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第5部 ギウリーク動乱篇~ミトラへの道
第163話 闇色の真実
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アウデリアは、伯爵との面会に際し、最初、グランダ方式を提案した。
つまり衛兵を殴り倒して、伯爵のもとにすすみ、それからおもむろに名乗りをあげる、というやり方である。
このメリットとしては。
兵の練度を前もって知ることができる。
相手の戦力を前もって好きなだけ、削っておくことができる。
相手が気に食わないやつならそのままスムースに戦闘に移行できる。
・・・
などである。
アウデリアは真顔で言ったのでたぶん、本気なのだろう。
クローディアは苦笑して止めた。
理由としては
戦いにきたわけではないので、兵の練度を事前に知る必要はない。
相手の削らなくてもいい戦力をうっかり削ってしまうことがある。
そこまでやってしまうと相手が気に入る気に入らないの問題ではなく、自動的に戦闘に移行してしまう可能性が高い。
・・・
などであった。
クローディアは常識的に、ギルドの職員に先触れを頼み、一応旅装から、それなりの服装に着替え、アウデリアとともに屋敷を訪れた。
「閣下は出かけておりまして。」
相手をしたのは、秘書官であった。
仮面を被ったように表情を動かさない、何を考えているのか全く読めない男ではあったが、慇懃無礼というほどでもなく、彼らが列車の「事故」で足止めをくったことを詫び、ここでの滞在費を負担させてほしいと申し出た。
「単純な事故、ではないと聞いておりますが。」
クローディアがそう言うと、秘書官は、深く頭を下げ、部下に盆にのせた菓子を運ばせた。
クローディアが、かぶせた布を取ると、金色に輝くインゴットが並べられていた。
「これがご当地のやり方でしたら、かなり私共とは相容れませんな。」
クローディアが表情を固くすると、
ほんのご迷惑料としてお納めください。
と秘書官はもう一度頭を下げた。
「伯爵閣下ご自身からお言葉をちょうだいしたいですな。」
「申し訳ありません。領地はかなり東西に広く伸びており、この街に常駐をしているわけにはまいらず。オールべへはしばらくお帰りにはなりません。」
「賊は、伯爵閣下の血縁者だときいたが?」
「根も葉もない噂・・・ではございません。主が一時面倒を見ておりました女性がおりまして。もうかれこれ十年近く前になりますが。
その連れ子です。
かの女性が亡くなった後、一時、伯爵が面倒をみていた時期もありました。」
「情けが移って討伐できない、と言うことですかな?」
「そのようなことはないかと存じます。かの賊共はなかなかに神出鬼没。おまけに領民にはけっこうな人気があるのですよ。
地元の民からは決して奪わないもので・・・」
「たしかに」クローディアは皮肉な笑みを浮かべた。「列車が遅延すれば、乗り換え残った乗客は否応なしに街に金を落としてくれますしな。」
秘書官は曖昧な笑みでそれに答えた。
結局、金のインゴットは受け取らずに、クローディアとアウデリアは屋敷を後にした。
門の前に待ち構えていたのは、先のロデリウム公爵とその供回り、であった。
「伯爵は不在とのことです、御老公。」
クローディアが言うと老人は、口をへの字に曲げて、いったいこの街はどうなっておる!と文句を言った。
門番の衛兵は、この人物の正体を知っているのだろう。聞いて聞かぬフリをしている。
「歩きながら話しますか?」
そう言うと老公は、頷いてクローディアと足をならべてあるき出した。
「ロデリウム公爵家の影はなにか情報がありましたか?」
「ふむ。残念ながらわしは公私共に公爵家を離れているのでなあ。」
本当に残念そうに老人は言った。
「あれをせい、これを調べろといった、命令はできないのです、クローディア閣下。」
「何を言っている。」
アウデリアが口をはさんだ。
「お主が連れているあの二人は、ロデリウム家の『ナンバーズ』だろうが。
個人としての戦闘力に特化した精鋭ぞろいときいている。
引退してなんの影響力もないじいさんが引き回せる連中ではあるまい。」
「まあ、そこはそれ。」
ご老公は苦笑いを浮かべた。
「わしに野垂れ死なれても困るのだろうさ。公爵家としては。」
「まあ、そういうことにしておこうか。
で、実際のところはどうなのだ?
