神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第二章

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 時が経つと言うのは本当にあっという間で、この世界に来て1年が経とうとしている。
 人は新しい経験をすると時が経つのが遅く感じるそうだが、瞬く間にこの1年が過ぎていったようにリーンは思っていた。
 特にダーナロに来てからというもの新しいと言うよりも懐かしいものに触れてきたというのに1年が早かった。ただパーティーやイベントを開催したり、打ち上げ花火を作ったり、タオルやトイレを作ったり、多分あちらに居たままではする事も無かったであろう事を沢山行ったのは間違いない。
 かなり充実した日々だったし、何より凛の時には感じた事のないくらいの楽しさ、ワクワク感を体験していた。
 此方に来たばかりの時はまだ自分の幸せを考える事はなかったし、願う事もなかった。寧ろ幸せになりたいとも思ってなかった。
 でも勝手に自然に今の生活を楽しんでいる自分も嫌いではなかったし、凛の時のように自分の幸せに罪悪感を感じる事も無かった。必死だったからなのか、それとも凛は一度死んだからなのか、はたまた世界が違うからなのか、理由は分からないが、これはこれで中々能天気な自分らしいとも思えた。

「リーンハルト様のお陰で無事全てが終わりました。この国を取り戻せたのも、犠牲は多かったものの多くの民を救えたのは貴方様のお陰です」

「マルティア様。私は何もしてないのですよ。どちらかと言えばニートを楽しんでいたので今度はきちんと働く事も考えなければですね」

「…“にーと”?ですか?」

「まぁそれはさておき、ビル」

「はい、リーンハルト様」
 
 ビル・コンラッド。彼はカーディナル・コンラッドの弟で元薬師であり、今はキールの植物学の先生をしている人物だ。

「屋敷の薬草達は貴方にお任せしますね」

「かしこまりました」

 リーン達は当初軽いお手紙だけで別れの挨拶をするつもりだった。態々王宮に出向くのも気が引けるし、あまり良い思い出もない。少し助力はしたかも知れないが、マルティアと会ったのもあの一回だけ。決して親しい間柄とは言えないだろうからだ。

「しかし、あそこまで手の込んだ事をしなければならないとは中々…」

「彼女も呪いがかかっておりましたからね。そのままにしておけば、またあの体は腐敗しやがては死病の感染源となります。そのままにはしておけません」

 ディアブロの呪い。これは死よりも苦しく、人を人とは見做さない侮辱の呪い。
 ディアブロは部下を駒のように扱うだけには飽き足らず、情報を漏らせばその身は呪われ、死が訪れる。更にはその死体ですら周囲に病気を撒き散らす害悪と化す。死魂は輪廻に帰られず、永遠にこの地に留まり彷徨い続けるという禁忌の呪い。
 この呪いの怖いところは呪いにかかった事に本人が気付かないこと。そして本人の負の感情がその呪いを発動させる。それが強ければ強いほどその病はとても強いものになる。
 苦しみながら死ねば、苦痛の病。恨みながら死ねば、全身が爛れていく病。悲しみながら死ねば、血の涙を流す病。
 それを部下に掛けていた。
 これがネアで出た死病患者3人の発症原因でもある。
 まるで道具のように扱い、捨てる。人権もクソも無い。
 そして、実はこの呪いが元ディアブロの部下だったアリスにも掛けられている。だからアリスにはディアブロにかけられた呪いについて伝えた。
 兎に角現状は感情が負の方向に向かわないように気にかけることしか出来ない。この呪いを解く鍵は【大魔法師】が使う聖魔法【ディスペル】のLv:MAXだけ。
 だから、メルーサの呪いが発動しないよう本人が恨み、妬み、嫉みを持たないまま死を迎えさせる事しか出来なかった。そしてこの危険な役割を買って出てくれたのがフォークネルだ。
 彼はアリスと同じく神導十家の生まれ。能力はスキル【トレース】姿形、声や仕草、考え方や行動パターンなどを全て真似る事が出来る。
 その能力を使ってとある夫人に化けさせて貰った。それがソマリエ夫人。彼女は物腰柔らかで品があり、優しく包み込むような人。彼女の氷切った心を溶かす最適な人物だ。しかし、本人は体が弱く中々外に出る事はない。なのでフォークネルに頼ったのだ。

「それに関しては元々此方の領分です。恩に着るつもりはありません」

「しかし、私どもは無事何事もなく罰を執行出来て助かりました」

「そう言えば王女殿下も迫真の演技だったとクローディライトから聞いてますよ」

 話を逸らしたリーンにルルティア以外は苦笑いだった。

「い、いえ、私の場合…自業自得なのもありまして…何とお礼を言ったら良いか…その、リーンハルト様のお陰でございます」

「お礼は後ほど兄上に申されて下さい」

「リーン!俺に振るな!お前がやった事だろう!」

「私は手紙を書いただけですよ?」

 ふふふ、と笑うリーンに見惚れるルルティア。リーンからの手紙を今も大切に持っている。残酷な手紙だったのにだ。
 内容は悲惨だ。
 化粧が濃すぎる、ドレスが似合ってない、ダサい、仕返しは幼稚すぎる、無視しろ、静かに一人で過ごせ、でも放漫に振る舞い、国庫を使いまくれ。適当な人材を送るからそれ以外をクビにする事。そんな感じの内容をオブラートにも包まずに堂々と書き連ねていた。
 当たり前に落ち込むルルティアにクローディライトは提案した。今の配下以外の者達だけの新しい王女宮にすれば嫌な声は聞こえなくなる、と。(勿論、リーンの指示である。あの出会いからずっとクローディライトは密偵のような役割をしていた)それを受け入れてリーンの手紙を戒めのように持ち歩いた。
 イライラは治らない。
 リーンにではなく無能な配下達にだ。今までは盲目にそれが良いと受け入れてきたが、どう見ても全てがダサい。兄がくれた髪飾りやハンカチなどの品の良い物に合わないはしたない物ばかりが部屋に溢れかえっていた。
 それに何より気付かない、良いようにされてた自分にイライラしたのだ。

