神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

遊ぶ為の準備

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 日々、沢山の問題が増えていくが、何はともあれ時は過ぎていく。
 

「ん…レスター…ふわあッ、…もう少し優しくして貰えますか…」

 リーンの吐息が混じった声が無駄に広い部屋に吸い込まれて消えて行く。

「ンッ…レスター…お願いします、もっと…優しく…して…」

「……リーン様」

「…はぃ、イッ」

 レスターは真っ赤にした顔を天井へ向けてたまま目を目一杯強く瞑り口を一文字に固く結ぶ。レスターが必死に絞り出した声にリーンは必死に返事を返す。何とか力を抜こうと頑張るリーンと視線を天井に向けたままのレスターではこの状況を打開することは出来ない。

「はぁ、レスター様。そのままだとリーンハルト様の真っ白く美しい滑らかな艶々お肌が貴方の顔のように真っ赤になります!」

「いやッ。待て、ミモザ!あ!おい、イアン!私が!」

 2人の言い争いを尻目にリーンの露わになった腿にそっと触れる。

「イアン…気持ちいいです」

 全身を優しく包み込み、トントンと心地よく深いところまで刺激される感触にトロけきった表情を浮かべるリーン。
 満足そうな笑みのイアンと色んな意味で限界だったレスター、対照的に頬を赤らめるミモザ。

「皆んな…注文通りの良い仕事でした…。後はこれを椅子型に改良出来ればぁ、あぁ…イアン背中も…お願いします。後でみんなも使ってみてください、ね…」

「ハルト様…そんなに気持ち良いのですか…?」

 顔を真っ赤に染めた職人達がアリアの言葉にごくりと唾を飲み込む。

「…きもち、良いです、」

「リーン、後で俺にもやってくれ~」

「「「「イアン様!!」」」」

 突然発せられた大声に皆口元を押さえる。イアンはあれ?俺、またやっちゃった?、と頭を掻く。リーンはトロけて力の入らない身体を足掻くことなくベッドに預けたままだった。

「恐るべし“まっさーじちぇあ”」

「見てられません…」

「ベン…後で、ね?」

「あぁ、ハニー」

 そう、リーンはマッサージチェアを作ろうとしていたのだ。今日はその試作品の品評会の日でその性能を己の身で体験していたのだ。
 今はまだ足と腕、手のひらを空気圧で刺激するエアバッグ”と背中全体を押したり叩いたりするローラーが部分的に完成しただけなのでとてもマッサージチェアとは言えないが、部分的に使ってもまずまずの出来だ。
 しかし、この商品は上流階級の貴族達に売らない。実際、貴族達はメイド達にやって貰ったり、マッサージ師を呼んだりしているので欲しがる人は少ないだろう。物珍しさはあるだろうが。

「ハルト様、宜しければ今度ミモザがマッサージさせて頂きます」

「機械もいいですが、やはり人の手…」

「リーン様、今日のお昼のメインは“ぐらたん”と料理長から聞いております」

「グラタンですか…。もうホワイトソースをマスターしたのですね。楽しみです」

 レスターは遮りもいいところだが、うっとり、子供のように目を輝かせて言うリーンに誰もそれ以上は何も言わない。今のように、初めの頃よりも近付きにくい雰囲気が減り、笑顔が増えた事に使用人、職人一同喜んでいた。
 ただ、笑顔と一言に言ってもリーンの場合、表情は言うほど変わってない。初めからリーンは常に笑顔で緊張感のある場面でもそれは絶やさない人だ。
 なので、どちらかと言うと周りがリーンの喜んでいる、楽しんでいる、と言った感情を雰囲気から読み取れるようになった、と言う方が正しいかもしれない。
 いつもクールで冷めた笑顔のリーンとは少し違う、少し子供っぽいような明るい雰囲気。その雰囲気を表情を引き出すために全身全霊で励む彼らは完全にリーン中心に動いているのだ。

「ハルト様!アースめはもう完璧にホワイトソースをマスターしました!どうぞ!“ぐらたん”です!」

「では、いただきます」

「「「「「…」」」」」

 ふーっふーっ、と息を吹きかけるその動作を固唾を飲んで見つめる。流れ落ちてきた髪を手で押さえながら“グラタン”を口へ運ぶ。
 熱々の“グラタン”をハフハフしながら味わう。軽くかいた汗が額に滲み出る。アースと共にコンソメのスープに格闘した日々の事を思い出しながらその奥深い味を喉の奥へゆっくりと流し込む。

