第三帝国再建物語

篠田 雄亮

文字の大きさ
21 / 34
帝国再建編

21.

しおりを挟む
リッベントロップが、イワン国王であるセルゲーエフに要請をしてからというものワイマル帝国に拠点を築いていた、クロイツ中佐がマウザー大尉に馬車に国王の息子であるガイルとその配下数名を乗せてワイマル帝国とイワン国との国境を越えさせてセルゲーエフの所へ護送する事にした。

その時、護送をする事になったのはマウザー大尉とその部下である降下猟兵の中の経験の富んだ者総勢十一名であった。

護送する時の役割分担は、前方の警戒に二頭の馬に座乗した兵士二人と馬車の手網を担当するのが一人とその横にマウザー大尉で、後方と側面の警戒は馬車に乗った四人が担当し、残った三人がガイル達捕虜の見張りに付いたのであった。

捕虜と言ってもいまでは、ドイツ第三帝国とイワン国が条約を締結してからというもの大人しくなった。

そんなこんなで、気を抜くことなく夜通し進む事二日いよいよ国境に差し掛かろうという時だった。

国境の渓谷地帯を馬車で、曲がり切ろうとした時いきなり目の前に関所と言った方がいいのか検問所と言った方がいいのか、もみのきで軽くこしらえた柵が渓谷の出口を完全に塞いでいたので馬車で迂回する事ができそうもなかった。

この時の護衛に付いていた兵士の格好は、マウザー大尉と部下が死んだ雑兵から剥ぎ取った軽装備の鎧の格好であった。

だから、敗残兵を装う事にしたのだった。

仕方なくマウザーは、ガイル達が捕えられた時に味方の返り血を浴びて酷い有様だったので包帯を巻かせて重傷者を装う事にした。

その作業を手早く済ませると、配下の者に
「将軍が、重傷で生命いのちが危ないと言え!」
と言った。

それに、配下の者達は静かにこくりと頷いた。

頷いたのを見届けると、関所へ行く事にした。

行くと、槍と腰に剣を下げた軽装備の雑兵とそれを指揮する重装備の鎧を着た者が、いかにも窮地を幾度となく切り開いた強者のような印象を醸し出していた。

そして、そこの指揮官がぶっきらぼうに
「お前達は、いったい何処の誰ぞ?」
と言ったので
マウザーは、すかさず、
「ベルゴグラードの戦線が、酷い痛手を受けた時にガイル将軍が重傷を負われたので、将軍以下数十名の生き残りの者が生命からがら戦線から離脱、撤退の最中であります!」
と言った。

すると、指揮官らしき男が馬車を舐め回すように見回してガイルを見てこう言った。

「傷の具合を確認する!」
と疑いぶかげに言うと馬車に乗ろうとした。

その時、ガイルの、配下の者が
「辞めろ!将軍は、今にも生命が危ういというのに…この無礼者が!」

それには、さすがに男はたじろいだ。

そして、
「ええい…お前等の事は知らん!さっさと目の前から消えろ」
と言った。

男は、顔を真赤にして
「属国の者が!」
と小声で罵倒したのであった。

配下の雑兵は、馬車の前を空けて道を広くし珍しく主人である男が属国の者に口で打ち負かされたのをただただ驚いた顔をして見ていた。

その時、それを言ったのはガイルの副官のニコラフスキーであった。

副官の階級でいうと、男より上らしいがイワン国はワイマル帝国の属国という事もあって下に見られがちだったのである。

そういう関係が、何十年間か続いているのでガイルと配下の者は
「もう…これ以上のいくさはこりごりだ!」
と言った程いいようにこき使われていたのだ。

そして、マウザー達は無事刃を交える事もなく国境を越える事が出来たのであった。

だが、まだ半分の距離に差し掛かっただけであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

婚約破棄したら食べられました(物理)

かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。 婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。 そんな日々が日常と化していたある日 リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる グロは無し

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...