!」
「そうだな、もともと気ままに動いている生き物だ。校内でも会わない、朝食に出でこないので部屋を見に行ったら、部屋は蜘蛛の巣だらけだ。」
「そ、それは!」
ネイアはどう反応したらよいのか分からずに、戸惑った。
「ふつうなのでは!」
「ギムリウスは、寝る時に巣を張って、起きたら巣を畳む。」
ロウはクビを捻った。
「放ったらかしなのは出かけたのかと思って、ヤホウに聞いてみたら。」
ヤホウは「知性」に特化したギムリウスの創造物だ。
なにを勘違いしたのか、ギムリウスひとりでは、人間の世界は大変だろうと思ったのか、自らも「亜人」だと言い張って、冒険者学校に乗り込んできた。
見た目は、牛ほどもある巨体の蜘蛛である。額の部分にお面を貼り付けていて、感情の表現や言葉はそこで発する。
さすがのルールス分校長もこれを冒険者学校の生徒として受け入れることはできず。
しかたなしにとんでもない魔道の知識をもっていることで、講師としてやとった。
案の定、「ルールス分校は化け物を入学させている」という一部の抗議に「そんな生徒はおりません!」と言い返すことができている。
「なにか、知ってましたか、あの・・・」
「ルトに会いたがっていたそうだ。それはわたしも聞いている。」
「ルトたちは、いま」
と言いかけて、ネイアはその情報を軽々しく口にしていいものではなきことに気がついて口をつげんだ。
「しかし、なぜギムリウスは急にルトに会いたがっているのでしょう。」
「ギムリウスは、人との間に新たなパーソナルなコミュニケーションに興味をもっていてだ、な。」
ロウは言いにくそうに、続けた。
「それが一定の成果をみたので、試したがっているのさ。」
「それはまさか、その、」
朝のホームルームで、口にしにくい言葉をできるだけ避けようとネイアは言葉を探した。
「ルトのP---------を彼女のP-----に」
大失敗した。
真祖たる吸血鬼もあんまり表現が下品だと、ダメージを、食らうことが、あるのだ。
胸を抑えてうずくまる。
教室内は騒然としている。
そんなことを口にしていい場所でも、人物でもないのだ。
「なんでまたそっちを。」
「それは、ギムリウスがたぶん構造的に創りやすかったせいだと思うんだ、男性のアレを」
「せ、せんせいっ!」
マシュー、忘れられがちなドロシーの婚約者の元貴族が、立ち上がった。
目がこれまで見たこともないくらいキラキラと輝いていた。
「そ、それほんと、ですか!
ギムリウスが男の子に、なったってことですよね!」
“ あの阿呆はなんで興奮してるんだ?”
人の恋愛にはさっぱり無頓着なアモンが、リウに囁いた。
「まさかと思うが」
「ギムリウスが男の子になってくれたら、浮気にならないっ!」
まさか、だった。
“ 人間の恋愛はさっぱりわからん”
同意を求めるように、リウを見たが、リウも曖昧に頷いた。
“ モラルを作ったなら守ればいい。守れないモラルはなくせばいい。”
アモンの思念は嫌悪感にあふれていた。
リウは、困ったこの高貴なる竜姫を見返した。
“ 希少なものほど、価値が高い、というのは竜族ならわかるな。手に入りにくい宝のほうが値打ちがでる。という“
“ それは、わかるがな。つまり、モラルに反する恋愛のほうが希少であるが故に、より強い欲望を感じられる、ということか?”
“ 手に入りにくいお宝、ということだな。”
一度、人類文明を滅ぼそうかな、とアモンはチラと思ったが、まあ、同族にもラウレスという規格外もいることである。美意識にあわぬからといっていちいち文明を破壊していたら、どこぞの神のようではないか。
「星はよめるか、ロウ=リンド?」
アモンが重々しく言った。
「多少は。」
真祖は、答えた。
「でも、これは星詠みは必要ないだろう?
