あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己

文字の大きさ
470 / 574
第9部 道化師と世界の声

空隙の魔物

しおりを挟む
「どけどけどけいっ!」
ミルドエッジさんは、手をぐるぐると回して、周りを威嚇した。
「この方たちはランゴバルドからの正式な訪問客で、闇姫オルガ殿下のお知り合いじゃ。おのれらのような三下が気軽に話しかけるでは無い。」

や、やみひめ・・・・
闇姫オルガの・・・・

小さな悲鳴のような声が、あちこちから聞こえた。オルガ…きみってどんだけ、嫌われているんだ。

「老師さま。」
顔を引き攣らせながらも、その前に跪いたのは、最初に舟を下ろした船頭だった。両の腕は筋肉が盛り上がり、胸板は厚く、いかにも屈強な船乗りといった風情だ。
でも、この「舟」は魔法で動かしてるんだよね?

「鬼蜂どもの動きが、今日は妙に活発なのは事実でございます。中層から高層下部にかけては、我々も運行が妨げられる程。
たんに浮遊魔法がつかえるからだけで、最上階まで無事にたどり着けるとは、思いませぬ。」
「なら、おまえらは、客を載せるだけ乗せてどうしようとしていたのだ!」
「そ、それは…」
船頭は口ごもった。

舟に乗り込みかけた、乗客らも険しい顔で睨んでいる。
「まずは、安全なところまで飛んで…もし危険ならその階層で、いったん建物に退避して様子を見るつもりでした。」

「そうか。わしはまた、誰かを外に放り出して、蜂がそいつに群がってるスキに、先を急ぐのかと思っていたぞ。」

絶句した船頭に背を向けて、ミルドエッジ老師は、改めてぼくらに向き直った。

「そなたが、壊乱帝の『悪夢』の長ですか。」
ルールス先生が、品良く微笑んだ。
そんなこともできたんだっ!?

「わたしは、ランゴバルド王の・・・・王家のもの。現在は、冒険者学校にて、オルガ姫を担当しているルールス・シャルフォード。」
言い直したのは、実際には、ルールス先生は、元王の大叔母に当たるので、関係を説明しにくかったのだろう。

「ルールス姫か。初におめにかかる。」
ミルトエッジは、傲岸不遜に胸をそびやかした。
十をいくつもこえてない少年がそんなことをするのは、どうにも滑稽な気がしたが、ルールスセンセイだって、見かけの歳ではないのだ。ほぼ、全国民が魔道士の銀灰皇国だ。魔力過剰による長命を得ているものも少なくないだろう。
これは、見かけで相手を判断しない方がよいかもしれない。
そもそも、こっちにだって

「ミルドエッジ! その節は世話になったのう?」
ガゼルが進み出た。白い歯がなんとなく、牙に見える獰猛な笑みは、十代初めの坊やにはぜんぜん、似合っていない。

「北の長寿族のガセル長老どの!?
なぜ、おぬしがここに。」
「ガセルさんは、一族の間で、160年にわたって、まったくモテず」
ぼくは、丁寧に説明した。
「自分を知らない若者たちとなら、うふふ、キャッキャッできると思い、長老の座もかなぐり捨てて、冒険者学校に入学したんです。」

おろかな…ミルトエッジ老師は吐き捨てるように言った。流石は、皇帝の懐刀『悪夢』の長のひとり。でもなんだよ、“そうか、その手があったか。”って。

唇の動きで、言葉くらい読めるんだぞ?
「やかましいぞ、ルト。わしは単に広い世界に見聞を深めにだな…」

自己紹介だけでこんなにもたつくってある?
これじゃあ、古竜さんたちをどう紹介したものか。


最初に、上空の異変に気がついたのは、ルルナさんだった。
はるか、上方まで伸びる間隙。その一部が黒い雲に覆われていた。いや。雲ではない。

虫だ。

「バカな。」
船頭さんが呻いた。
「鬼蜂は、臆病で大人しい生き物だぞ。」

臆病でおとなしい、肉食の蜂というのが、いるのかどうか知らないが、まあ、いるのだろう。
黒雲の中から、ボタボタと、蜂の頭や脚がふってくる。

乗客や、あきれたことに船頭たちも、悲鳴をあげて逃げ回った。

ぼくは、眼をこらした。
誰かが、遠目には雲海にしか見えない肉食蜂の群れと戦っているのだ。

やがて・・・・・

黒雲が2人の女性を吐き出した。



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

処理中です...