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012 パズル仕掛けの恋の、欠片
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同い年の彼×ぼく 出会った日の、ジグソーパズルと眼鏡の男の子
冬に、郊外にオープンした新しいアミューズメント施設に両親と兄弟と出かけたときのことだ。
公園にあるような、アスレチックの大型玩具とトランポリンと網とバルーンを組み合わせたようなものとスクリーンに映るポイントにボールを打つシューティングゲームのフロアに兄弟は興奮して入り口で飛び跳ねていた。
けどぼくはそういう身体を動かす階でなく、小さい図書館のように書棚が並んで、フロア半分が『自由創作広場』になっている階で遊びたかった。
「ぼくはここで遊んでいるから、みんなはあっちの階へ行ってらっしゃい」と両親と兄弟を追い払った。
幾列も並ぶ書棚を回って、たくさんの図書を手に取って、読むことができて、ぼくはご機嫌だった。でもここは他の階と比べて極端に人気がないのか、あまり子どもがいなかった。
『自由創作広場』にも数人しかなかった。
番号の規則性を探すゲームや隣り合っていないピースをズラしながら同じ陣形にするパスルゲームや絡み合う形の金属の輪を解いていくゲームなどが置いてあって、一通り、やってしまった。
それらを解いたらスタッフの人からチケットをもらった。
なんと、壁のラインナップのジグソーパズルをひとつ無料で頂けるというチケットだった。
ぼくは印象派の風景絵画の、最もピース数が多いものを頼んだ。
ピースの入った重い箱を受け取り、ぼくはもうはやく帰って取りかかりたいと思って、スマホを見た。兄弟はまだまだアスレチックで遊びたいらしい。ため息をついた。
我慢できず、その場で箱を開いてなかを見てしまった。
細かなピースがぎっしり入っている。それを順にはめていく様を思い浮かべて、ぼくはうっとりした。そうしたらまた我慢できなくなって人の少ないそのフロアの大きなテーブルにピースを箱からざあっと落とした。流れ出る大量のピースが山になる。
うきうきとして、眺めた。
そして、少しピースの山をならし、似ていながら不揃いの欠片のそれらを摘まんでいくと、四つ角らしきピースを発見し、試しに配置してみた。
そうすると、もうとまらなかった。
ぼくは、ほぼ何も考えなくても、ピースの山を広げて見ていったら、どれとどれをつなげられるか判断でき、かなりのスピードではめこんでいった。
八割完成してしまい、フロアの自販機でホットのいちごミルク飲料を買って、ちょっとひと息ついた。ここで完成させても、持ちかえるときにはバラさなきゃいけないなぁ、と見下ろした。
これからどうするか、と顔を上げると同じテーブルの、近くの椅子に座っている眼鏡の同じ歳くらいの子どもがこっちを見ていることに気づいた。
その手元には図鑑のような分厚い書物があって、ぼくはその男の子と目が合ったあとに寄って、「それおもしろい?」と訊いた。
眼鏡の子は黙って、なにか不気味なものを見るような目で、ぼくを見ていたが
「なんで、そんなにはやく、組み合わせることができる?」
と言った。そのことがとても不可解で疑問だという口調だった。
ぼくはどういう意味だろうと思った。
眼鏡の子が鋭く睨む先、テーブルの、絵画の八割が既に浮かび上がっている光景にぼくは目を動かし、言った。
「ピースを見ればわかるじゃない?」
すると、眼鏡の子はますます不気味そうにぼくを見た。
見つめ返して、睨み合うと、なんだか、その眼鏡の子に興味が湧いた。
そしてジグソーパズルから急激に興味が失せていく。
でもこれで完成させないのも、きりが悪いなと思って、ぼくは一気呵成にピースをつないで、一枚の絵画のパズルを完全に作り上げた。
「――はい、よし」ぼくは笑って、でもここで完成させたら、どうしたらいいんだろうとスタッフの人に訊きに行った。
