温もり

本の虫

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12月

決意

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「ねえねえ陽ちゃん。」
「ん?」
「今年のケーキも作ったの?」
「おう。2人じゃホールはきついしな。」
「年々料理上手になってくね・・・陽ちゃんとこに嫁いで正解だった・・・」
「嫁い!?あーまあいいや食べようぜ。」
「うん、いただきます・・・!」
「誕生日おめでとう、黎。いただきまーす。」
今日の夕飯は黎の家で2人きり。母さんにはうちでみんなでお祝いすればいいのにーと言われたが、大事な恋人の誕生日くらい誰にも邪魔されたくない。
「ねーねー陽ちゃん、お願いあるんだけど・・・聞いてくれる?」
向かいに座る黎がこてん、と右に頭を傾けながら見つめてくる。これ絶対断るわけないってわかってて言ってるし、なんなら俺が断れないようにわざとやってるんじゃないか?ってレベルでめっちゃ可愛いというか俺は今まで黎のお願いを断れたことがない。
「ん?なんだよお願いって?」
「あのね・・・30日まででいいの。うちに泊まってくれない?・・・僕の隣に、いて。」
「・・・っ!!」
なんでそんなに泣きそうなんだよ。辛そうな顔すんなよ。
「だめ、かな。ダメだったら、別にいいよ、忘れ「ダメじゃない。」・・・え?」
「ダメなわけないだろ。だいたい俺、黎のお願い断れたことないってわかって言ってるだろ?黎が望むことなら、俺は何でも叶える。だから、そんな泣きそうな顔すんなよ・・・お前に泣かれるの、俺、マジで無理なんだよ・・・」
「・・・ありがと、陽ちゃん。いっぱいいっぱい愛してくれて、ありがとう。」
「お誕生日様だしな。これからも俺はお前を愛してるよ、絶対に。」
「・・・ねーねー陽ちゃん、2人っきりで3週間以上も1つ屋根の下なんて、新婚さんみたいだね♪」
「新婚って・・・俺らもう新婚みたいな初々しさ残ってないだろw」
「そーかも、だってずっと一緒だもんね。熟年夫婦だ・・・!」
「そうそう。ほんとはなー、お正月も一緒に、いたいんだけどな。」
黎が頑張って暗い空気をいつもの空気に戻してくれたのはわかってた。でも、うやむやにする気はない。恋人同士になれて、今までよりずっと深い関係になって。大晦日の直前までは泊ってほしいとやっと言ってくれたのだ。その先に、踏み込ませてほしい。黎を1人にはしたくない。寂しい思いも辛い思いも1人でいっつも抱え込むから。だから、悪いけど強制的に踏み込ませてもらう。
「なに、やっぱ嫌がってるの・・・?そんな意地悪言うとか。・・・なんて、こんなこと言う僕が一番意地悪だね・・・あのね、陽ちゃん聞いて?」
「ごめん、黎。気分悪くさせたよな。なんでも聞くよ。」
「あのね、来年からは一緒に年越ししよう?おばさんの年越しそばとおせち、食べたいな。」
「え・・・」
「紅白歌合戦も見たいし、初詣も行こうね。お屠蘇飲んでみたいな。あと、福袋っての買ってみたい。いいでしょ?」
「れ、い・・・?」
「今年、お父さんと喧嘩するつもりなんだ。帰ってこないで!って言うの。出てけー!!って言われたら陽ちゃんとこ行くもん。帰ってきたいんだって言われたら、気まずい空気つくんなっ!!って言ってやる。だから、来年は陽ちゃん一緒に年越ししようね。」
いつから、こんなに強くなったんだろう。ちょっと前までは、守ってあげないと壊れてしまいそうで、いなくなってしまいそうで。綺麗だったけど儚くて危うかったのに。今はすっかり凛々しくなったというか。凛とした美しさ、って感じになった。
「出てけって言われたときしかうちに来てくれないのは、寂しいな。どうせならうちに来ちまえばいいのに。なんてな?・・・苦しくなったら、いつでも俺のとこ来てくれ、1人で抱え込むな。俺の知らないとこで傷つくなんて許さない。それだけ、約束してくれ。楽しく、新婚生活しような?」
「うん、うん・・・陽ちゃん、ありがと、一緒のベットで寝よう?1人じゃいつもさびしい・・・。」
「泣くなって。冷めちゃうから、早く食べようぜ。あと、不用意に誘うなよ?お前のこと、大事にしたい。」
「・・・たまには陽ちゃんの好きにしていいよ?」
「今夜覚えてろよ。」












「おい・・・黎それはないだろ・・・」
あの後はいつも通りくだらない話しながら夕飯食べて、ケーキ食べて。ぼーっとテレビ見てたら黎が眠くなったみたいだから、風呂入れって言って。ベットで待ってるとか可愛いこと言うから多少なりとも期待して風呂入って出てきたのに・・・
「すぅ・・・すぅ・・・」
「寝てんなよなぁ・・・」
安心しきった赤ちゃんみたいなあどけない顔でベットで寝てる黎は控えめに言って天使。天使なんだけど・・・
「生殺しは反則ですよー黎さーん・・・」
とか言っても全然起きない。こりゃ、完璧に寝てるなぁ・・・まあ、でも今日は疲れたんだろう。誕生日おめでとう、といつもはしゃべらないような人からもいっぱい言われてて、たくさんしゃべってたから。
「綺麗だな・・・」
くしゃり、と黎の綺麗な髪をいじる。・・・ちょっと期待したけど、マジで起きねぇ。
「あぁ、くそ。寝るかぁ・・・」
それしか選択肢がない、この状況だと。
「おやすみ、黎。愛してるよ。」
囁いて、触れるだけのキスを。それぐらいは許されるだろ?
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