神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第一章

ディアブロ

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  スイ本日の日程はこれを読み上げてください

 ヴィンセントもかなりの無理をしいているスイが眠気まなこでも読みやすい様、台本口調で書くのにもこの1週間でやっと慣れてきたようだ。

  教皇猊下、本日は朝食後、
  9時からダーナロ王国のベントソン伯爵との面会
  11時からハーニアムから特師団副隊長
  ヒャダルディン様との面会
  12時半から昼食
  14時から緊急会議
  17時から夕食の予定で御座います

   尚、必ず一度は断られるので下記の通り
  説得して下さい

   枢機卿の失踪の件は内々に処理する為
  公になっておりません
  今からお断りを入れようにも既に
  此方に向かっているので連絡の取りようが
  有りません
   ベントソン伯爵の所には転移出来ますが
  特師団の副隊長殿は貴族様ではなく
  騎士爵の方なので爵位章をお持ちでは
  御座いません
   それにベントソン伯爵は次の奴隷商候補の方
  で御座います

   いよいよ、作戦開始です
   よろしくお願いします

                  ヴィンセント

 

 いつもの朝とは少し違うのは、今ラミアンの隣にいるのが、ヴィンセントではなくスイだと言う事。
 ヴィンセントが居なくなって1週間。何の問題もなくびっくりする程円滑に物事が回っている。
 城中の一抹の不安だったヴィンセントが居ないと言う事態は余りにも有能なスイのお陰で払拭されていた。
 それもその筈。実際仕事をしているのはヴィンセント本人だ。なのでミスは殆どない。その日の日程確認、ラミアンの身の回りの世話の仕方、その他各種書類仕事は指示通りに書き写す… スイはヴィンセントの指示を忠実に実行するだけだ。
 それも今日で終わりだ。
 作戦に関しては何も聞いていない。自分が顔に出やすいタイプなのはよく分かっている。だから、敢えて聞かない事にした。

(兎に角俺はヴィンセント様の指示通り行動するだけだ)
 
 スイはヴィンセントの指示内容を書き留めて、内胸ポケットに鏡をそっと忍ばせる。
 ヴィンセントが使っていた司教室から出てラミアンのもとへ向かう。

「教皇猊下、本日は朝食後、9時からダーナロ王国のベントソン伯爵との面会。11時からハーニアムから特師団副隊長ヒャダルディン様との面会。12時半から昼食。14時から緊急会議。17時から夕食の予定で御座います」

「面会や会議などしてる暇はない」

 ラミアンの支度整えているメイド達がいる事は気に留めずヴィンセントからの指示を読み上げる。

「いえ、猊下。枢機卿の失踪の件は内々に処理する為公になっておりません。今からお断りを入れようにも既に此方に向かっているので連絡の取りようが有りません。ベントソン伯爵の所には転移出来ますが、特師団の副隊長殿は貴族様ではなく、騎士爵の方なので爵位章をお持ちでは御座いません。それにベントソン伯爵は次の奴隷商候補の方で御座います」

「…そうか、お前に任せる」

「はい、私にお任せくださいませ、教皇猊下」

 そんなこんなでスイの側使いっぷりがいたについて来た今。聖王国聖城も少しづつ日常を取り戻しつつあった。兎にも角にも、未だに枢機卿4名及びヴィンセントが姿を消したままであるのは変わらず、忙しさは拍車がかかる一方だったが混乱状態は一旦終了していた。
 枢機卿で唯一無事帰ってきたユリウスはラミアンの一人息子で後継者だっただけで特段何か仕事が出来る訳ではなかったのでいてもいなくても変わらず。幾らスイが有能であっても枢機卿がいない事で忙しくなっていたのは下々の者たちだった。

 少し疲れた様子のラミアンを気遣う素振りをするスイだったが、ラミアンはその手を取る事は無かった。スイの評価が上がっているのは知っているが、代わりにユリウスの無能さが露呈しているのは言うまでもなかったからだ。枢機卿でありながら、次代の教皇となる筈のユリウスが無能だと周知されて仕舞えば、見た目だけで女性信者から支持を受けているユリウスの変わって、次代の教皇として押されるのは各国の貴族からの支持があるビビアンだと分かり切っているからだ。
 ラミアンとしては一刻も早くビビアンを破門したいが、枢機卿が居なくなった事でそれは難しい。ならば、とにかくユリウスの無能さが他の有力な信者に露呈してない様にするしか今は方法が無かった。
 そしてもう一つの方法を今すぐにでも実践するしかない。

「明日は予定通り1日空いているのだな」

「はい、明日はお申し付け通り何も予定は組んでおりません。司教以下の教会院(貴族院と同義)で失踪事件に関しての会議をすると報告は受けておりますが、猊下に出席賜る様な新たな情報は出てきておりません」