伯爵は、本気でギウリークに反逆する気があるのか?」
「そう。わしもそこが一番、気になっておった。今の世の中、どんな産業を育てるよりターミナル駅のある街をひとつ抱えたほうが、はるかに金を生む。
だが、あくまでも魔道列車の運行は、国家の管理だ。実際には西域列強八国が中心となった公団によって行われている。
それを妨害してまで、街に金を落とさせようとすれば当然、公団が黙ってはいないだろう。」
「九番目の列強と言われる魔道列車公団か。」
とにかく、列車そのものが運行されていない田舎にいたクローディアにはそこいらの情報は疎い。
そして、西域ぐらしのながいはずの妻は、ありとあらゆる情報に疎かった。
「では、なぜ公団は動かないのだろう。独自の武力はもたないにせよ、後ろ盾は西域の強国ばかりだろうに。」
「だからじゃろう。」
老公は、じろりとクローディアを見上げた。
「当然、このオールべの街のトラブルは、ギウリーク聖帝国がおさめると思っている。
これが、数ヶ月にわたる運行の停止や、列車の損壊、乗客への被害ならば公団がなんらかの圧力をギウリークにかけてくる。」
「いまのこれは、公団がそこまで動かないギリギリのレベルだと?」
「そうとしか思えん。実際に、わしも西域を旅していたが、オーベルがこんなことになっているという話はきかなんだ。
もともとは徒歩で、ミトラを目指すつもりだったのが、面白い仲間もできての。
少し時間がかかったので、お主たちの結婚式に間に合わせようと、オーベルから列車を使おうとしてこの有様じゃ。」
「確かに腹がたつほどに面白い仲間だなっ!」
アウデリアが歯をむき出すように笑った。
「“斧神の化身”アウデリア殿。クローディア大公妃ではなく、一冒険者としての御身にお聞きするが、あの冒険者ガレルアになかに含むところがおありか?」
「ん?
いやあ、わたしの狙いは、ガレルアが守ってた女のほうだ。」
「あれは・・・・」
銀灰皇国から暗殺未遂の犯人として追われてる“闇姫”ではと言いかけたが。
「あれは異世界から召喚された勇者だ。千年ぶりの本物の勇者だ。
そして召喚した神はヴァルゴール。わたしとは、いろいろと因縁のある相手でな!」
つまり衛兵を殴り倒して、伯爵のもとにすすみ、それからおもむろに名乗りをあげる、というやり方である。
このメリットとしては。
兵の練度を前もって知ることができる。
相手の戦力を前もって好きなだけ、削っておくことができる。
相手が気に食わないやつならそのままスムースに戦闘に移行できる。
・・・
などである。
アウデリアは真顔で言ったのでたぶん、本気なのだろう。
クローディアは苦笑して止めた。
理由としては
戦いにきたわけではないので、兵の練度を事前に知る必要はない。
相手の削らなくてもいい戦力をうっかり削ってしまうことがある。
そこまでやってしまうと相手が気に入る気に入らないの問題ではなく、自動的に戦闘に移行してしまう可能性が高い。
・・・
などであった。
クローディアは常識的に、ギルドの職員に先触れを頼み、一応旅装から、それなりの服装に着替え、アウデリアとともに屋敷を訪れた。
「閣下は出かけておりまして。」
相手をしたのは、秘書官であった。
仮面を被ったように表情を動かさない、何を考えているのか全く読めない男ではあったが、慇懃無礼というほどでもなく、彼らが列車の「事故」で足止めをくったことを詫び、ここでの滞在費を負担させてほしいと申し出た。
「単純な事故、ではないと聞いておりますが。」
クローディアがそう言うと、秘書官は、深く頭を下げ、部下に盆にのせた菓子を運ばせた。
クローディアが、かぶせた布を取ると、金色に輝くインゴットが並べられていた。
「これがご当地のやり方でしたら、かなり私共とは相容れませんな。」
クローディアが表情を固くすると、
ほんのご迷惑料としてお納めください。
と秘書官はもう一度頭を下げた。
「伯爵閣下ご自身からお言葉をちょうだいしたいですな。」
「申し訳ありません。領地はかなり東西に広く伸びており、この街に常駐をしているわけにはまいらず。オールべへはしばらくお帰りにはなりません。」
「賊は、伯爵閣下の血縁者だときいたが?」
