神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

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 休日2日目。
 レスターに体に良く無い、と夜更かしを止められたリーンは朝日を感じて目を覚ます。
 早めの起床にも関わらず、当たり前のようにいるレスターはリーンが起きた事に気がつき、駆け寄ってくる。

「まだ早い時間です。もう一眠りされては如何でしょう」

「…準備がまだならそうしますが」

 来たばかりなのは明らかだ。いつものキッチリとした正装ではなく、少しラフな姿のレスターに軽く言葉を返す。
 寝巻きとまでは言わないとしてもいつでも完璧なレスターの姿を見てきたリーンにとってはラフな部屋着姿はとても新鮮だった。
 リーンの視線に気づいたレスターは困ったような顔で言う。

「昨日言われた通りに少し楽な服装を選んだだけです」

 最近、照れを覚えたばかりのレスターは恥ずかしさから背を向けるがそれは失礼だと分かっているからか、振り返って戻りを繰り返していて、それはそれは可愛らしい少年だった。

「今日は皆んなの試作品を試す日にします」

「畏まりました。休憩室の方に全て用意させておきます」

 部屋着に着替える。
 今日はリーンの瞳と同じ爽やかなスカイブルーのシャツに合わせて、下は少し細身の紺のスラックスでかなりシンプルなスタイルだ。レスターに昨日と同じく肌触りの良い白のニットカーディガンを温度調整がしやすいようにと肩にかけられて部屋を後にして食堂へ向かう。
 すれ違う使用人達と軽い挨拶を交わして席に着くと、リーンお抱えの【料理人】アースがとても嬉しそうな様子で料理を運んで来る。

「何か良い事でもあったのですか?」

「はい!今日はリーンハルト様が試作品を試す日だと伺いましたので、私も試作品を披露させて頂こうと思いまして!」

 気付いて居た人もいるだろうが、この屋敷では効率の良い伝達のため文字の読み書きのできる使用人には“タブレット”を携帯させている。鏡自体は簡単に作れるのだが、ピアスの方の個数を確保するのにはかなり骨が折れたそうだ。(ハロルドが)
 それもあり“タブレット”を持つ事が使用人達の間でステータスとなっており、文字の勉強に励む者も多いそうだ。
 
「白パンとパイ生地で作ったクロワッサン。それとハトハに合う料理も試作したので少少しずつお召し上がり頂ければと思います!」

「それは楽しみです」

 次々と運ばれてくる料理から懐かしい香りが漂ってくる。
 ダーナロに来る前、ハロルドに頼んでいた物の一部にアルエルム産の食品がある。
 ハトハ(米)は勿論、セイユウ(醤油)ビジョウ(味噌)、ビラン(味醂)、ハトハ酒(日本酒)などの調味料を一通り揃えた。この国では食されていない海苔や昆布などの海産物も何とか見つけ出して貰い、薬草扱いのわさび、生姜、ニンニク、などはキールが株分けして《成長》で育てて温室にて新鮮な状態で収穫出来る様になっている。
 因みにイッシュが言っていたイナラ草は生姜でベンニ草はニンニク、ヒナタツユクサは、紫蘇、ツキノミチクサはミョウガの事だったりする。
 如何やら元々あったものにはこの世界の名前が、作り出したものには漢字由来の名前が付いてるようだ。ますます日本人の存在を思い知らされる。

「アース、どれも美味しいです。懐かしい味がします」

 初めに味噌汁を作って見せただけだったが、今では煮物、煮付け、きんぴら、味噌汁、極め付けは生姜焼き。自らどんどん日本の味をマスターしていった。
 そしてどれも皆美味しい。
 この世界に来て半年経ったが本当に日本の味が食せるとは思っていなかった。期待通りの味に満足し、普段よりも食が進む。
 アースもそれには大満足だったようで、腕を組みながらフンフン鼻を鳴らしていた。