持ち帰りの希望が無いなら施設側で回収しますよと言うので、そうしてくださいとぼくはお願いした。
さあて、と眼鏡の子の横の席に座った。
なんだこいつは、という顔で眼鏡の子はぼくを見つめる。
「何を読んでいるの?」
分厚いそれをのぞきこむ。
眼鏡の子は少し、こちらから身体ごとそむけるみたいに隠そうとしたが、じっとしたあとに、あがくのをやめるみたいに、座り直した。
「西洋の城の歴史」
と、開いていたページを閉じ、表紙を見せてくれる。
ぼくは「お城が好き?」と訊いた。自分では全く惹かれたことがないジャンルだ。ぼくはこの子が城について語るのを聞きたくなった。
スマホを出して、アプリを起動させ、連絡先を交換したいと差し出した。
眼鏡の子は「……はあ?」という顔をしたが、そのあと、ぼくから視線を外してどこかを見て、思案顔になり、ごそごそとスマホを出してきた。
◇◇◇
「……ということがあったな」とぼくは放課後に買った紙パック飲料にささったストローを啜って、ひさしぶりに選んだいちごミルクの味に、また記憶がよみがえった。
あの日、出会った男の子とは、いま、進学校で学年首位を争っている。常にぼくが圧勝しているのを、試験用紙の束とともに笑顔で報告すると、彼はいつもわかりやすく表情を歪め、悪態をついている。
海外に留学してもよかったが、ぼくはまだ彼といっしょに学生生活を過ごしたかった。
ぼくはあの睨み合ったとき、一目惚れをしたのだと思う。でもそれはまだ言っていない。
だって、最近気づいたし。
このまえ、あの日完成させたジグソーパズル絵画の実物を、いっしょに美術館に見に行って、うん、この絵、好きだなと、となりの彼のしかめ面の横顔を見たら、びっくりするほど、胸に熱いような感情が噴き出して、身体がこわばった。
積年の思いというやつだ。自覚はまるでなかったけど。
言ったらどんな顔をするかなと想像しても、こればかりはわからないから、まだ言えていない。
手始めに、なぜ、あのとき、連絡先を交換してくれたのか今度あらためて訊いてみようと思った。
冬に、郊外にオープンした新しいアミューズメント施設に両親と兄弟と出かけたときのことだ。
公園にあるような、アスレチックの大型玩具とトランポリンと網とバルーンを組み合わせたようなものとスクリーンに映るポイントにボールを打つシューティングゲームのフロアに兄弟は興奮して入り口で飛び跳ねていた。
けどぼくはそういう身体を動かす階でなく、小さい図書館のように書棚が並んで、フロア半分が『自由創作広場』になっている階で遊びたかった。
「ぼくはここで遊んでいるから、みんなはあっちの階へ行ってらっしゃい」と両親と兄弟を追い払った。
幾列も並ぶ書棚を回って、たくさんの図書を手に取って、読むことができて、ぼくはご機嫌だった。でもここは他の階と比べて極端に人気がないのか、あまり子どもがいなかった。
『自由創作広場』にも数人しかなかった。
番号の規則性を探すゲームや隣り合っていないピースをズラしながら同じ陣形にするパスルゲームや絡み合う形の金属の輪を解いていくゲームなどが置いてあって、一通り、やってしまった。
それらを解いたらスタッフの人からチケットをもらった。
なんと、壁のラインナップのジグソーパズルをひとつ無料で頂けるというチケットだった。
ぼくは印象派の風景絵画の、最もピース数が多いものを頼んだ。
ピースの入った重い箱を受け取り、ぼくはもうはやく帰って取りかかりたいと思って、スマホを見た。兄弟はまだまだアスレチックで遊びたいらしい。ため息をついた。
我慢できず、その場で箱を開いてなかを見てしまった。
細かなピースがぎっしり入っている。それを順にはめていく様を思い浮かべて、ぼくはうっとりした。そうしたらまた我慢できなくなって人の少ないそのフロアの大きなテーブルにピースを箱からざあっと落とした。流れ出る大量のピースが山になる。
うきうきとして、眺めた。