「根も葉もない噂・・・ではございません。主が一時面倒を見ておりました女性がおりまして。もうかれこれ十年近く前になりますが。
その連れ子です。
かの女性が亡くなった後、一時、伯爵が面倒をみていた時期もありました。」
「情けが移って討伐できない、と言うことですかな?」
「そのようなことはないかと存じます。かの賊共はなかなかに神出鬼没。おまけに領民にはけっこうな人気があるのですよ。
地元の民からは決して奪わないもので・・・」
「たしかに」クローディアは皮肉な笑みを浮かべた。「列車が遅延すれば、乗り換え残った乗客は否応なしに街に金を落としてくれますしな。」
秘書官は曖昧な笑みでそれに答えた。
結局、金のインゴットは受け取らずに、クローディアとアウデリアは屋敷を後にした。
門の前に待ち構えていたのは、先のロデリウム公爵とその供回り、であった。
「伯爵は不在とのことです、御老公。」
クローディアが言うと老人は、口をへの字に曲げて、いったいこの街はどうなっておる!と文句を言った。
門番の衛兵は、この人物の正体を知っているのだろう。聞いて聞かぬフリをしている。
「歩きながら話しますか?」
そう言うと老公は、頷いてクローディアと足をならべてあるき出した。
「ロデリウム公爵家の影はなにか情報がありましたか?」
「ふむ。残念ながらわしは公私共に公爵家を離れているのでなあ。」
本当に残念そうに老人は言った。
「あれをせい、これを調べろといった、命令はできないのです、クローディア閣下。」
「何を言っている。」
アウデリアが口をはさんだ。
「お主が連れているあの二人は、ロデリウム家の『ナンバーズ』だろうが。
個人としての戦闘力に特化した精鋭ぞろいときいている。
引退してなんの影響力もないじいさんが引き回せる連中ではあるまい。」
「まあ、そこはそれ。」
ご老公は苦笑いを浮かべた。
「わしに野垂れ死なれても困るのだろうさ。公爵家としては。」
「まあ、そういうことにしておこうか。
で、実際のところはどうなのだ?
伯爵は、本気でギウリークに反逆する気があるのか?」
「そう。わしもそこが一番、気になっておった。今の世の中、どんな産業を育てるよりターミナル駅のある街をひとつ抱えたほうが、はるかに金を生む。
だが、あくまでも魔道列車の運行は、国家の管理だ。実際には西域列強八国が中心となった公団によって行われている。
それを妨害してまで、街に金を落とさせようとすれば当然、公団が黙ってはいないだろう。」
「九番目の列強と言われる魔道列車公団か。」
とにかく、列車そのものが運行されていない田舎にいたクローディアにはそこいらの情報は疎い。
そして、西域ぐらしのながいはずの妻は、ありとあらゆる情報に疎かった。
「では、なぜ公団は動かないのだろう。独自の武力はもたないにせよ、後ろ盾は西域の強国ばかりだろうに。」
「だからじゃろう。」
老公は、じろりとクローディアを見上げた。
「当然、このオールべの街のトラブルは、ギウリーク聖帝国がおさめると思っている。
これが、数ヶ月にわたる運行の停止や、列車の損壊、乗客への被害ならば公団がなんらかの圧力をギウリークにかけてくる。」
「いまのこれは、公団がそこまで動かないギリギリのレベルだと?」
「そうとしか思えん。実際に、わしも西域を旅していたが、オーベルがこんなことになっているという話はきかなんだ。
もともとは徒歩で、ミトラを目指すつもりだったのが、面白い仲間もできての。
少し時間がかかったので、お主たちの結婚式に間に合わせようと、オーベルから列車を使おうとしてこの有様じゃ。」
「確かに腹がたつほどに面白い仲間だなっ!」
アウデリアが歯をむき出すように笑った。
「“斧神の化身”アウデリア殿。クローディア大公妃ではなく、一冒険者としての御身にお聞きするが、あの冒険者ガレルアになかに含むところがおありか?」
「ん?
いやあ、わたしの狙いは、ガレルアが守ってた女のほうだ。」
「あれは・・・・」
銀灰皇国から暗殺未遂の犯人として追われてる“闇姫”ではと言いかけたが。
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