温もり

本の虫

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6月

独占欲

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「それでね、隼くん・・・」
どろり。向こうで黎が隼と楽しそうに話している。なんだか最近、一層仲良くなったようだった。
隼から誤解だと告げられた後、むしろ今までより強くどろりとした気持ち悪いものを感じるようになっていた。俺はいまだそれに、名前を付けられていない。
「黎、今日の朝の犬、おぼえてる?あれさ・・・」

本当は、気づいている。この黒いやつがなんなのか。だって、今までも感じたことがある。いつだって無視し続けてきた。これは、これは。

嫉妬。

「ねえ、よ~たぁ?ここ、わっかんないんだけどぉ~ってちょっとぉ~?」
「・・・ん、あぁここは。」


俺は真姫が好きなんじゃないのか?女が好きなんじゃないのか?どうして、幼馴染の、真姫とは全くタイプの違う男を。こんなにもこんなにも大切に思ってしまっているのか。黎が俺以外としゃべっているだけで、妬いているのか。

好きだ。黎が。・・・真姫よりも。




*****

in放課後



「真姫。話がある。」
「・・・改まって、なに?陽太。」
「ごめん。・・・別れよう。」
6月。梅雨入りして数日。今日も雨が降っていた。俺は、真姫とわかれることにした。真姫には罪悪感しかなかった。怒って殴りかかってきても、受け止めるつもりだ。それぐらいの覚悟だった。今までだっていろんな女の子と付き合ってきたが、一番一緒にいて楽しかった。
「・・・氷室君?」
「・・・!?」
「あたりかぁ・・・」
えっ・・・?なんで真姫が知って・・・
「なんで私が知ってるのって思った?わかるに決まってる。いつだって、陽太は私のこと見てくれてなかった。ずっと氷室君をみてた。私さぁバカだけど。好きなやつの気持ちぐらい、少しは分かるよ?」
「ごめん・・・。」
「謝るぐらいなら、私と付き合わないでほしかった。私は・・・陽太のことほんとに好きっ・・・だからっ・・・」
泣かせてしまった。
「ごめん・・・本当に、ごめん・・・」
「一か月も続かないとは思ってなかったけどっ・・・ねぇ、陽太は私のこと、少しぐらいは好きだったっ・・・!?」
「当然だろ・・・好きでもない女と付き合ったりなんてしねぇし。」
「ずっと、陽太が氷室君への気持ちに気づかなければいいのにって思ってた・・・でも、しょうがないね・・・私はこれからも陽太のこと、好きだから。氷室君に飽きたらいつでも、来て。待ってるから・・・」
「本当に、ごめん・・・真姫・・・」
「氷室君を、大事にしてやれよっ・・・!?じゃーね。別々で帰ろ。」
「・・・また、明日学校で。」



*****



「えぇ~!?真姫、日村君と別れちゃったの!?なんで!?なんでなんで!!!?」
「あ~なんか趣味が合わなかったみたいな?まぁ、今までも友達みたいな感じだったしあんまかわんねーよ?」
「え~でも勿体ないよぉ~美男美女でお似合いだったのにぃ~」
「んじゃ美奈が狙えばぁ~?」
「えっ、無理だし~ww」
「はははっwww」


「えっえっえっ!!!なに、陽太、秋野と別れたの!!?」
「声でけぇし。」
「まじかよ~本命とか言ってたじゃんか。」
「付き合ってみて趣味の違いに気づいたんだよ。」
「くっそぉ!イケメンだからって!俺も彼女ほしーーー」
「「「お前には無理だ/だよ、あきらめろ直輝。」」」
「なんでだよーーーーーーーーー!!!?」



*****


隼に、もしかしてと思って話があると部活終わりに誘ってみた。
「・・・ねぇ、陽太。もしかして・・・」
「隼、いろいろありがとう。俺、やっと気づいたわ。」
「遅すぎ。ぼさっとしてると、とられるよ。女でも男でも狙ってるやついっぱいいるし。」
あぁ、やっぱり知ってたのか隼は。
「上等。負けねーよ。黎は、黎は絶対に誰にも渡さねーよ。」
「こわいねぇ・・・」
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