そして、少しピースの山をならし、似ていながら不揃いの欠片のそれらを摘まんでいくと、四つ角らしきピースを発見し、試しに配置してみた。
そうすると、もうとまらなかった。
ぼくは、ほぼ何も考えなくても、ピースの山を広げて見ていったら、どれとどれをつなげられるか判断でき、かなりのスピードではめこんでいった。
八割完成してしまい、フロアの自販機でホットのいちごミルク飲料を買って、ちょっとひと息ついた。ここで完成させても、持ちかえるときにはバラさなきゃいけないなぁ、と見下ろした。
これからどうするか、と顔を上げると同じテーブルの、近くの椅子に座っている眼鏡の同じ歳くらいの子どもがこっちを見ていることに気づいた。
その手元には図鑑のような分厚い書物があって、ぼくはその男の子と目が合ったあとに寄って、「それおもしろい?」と訊いた。
眼鏡の子は黙って、なにか不気味なものを見るような目で、ぼくを見ていたが
「なんで、そんなにはやく、組み合わせることができる?」
と言った。そのことがとても不可解で疑問だという口調だった。
ぼくはどういう意味だろうと思った。
眼鏡の子が鋭く睨む先、テーブルの、絵画の八割が既に浮かび上がっている光景にぼくは目を動かし、言った。
「ピースを見ればわかるじゃない?」
すると、眼鏡の子はますます不気味そうにぼくを見た。
見つめ返して、睨み合うと、なんだか、その眼鏡の子に興味が湧いた。
そしてジグソーパズルから急激に興味が失せていく。
でもこれで完成させないのも、きりが悪いなと思って、ぼくは一気呵成にピースをつないで、一枚の絵画のパズルを完全に作り上げた。
「――はい、よし」ぼくは笑って、でもここで完成させたら、どうしたらいいんだろうとスタッフの人に訊きに行った。
持ち帰りの希望が無いなら施設側で回収しますよと言うので、そうしてくださいとぼくはお願いした。
さあて、と眼鏡の子の横の席に座った。
なんだこいつは、という顔で眼鏡の子はぼくを見つめる。
「何を読んでいるの?」
分厚いそれをのぞきこむ。
眼鏡の子は少し、こちらから身体ごとそむけるみたいに隠そうとしたが、じっとしたあとに、あがくのをやめるみたいに、座り直した。
「西洋の城の歴史」
と、開いていたページを閉じ、表紙を見せてくれる。
ぼくは「お城が好き?」と訊いた。自分では全く惹かれたことがないジャンルだ。ぼくはこの子が城について語るのを聞きたくなった。
スマホを出して、アプリを起動させ、連絡先を交換したいと差し出した。
眼鏡の子は「……はあ?」という顔をしたが、そのあと、ぼくから視線を外してどこかを見て、思案顔になり、ごそごそとスマホを出してきた。
◇◇◇
「……ということがあったな」とぼくは放課後に買った紙パック飲料にささったストローを啜って、ひさしぶりに選んだいちごミルクの味に、また記憶がよみがえった。
あの日、出会った男の子とは、いま、進学校で学年首位を争っている。常にぼくが圧勝しているのを、試験用紙の束とともに笑顔で報告すると、彼はいつもわかりやすく表情を歪め、悪態をついている。
海外に留学してもよかったが、ぼくはまだ彼といっしょに学生生活を過ごしたかった。
ぼくはあの睨み合ったとき、一目惚れをしたのだと思う。でもそれはまだ言っていない。
だって、最近気づいたし。
このまえ、あの日完成させたジグソーパズル絵画の実物を、いっしょに美術館に見に行って、うん、この絵、好きだなと、となりの彼のしかめ面の横顔を見たら、びっくりするほど、胸に熱いような感情が噴き出して、身体がこわばった。
積年の思いというやつだ。自覚はまるでなかったけど。
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手始めに、なぜ、あのとき、連絡先を交換してくれたのか今度あらためて訊いてみようと思った。
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