「数日、部屋に篭っておりましたら…少し落ち着きまして…」

「メルーサが仕込んでいた薬が抜けたのでしょう」

「…薬…?」

 イッシュが深々とお辞儀をして発言の機会を待つ。周りがお偉い方ばかり。そんな中で平民が発言する事が出来るのは許可された時だけなのだ。

「許可します」

「はい。王女殿下にメルーサは精神を不安定にさせる薬を飲ませていました。それを飲むと些細な事で興奮状態になり、人や物に当たったり、酷くなると自身をも傷付けるけるようになります」

「私が、メルーサに…そんな薬を?」

「はい、その目の下のクマと黒くくすんだ爪が何よりも証拠です。爪の黒ずみは薬物中毒症状の患者によく見られるもので、クマは薬による興奮状態が続いて夜きちんと寝れないからでございます」

「…そんな…」

 ルルティアが豹変したのには理由がある。手っ取り早いのは薬だった。表情は化粧で誤魔化しているが、目元は明らかに落ち窪んでいる。

「これからはこちらのお薬をお飲み下さい。興奮を抑えてくれ、毒素の排泄もしてくれます」

 静かに薬を受け取ったルルティアはかなり落ち込んだ様子だった。それはそうだ。ルルティアは何年もの間メルーサから薬を飲まされ、城の者達から嫌われて続け、自分の居場所さえ見つけられないまま、その原因を作ったメルーサに味方のフリをされ、信じ込み、良いように扱われ、言われた通りに過ごしていたのだ。

「何から何までお世話になりまして…。本当に感謝しかありません。王妃として…」

「マルティア様。また愚痴ぐらいはお聞きします」

「リーンハルト様…どうか、お礼の品だけは何か送らせてください。仮を作ったまま、と言うわけには行きません。望み物はありませんか?」

 王妃ははぁー、と息をつくかの様に諦めて言う。これは王妃側が譲歩する以外には話し合いにならないからだ。

「…そうですね。それでしたら1人連れていきたい人がいます」

「…連れて行きたい人?ですか」

「良いですね?コンラッド卿」

「コンラッド…誰のことですか」

「王女陛下。代わりに私がご説明を。私達は王都に2つ程仕掛けをしておりました。1つは皆様にお渡しした“花火”です。もう1つは【指定転移魔法陣】これは特定の人物を任意の場所へ転移させる魔法陣です」

 “花火”を使ったのは爆発音により相手の気を逸させる為ともう一つ作戦の開始から順番に打ち上げ、最後の“しだれ花火”で終了の合図とする為に。そしてそれは革命軍への連絡だけではなく、予め一部の国民にも内々に知らされていた。“花火”の打ち上げと同時に警ら隊や街が雇った冒険者などにも街の治安維持作戦開始の合図などとして広く用いれられていた。
 【指定転移魔法陣】は初めから指定していた人物を指定した通りの場所へ移動させるトラップ式の魔法陣。これはビビアンとティリスにお願いしてかなり前から設置していた。場所は王都の城門の出入り口。仕掛けて1週間ほどで彼は捕まった。

「私共はコンラッド宰相様に頼まれて事前にその【指定転移魔法陣】で彼を捉えていました。彼の代わりは変装の得意な部下がやっておりました。元々メルーサとは殆ど手紙だけのやり取りだけだったようで特に問題もありませんでした」

「…やはりお前には出来なかったか」

「…お父様、申し訳ありません。私はずっと何故伯爵が豹変したのか、それが不思議だったのです」

「使ったのだな」

「申し訳ありません」

 ビルを家庭教師にお願いした時の取り引きとして持ちかけられたのがマンチェスター伯爵の救出だった。薬師でもある彼は今あるポーションよりもより効果の高いポーションを作るために必要なピースの一つだった。いくらイッシュが優秀でも1人では難しい事もある。なのでリーンはそれに応じていたのだ。

「しかし、彼は今回の件の被疑者です。そのようなものを…」

「マルティア様のおっしゃる通りでは御座いますが、彼がメルーサの指示通りにしているをして居なかったらきっとこの国は既に滅亡していたでしょう」

「…どう言う事でしょうか」

「彼はメルーサに国民の命と自身の母の命を握られておりました。それらを守る為にメルーサに与しておりましたが、それは相手側の出方を知る為。カーディナルは知っていたと思っていたのですが?」

 カーディナルは険しい顔のまま頷いた。
 此方の意図に気付いたようだ。ルルティアの時と同じだ。嘘を真実にする。
 マルティアも気付いているがルルティアの件があるからこそ、そこに突っ込む事はない。

「彼はもう死んだ事になっています。呪いも受けてませんので、このまま私が連れて行った方が全て丸く収まるかと」

 褒美とは言えない申し出だ。寧ろ好都合。かと言って断る事も出来ないマルティア達は渋々ではあるが納得し、そのまま解散となったのだった。







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