集まったのは、“北の狼”クローディア大公、その妻“斧神の化身”アウデリア、“異世界の勇者”アキル、“魔拳”ジウル、“黒竜”ラウレス。そこにギムリウスが加わった。
これでなにも起きないはずはない。なにが起きるか詠めるわけもない。」
「ギムリウスは、オレたちで探して連れ戻す。」
リウは立ち上がって宣言した。
ネイアは安心したような、困ったような顔でそれを見返した。
「外出許可は出しますけど・・・」
「と言っても、オレとアモンは動けないから」
「はいはい、わたしが行きましょう。」
ロウがため息をついて立ち上がった。
「アモン! 三層の竜に誰か駅までわたしを運ばせて。」
「自分で飛んでいけ。」
とリウの答えは冷たかった。
ネイアは、ロウに詰め寄った。
「いつからです!」
「わからない。わたしが、最後に会ったのは一昨日。西の解放通路だ。」
ロウは。けっこうな、迫力にたじたじしながらも、言い返した。
「それから今まで誰も見ていなかったのですか?!」
「そうだな、もともと気ままに動いている生き物だ。校内でも会わない、朝食に出でこないので部屋を見に行ったら、部屋は蜘蛛の巣だらけだ。」
「そ、それは!」
ネイアはどう反応したらよいのか分からずに、戸惑った。
「ふつうなのでは!」
「ギムリウスは、寝る時に巣を張って、起きたら巣を畳む。」
ロウはクビを捻った。
「放ったらかしなのは出かけたのかと思って、ヤホウに聞いてみたら。」
ヤホウは「知性」に特化したギムリウスの創造物だ。
なにを勘違いしたのか、ギムリウスひとりでは、人間の世界は大変だろうと思ったのか、自らも「亜人」だと言い張って、冒険者学校に乗り込んできた。
見た目は、牛ほどもある巨体の蜘蛛である。額の部分にお面を貼り付けていて、感情の表現や言葉はそこで発する。
さすがのルールス分校長もこれを冒険者学校の生徒として受け入れることはできず。
しかたなしにとんでもない魔道の知識をもっていることで、講師としてやとった。
案の定、「ルールス分校は化け物を入学させている」という一部の抗議に「そんな生徒はおりません!」と言い返すことができている。
「なにか、知ってましたか、あの・・・」
「ルトに会いたがっていたそうだ。それはわたしも聞いている。」
「ルトたちは、いま」
と言いかけて、ネイアはその情報を軽々しく口にしていいものではなきことに気がついて口をつげんだ。
「しかし、なぜギムリウスは急にルトに会いたがっているのでしょう。」
「ギムリウスは、人との間に新たなパーソナルなコミュニケーションに興味をもっていてだ、な。」
ロウは言いにくそうに、続けた。
「それが一定の成果をみたので、試したがっているのさ。」
「それはまさか、その、」
朝のホームルームで、口にしにくい言葉をできるだけ避けようとネイアは言葉を探した。
「ルトのP---------を彼女のP-----に」
大失敗した。
真祖たる吸血鬼もあんまり表現が下品だと、ダメージを、食らうことが、あるのだ。
胸を抑えてうずくまる。
教室内は騒然としている。
そんなことを口にしていい場所でも、人物でもないのだ。
「なんでまたそっちを。」
「それは、ギムリウスがたぶん構造的に創りやすかったせいだと思うんだ、男性のアレを」
「せ、せんせいっ!」
マシュー、忘れられがちなドロシーの婚約者の元貴族が、立ち上がった。
目がこれまで見たこともないくらいキラキラと輝いていた。
「そ、それほんと、ですか!
ギムリウスが男の子に、なったってことですよね!」
“ あの阿呆はなんで興奮してるんだ?”
人の恋愛にはさっぱり無頓着なアモンが、リウに囁いた。
「まさかと思うが」
「ギムリウスが男の子になってくれたら、浮気にならないっ!」
まさか、だった。
“ 人間の恋愛はさっぱりわからん”
同意を求めるように、リウを見たが、リウも曖昧に頷いた。
“ モラルを作ったなら守ればいい。守れないモラルはなくせばいい。”
アモンの思念は嫌悪感にあふれていた。
リウは、困ったこの高貴なる竜姫を見返した。
“ 希少なものほど、価値が高い、というのは竜族ならわかるな。手に入りにくい宝のほうが値打ちがでる。という“
“ それは、わかるがな。つまり、モラルに反する恋愛のほうが希少であるが故に、より強い欲望を感じられる、ということか?”
“ 手に入りにくいお宝、ということだな。”
一度、人類文明を滅ぼそうかな、とアモンはチラと思ったが、まあ、同族にもラウレスという規格外もいることである。美意識にあわぬからといっていちいち文明を破壊していたら、どこぞの神のようではないか。
「星はよめるか、ロウ=リンド?」
アモンが重々しく言った。
「多少は。」
真祖は、答えた。
「でも、これは星詠みは必要ないだろう?
集まったのは、“北の狼”クローディア大公、その妻“斧神の化身”アウデリア、“異世界の勇者”アキル、“魔拳”ジウル、“黒竜”ラウレス。そこにギムリウスが加わった。
これでなにも起きないはずはない。なにが起きるか詠めるわけもない。」
「ギムリウスは、オレたちで探して連れ戻す。」
リウは立ち上がって宣言した。
ネイアは安心したような、困ったような顔でそれを見返した。
「外出許可は出しますけど・・・」
「と言っても、オレとアモンは動けないから」
「はいはい、わたしが行きましょう。」
ロウがため息をついて立ち上がった。
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とリウの答えは冷たかった。
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