「リーンハルト様、アレらもそろそろ完成しそうです」

「ま、まさか…カ、カレー、が出来るのですか…?」

「はい、そのまさかです。後は“けちゃっぷ”と“まよねーず”も完璧です!」

 嬉しいそうに手を取りニコニコのリーン。
 その表情に倒れた者が出たのはリーンの預かり知る所ではなかった。
 こんなに笑顔のリーンを見れる機会はない。普段は無表情ばかりの顔と美しすぎる容姿も相まって近寄り難い雰囲気を放っている。
 気を遣って優しく接するリーンだからこそ、皆その無表情だからと言ってリーンを怖がる事は無い。 
 しかし、リーンの小さな微笑みを見た事があっても、ここまでの満面の笑みは初めてで、皆がアースを褒め称えたのは言うまでもなかった。

 それからは休憩室に移動して色々な物を試してみた。職人の皆んなが集まっていて楽しそうに解説してくれた。
 ために溜まった試作品の数は有に50点を超え、見て回るのも苦労するかと思ったが、面白さと凄さが上回り苦には感じなかった。

「ハルト様が仰る通り、まだ少し蕩け具合が悪く、舌触りの改善を図りたいと思います」

「レーネ。味は完全にチョコレートです。温度管理が大切なのでジェシーに頼んで温度計を作るのも手かと思います」

「…温度、計、とは暖かさが分かればいいのですか?」

「生チョコレートに関してはそうですね。冷たさも分かれば冷蔵庫にも応用できますね」

「成程…」

 クラス【パティシエ】のレーネもジェシーも新たなる挑戦に意欲的だ。
 こうして新たな案も生まれて商品の改善にも繋がるなはとても良い事だ。進化は知恵を生む。そしてまた進化する。この世界に圧倒的に足りないものだ。

「着心地は如何ですか??」

「これもアリアが作ったのですね。とても良いです」

「はい!それはハルト様から頂いた“絹”で作った物です。兎に角肌触りの良い糸ですが、ジェシーが織り機を改良してくれなければ布にするのも難しかったでしょう」

「2人とも流石ですね。アリアはこの難しい生地でも綺麗に縫製していますし、ジェシーはこの細い糸を織る為により細やかな力加減を機械に良く制御させましたね」

 飛び跳ねるアリアと伏せって頬を染めるジェシーは対照的な喜び方だが、どちらもとても嬉しそうだ。

 全ての試作品の総評が終わり、意気揚々と皆んな新たな試作品への意欲を語って解散した。

「ハルト様、湯浴みの準備が整いました」

「リーン様、試作品のシャンプーとリンスをイッシュから預かっております。リーン様のお好きなガンガロの香りだそうです」

 薬師にお願いする方では無いのかもしれないが、美容関係の商品を作るのは1番適任だったのはやはりイッシュだった。肌にいい薬草、潤いを与える薬草、薬草同士の相性の良し悪し。それを良く把握しているのはイッシュだった。
 ランドマーク夫人や御令嬢お気に入りのピートの香りの化粧品も全てイッシュが作った物だ。そしてやっと洗浄成分を合わせたシャンプーと潤いを保つリンスが完成したようだ。

「な、何かモコモコと、泡立って…大変です!」

「それがシャンプーですよ」

 レスターがリーンの髪を洗いながら驚く様はとても愉快だった。
 市井ように石鹸の開発も完了していて、アリアの作った泡立ちの良いタオルのお陰で身体を洗うのもとても楽になった。

「リーン様、お髪が…よりサラサラに…これ以上美しくしなくとも…いえ、何でもありません」

 ぶつぶつ言うレスターの声は水をかける音にかき消されてリーンに届く事はなかった。

「シャワーが欲しいですね」

「“しゃわー”ですか?」

 誰に頼もうか、と考えるリーンを見てレスターも嬉しそうに微笑む。この和やかな雰囲気がレスターはとても好きだった。

「やっぱり、ジェシー…では無いですね、あ、でも蛇口が必要…ヘット部分はプラスチック?かな、でも無いから、陶器で代用するとして…ベンとエマ…細かい穴が必要となると…サーベル…ホースは樹脂…の加工…んー」

「出来ないところは《錬金術師》に任せるのがいいのでは?」

「それです!レスター!」

 2人でいる時だけのこの信頼されている感じ。気を許してくれているのだろうし、2人きりの時だけ見せてくれるこのウキウキした表情。
 誰にも見せたくない、と言う浅ましい感情が漏れ出さないように、レスターは優しく微笑んでみせた。



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