「…完璧です。アース、これは完全に“グラタン”です」

「…あぁ、ハルト様!やっと!!ようやっと…!!」

「“グラタン”が出来たらドリア、それからラザニアやホワイトシチュー…色んなものがまた作れようになりますね」

「ハルト様!…お、お食事中にすみません…。あの、実はオイルの抽出、精製に成功しまし…て…」

 息を切らしながら入ってきたイッシュの言葉にアースとリーンは目を合わせる。
 この世界の油と言えば動物の脂身を集めたラードだけでその油で揚げた揚げ物は胃もたれは必然、口に残るギトギト感は最悪だ。
 それもその筈、ます脂身自体の品質が良くない。保冷機能や高速輸送のような高度なものは無いので酸化しきった脂は旨味はどこへやら。そもそも家畜の餌などにこだわりを持って美味しい肉を!と考える者はこの世界には少ない。
 しかも、その脂身を精製する様な技術もないし、酸化を防ぐ為の密封容器などの革新的なアイテムは存在しない。
 なので如何に美味しく調理するかが料理人の腕の見せどころで、カラッとジューシーなのに沢山食べれる揚げ物は夢のまた夢だった…昨日までは。

「唐揚げ、トンカツ、海老フライ、天ぷら、酢豚に、海老マヨ…あ、カツカレー…なんて最高ですね」

 アースがリーンの言う聞き慣れないメニューを書き留める間、両肘を机に着き両手で頬を包み込みながら、色んな料理を想像し、うっとり頬を緩ませたリーンに皆んなはぁー、と吐息を漏らす。
 綺麗な顔立ちながら、その表情は可愛らしくもあり、誰もが思わず見惚れてしまう。

ーーー私、ずっと見てられるわ…
ーーー早く食べさせて差し上げたいわね…
ーーー私の手で心置きなくお支えしたいわ…

ーーパンパンッ

「リーン様、“ぐらたん”が冷めてしまいますよ。熱々が美味しいと語っておられたのに宜しいのですか?」

「いえ、熱々で食べます」

 レスターの手を叩く音に使用人達は我に帰り、背筋を正して仕事に気持ちを切り替える。何度もふーっふーっと“グラタン”を冷ますリーンを見て、イアンとレスターも同じく冷ましながら“グラタン”に口をつけた。


 “グラタン”の登場と植物油の抽出、生成成功の知らせにより興奮冷めやまない午後、屋敷には大量の荷物が届けられた。中には未だにコネクションを作ろうとする貴族からのプレゼントも混じって入るが、殆どはリーンが注文していた物だ。
 正直この世界は娯楽が少ない。今までは事件やら仕事やらで忙しくしていたが、粗方の準備が整い、ひと段落した今は紅茶を飲んで、皆んなの試作品を試して、寝る、そんな穏やかな日々が続いている。言い換えれば暇とも言えるそんな日々の唯一の娯楽が食事であり、不摂生が続いている感は否めない。

「レスター、皆んなのレベルは如何なっていますか?」

「昨日の報告の時点では、シュミット、アンティメイティア、ハボックはLv10《鑑定・全》を習得済みで、他の支店長達も皆Lv8、9まで来ております。習得完了まで然程掛からないでしょう。後は一度錬金術を行えば良いだけです」

 【錬金術師】を育てて早4ヶ月。3人もの人間が《鑑定・全》の習得完了した。予想よりも早い結果に満足感と同時に無理をさせたのでは?と居た堪れない気持ちもあるが、何はともあれ結果が最大限出ているので兎に角皆んなを褒めてあげたい気持ちだ。

 《錬金術》は《鑑定・全》を取得した者が《錬金術》を一度でも使用すればなれるクラス。《鑑定・全》を取得さえすれば誰でもなれると言える。
 ただ、この世界で《鑑定》は貴重なスキルで習得方法を現在、研究中とされている。未知のスキルだ。
 今回は4ヶ月と短い間で習得者が現れたが、もし習得方法を知っていても、本来なら10年程は掛かるような特別なスキルを4ヶ月でとなると相当な荒技を使ったとも言える。

「では、資金繰りの方は如何でしょう」

「資金源の魔道具販売と貢物の売買代金合わせて大金貨700枚になりました。当初の目的である大金貨500枚は既に達成しております」

「予定より早いですね」

「貢物の売買代金が大きいですね。ハロルド様が少し色をつけて下さったので予定よりも早く集まりました。お礼状もお送りしております。ご依頼頂きました件もポール様が一括で引き取って下さりましたし、元々リーン様がお持ちのご資産も残っておりますし、リヒト様からお預かりしていたお礼金には手を付けておりませんので、もしもの時も問題ありません」

 実は帝国を出る際にリヒトから預かっていた分と言って大金貨250枚を渡されていた。受け取る気は全くなかったのだが、レスターがちゃっかりと受け取ってしまい断る間もなかったのだ。
 その際、とうとうあの葉っぱの正体が【世界樹の葉】と言う、ゲームなどに明るくない凛ですら、聞き覚えのある名前にドラ◯エだ、と驚愕したのは言うまでもなく。

「では、商会辞めます」

「…へ?」

「イアン、“自由時間”ですよ」

「おう!遊びだな!」

「その前にひとつだけやっておかないといけないことがあります」

「…?」

 1人置いてけぼりのレスターがその意味を理解するのはこれから少し後の事だった。





 
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