 スイの話を聞いてか聞かぬか、ドカリと椅子に腰を掛けるとラミアンは食事を運んできた召使い達を見てふと思い出したかの様に尋ねる。

「助祭にティリスという者がいたと思うが今何処にいる」

「猊下…ティリス助祭は1週間程前にお亡くなりになりました…」

「そうか」

「猊下に名前を覚えて頂けているだけでティリス助祭も救われる事でしょう」

 ラミアンの呟いた一言にスイがすかさず付け足すと、何でもないと言う表情で豪華な食事を取り始めた。






「猊下、ハーニアムから特師団副隊長ヒャダルディン様御到着されました」

「ご紹介賜りました、ヒャダルディンで御座います。本日は私共の為にお時間を頂き誠に有難う御座います。ハーニアム卿からもお礼を申し上げると言付けを承っております」

「すまない、ヒャダルディン殿。余り時間がない故、要件をお聞かせ願おうか」

 丁寧な挨拶を他所に無愛想な対応をするラミアンにもヒャダルディンは特に気にする事はなく笑顔で頷く。スイからすれば寧ろかなり丁寧な言い回しをしている、と思う所だったが向こうの護衛騎士はラミアンを睨み付ける勢いだった。

「そうですね、回りくどい事は私も嫌いでして、助かります。では、手短に…ディアブロから御伝言が御座います」

「D…からか。ハーニアムにも手を出しているとは流石としか言えん」

 ハハハッ、と笑うヒャダルディンに対し、の名を耳にしてからラミアンの顔は暗い。

「手を出してる、とは言い得て妙ですね。まぁ、ディアブロはそう言う例えはお好きですから、今回は目を瞑りましょう。…それで伝言ですが、明日私も行く、との事です」

「…」

 何もかも知られているのだろう。明日ラミアンが帝都に赴こうとしていた事は側遣いとしていたスイにすら言わず頭の中で密かに考えていた事。それを何故気付かれたのか、心の中を読む力でもあるのだろうか、それはは全く判らない。

「では、また明日お会いしましょう」


 予定していたよりもあっさりと帰っていったヒャダルディンをスイに見送らせると、ラミアンはそのまま自分で荷造りを始めた。
 正直な話、この後の緊急会議など情報も集まってないのに何を話すのか。

(明日など待って居られるものか。この結晶さえあればどこにだって自由にいく事が出来るのだ)

 荷物を持ったラミアンはそのまま部屋を飛び出し、いつも通り鏡とオパールの光だけの薄暗い部屋に入る。

「ポスト・ライデン。…ポスト・マスカス!…ポ、ポスト・ベノボルト!!…ポスト!ディスクラム!!!」

 枢機卿が失踪後何度も何度も試したが何の反応も無かった。そして、やはり今もない。
 ビビアンの所に直接行きたい所だが、実はポスト先には共通点があり、ある一定の条件下でしか使えないのだ。
 ビビアンは前教皇の孫であり、皇族である事でその共通点から除外される。もちろんユリウスもだ。

 ラミアンがトット・チベットを貴族にするのは決して彼のためでは無く、自分がいついかなる時も気にせずに行けるポスト先に出来ると踏んでいたからだった。結果、それも叶う事は無かった。

ーーコンコンッ

 扉をノックする音でラミアンは上半身のみ振り返った。

「猊下、失礼致します。帝都に行かれるのですね?」

「…スイ。分かるだろう、お前は知らぬかも知れぬが、ディアブロが帝都に来る前に何としてもビビアンを破門しなければならないのだ。もう一刻の猶予もない」

「猊下、でしたら良いポスト先に心当たりがあります」

 ラミアンはスイの発言に一瞬違和感を感じた。
 何故なら、彼はこの2週間実に見事に内政を回してきたが、2週間前まではただの兵士だった。1度だけ共にポスト先に赴いただけで、転移魔法について何も知る筈のない彼が何故ポスト先についての心当たりがあるわけがないからだ。
 しかし、ラミアン自身は焦りからかそれには気付いておらず、ただ単に何か引っかかる、程度の小さな違和感では彼の発言を退ける程の力は無かった。

「それは何処か直ぐ分かるか」

「はい、自室に戻れば直ぐにでも」

 スイはそう言い切るとラミアンは黙って振り返って居た身体を戻す。スイはそれを肯定と受け止めて直ぐに自室へ走り出した。


「猊下、この者です」

「名前は」

「ハロルド・マスティス。つい最近男爵となったばかりの元商人です。猊下が突然現れても貴族院バッチの意味を知らせる為と言う事も出来ましょう。それに平民からの成り上がりを嫌う貴族も多いです。そう言う者は貴族社会では簡単に受け入れられない。新参者は何処の派閥にも属さていない。それに元商人です。何か与えれば向こうも何かしらを与えてくれるでしょう」

「…」

 スイの言う通りだ。ハロルドが貴族に成り立てなら扱い易い。それに一商人が男爵になったばかりの時、他の貴族からの圧力などで商売を邪魔されて直ぐ廃爵になるのはよくある事で今はとにかく焦っている所だろう。後ろ盾になってやれば良いだけで減るものは何もない。

「ハロルド・マスティスの所へ向かう」

「はい。お気をつけて」

 いつも通り予定が詰め込まれている木簡だけを手にしたスイに見送られながらハロルドの元へラミアンは向かうのだった。

 

 


 




 

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