26 / 28
第26話 待ち伏せ
しおりを挟む
実際のところ、ミイナにも待ち伏せは、バレバレだったのである。
いま、姿をみせた傭兵たちは、まだましなほうだった。
そのあとから現れた傭兵団は、練度が悪く、ミイナたちの到着にあわてて、防具の紐を締め直したりしている。
「あの、簒奪者を討取れ!」
さらに後方で、叫んだ太った中年男は、叔父のアルセイだった。
という事は、こいつらが、、叔父の傭兵団か。喧嘩自慢とはいえ、執事の若者ひとりにボコられたのは、見ていたが、なるほど、聞きしにまさる練度の悪さだ。
これなら、街のチンピラのほうがマシ……
と、思いかけたところに、ぞろぞろとチンピラの群れが現れた。
思いっきし、こちらにガン付けしたくるのだが、ここは、そういう場じゃないぞ。
さらに、女の金切り声が加わった。
ミイナも、女性だが金切り声は、大嫌いだ。
とくに嫌いなのが、姉ふたりのそれで、、聞く度にミイナの胃は、締めあげられたようになる。
「あいつらをぶち殺すのよっ!」
長姉のマハルが叫んだ。
「ただ殺しちゃダメよ! ボロボロになるまで、犯して、死体はヴァルゴールに捧げるんだから。」
と、次女のロゼリッタが喚く。
「『贄』は生きたものを目の前で〆ないと価値が下がります! それにいちいち『贄』を相手そういう行為をおこなうなんて……あなた。変態ですか?」
ヴァルゴールの使徒の可憐な抗議は、声が小さかったこともあって、無視されてた。
「ミ、ミイナさまあっ!」
御者台から、転げ落ちるように降りてきたゼパスを馬車に放り込む。
あとは、まあ。
自分の身くらいは守れるだろう。
「おい、男娼!」
完全にこちらを包囲したと、判断したのか、身なりのよい若い男ふたりが現れた。
「調子に乗って、お家の簒奪を計画してやがったんだろうが、」
「正義がそれを許しませんでした。十年前にアルセンドリック侯爵家を乗っ取ったその女吸血鬼ごと、ここでくたばりなさい!」
エルクが、ミイナのそばに寄ってきてた。顔色が真っ青だ。
「これの筋書きはおまえだよね?」
ミイナが、ぼやいた。
「前もって相談してくれないかな。こっちだって、心構えがあるんだけと。」
「すいません。兄たちだけのつもりでした。」
エルクは、詫びた。
「あっちは、あなたのお姉様方に叔父上ですね? 先日、男爵位を剥奪された。
いくらなんでも数が多い。ぼくも準備はしていたのですが。」
先頭を走ってきた傭兵の面前に、女の影が舞い降りる。
ここは、古くからあるやや寂れた公園で、女は、大きな木の枝の上に潜んでいたのだ。
ふいをつかれた傭兵は、一刀のもとにキリふせられた。
「『贄』いちごーっ!」
バランがはしゃいだ。
「メイプル!」
「ははん!? 助太刀してやるから、たんまり、報酬は払ってね?」
「報酬はぼくのほうで払ってます。」
エルクがキッパリと言った。
「報酬の二重取りは、厳禁のはずでは?」
舌をペロリと出すと、メイプルは次の相手と切り結ぶ。
その右手は、肘から先が剣に変化していた。
「まあ。」
ミイナはコートを脱ぐと自分の得物をを取り出した。それは短い棍棒を幾つも鎖で繋げた代物で。ミイナはそれを腰に巻き付けていた。
「積極的に殺しはしたくは、ないのわよ。」
まるで、悪戯をみつかった、こどもみたいな言い訳だな、とミイナは思った。
「でもほら、骨の二三本は、折っときたい相手っているじゃない?」
いま、姿をみせた傭兵たちは、まだましなほうだった。
そのあとから現れた傭兵団は、練度が悪く、ミイナたちの到着にあわてて、防具の紐を締め直したりしている。
「あの、簒奪者を討取れ!」
さらに後方で、叫んだ太った中年男は、叔父のアルセイだった。
という事は、こいつらが、、叔父の傭兵団か。喧嘩自慢とはいえ、執事の若者ひとりにボコられたのは、見ていたが、なるほど、聞きしにまさる練度の悪さだ。
これなら、街のチンピラのほうがマシ……
と、思いかけたところに、ぞろぞろとチンピラの群れが現れた。
思いっきし、こちらにガン付けしたくるのだが、ここは、そういう場じゃないぞ。
さらに、女の金切り声が加わった。
ミイナも、女性だが金切り声は、大嫌いだ。
とくに嫌いなのが、姉ふたりのそれで、、聞く度にミイナの胃は、締めあげられたようになる。
「あいつらをぶち殺すのよっ!」
長姉のマハルが叫んだ。
「ただ殺しちゃダメよ! ボロボロになるまで、犯して、死体はヴァルゴールに捧げるんだから。」
と、次女のロゼリッタが喚く。
「『贄』は生きたものを目の前で〆ないと価値が下がります! それにいちいち『贄』を相手そういう行為をおこなうなんて……あなた。変態ですか?」
ヴァルゴールの使徒の可憐な抗議は、声が小さかったこともあって、無視されてた。
「ミ、ミイナさまあっ!」
御者台から、転げ落ちるように降りてきたゼパスを馬車に放り込む。
あとは、まあ。
自分の身くらいは守れるだろう。
「おい、男娼!」
完全にこちらを包囲したと、判断したのか、身なりのよい若い男ふたりが現れた。
「調子に乗って、お家の簒奪を計画してやがったんだろうが、」
「正義がそれを許しませんでした。十年前にアルセンドリック侯爵家を乗っ取ったその女吸血鬼ごと、ここでくたばりなさい!」
エルクが、ミイナのそばに寄ってきてた。顔色が真っ青だ。
「これの筋書きはおまえだよね?」
ミイナが、ぼやいた。
「前もって相談してくれないかな。こっちだって、心構えがあるんだけと。」
「すいません。兄たちだけのつもりでした。」
エルクは、詫びた。
「あっちは、あなたのお姉様方に叔父上ですね? 先日、男爵位を剥奪された。
いくらなんでも数が多い。ぼくも準備はしていたのですが。」
先頭を走ってきた傭兵の面前に、女の影が舞い降りる。
ここは、古くからあるやや寂れた公園で、女は、大きな木の枝の上に潜んでいたのだ。
ふいをつかれた傭兵は、一刀のもとにキリふせられた。
「『贄』いちごーっ!」
バランがはしゃいだ。
「メイプル!」
「ははん!? 助太刀してやるから、たんまり、報酬は払ってね?」
「報酬はぼくのほうで払ってます。」
エルクがキッパリと言った。
「報酬の二重取りは、厳禁のはずでは?」
舌をペロリと出すと、メイプルは次の相手と切り結ぶ。
その右手は、肘から先が剣に変化していた。
「まあ。」
ミイナはコートを脱ぐと自分の得物をを取り出した。それは短い棍棒を幾つも鎖で繋げた代物で。ミイナはそれを腰に巻き付けていた。
「積極的に殺しはしたくは、ないのわよ。」
まるで、悪戯をみつかった、こどもみたいな言い訳だな、とミイナは思った。
「でもほら、骨の二三本は、折っときたい相手っているじゃない?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる