神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第三章

思いと確執

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「目が醒められましたか…」

「ミモザか。リーン様は?」

「…」

 口を開こうとしないミモザにレスターは起き上がり周りを見渡す。部屋にはイアンとカールがいて二人も口を開こうとはしない。

「イアン」

「あ゛?しらねぇーよ」

 明らかに機嫌の悪いイアンは殺気にも似た視線を送ってくる。そして近くにいたカールも同じく黒いオーラを出している。

「イアン様、お話が……レスター様もお目覚めになられたんですね」

「キール、何があった」

 扉をノックする事もなく普通に部屋に入ってきたキールは手に持っていた書類のような物から顔を上げるなり、レスターを見てそう言った。
 こう言う時は頭の回るキールが一番状況説明も上手いだろう、とレスターは当然ように説明を求める。
 異様な空気がレスターに考えたくない想像をさせていたからだ。

「…リーン様が…リーン様は僕達を捨てた」

「キール!違うだろ!」

「なるほど、書き置きか何かは?」

「此方です」

 ミモザもキールと同じ意見のようだ。
 元はかなり上質な紙だったのだろうが、何度も読み返されている内に折り線に沿って破れたり、涙で文字を滲ませたりと、紙はかなりボロボロになってしまっている。
 手紙の内容を見れば皆んなの機嫌が良くない理由は一目瞭然だ。

ーーー私は遠くに行きます。お金はレスターに全て預けているので自由に使って下さい

 内容はたったそれだけ。
 ここにいる四人はラテの《予知》でリーンが皆んなを気にかけて距離を取っていたと知っているのに、何故この手紙でそう思ったのかレスターには考えられなかった。

「お前がリーンから離れていれば、お前は無事で、城は襲われず、リーンもいなくならなかった」

「…」

 彼らが怒っていたのはリーンに対してでは無く、レスターに対してだった。そして、リーンがいなくなったのを捨てられた、と言い表したのは比喩でも何でも無く、本当にそのままの意味だった。

 彼らはレスターがリーンの言う事を聞かず、側を離れなかったから襲われて重傷を負い、優しいリーンに責任を感じさせたレスターを責め立てているのだ。

「リーン様がいなくなった理由を本当にそんな事だと思っているのならお前たちは私を買い被り過ぎだ」

「なに?」

「リーン様は私がいなくなったぐらいでは何とも思われないだろう」

「本気でそんな事考えていたのか?」

「呆れますね」

 リーンが周りから人がいなくなる事を恐れている、と彼らは分かっていた。だから、極力近くに人を置かず、居なくならないように自分を守っていたのだと。
 いや、正確には分かっているつもりだった。

「…リーン様は自分のせいで人が死ぬ事を恐れている。だから私は、近くにしても死なないと証明して差し上げたかった」

「…」

 レスターの思いを聞くまでは。

「リーン様は誰かがいなくなる事を悲しんでおられるのではない。自らのせいで人が死ぬ事を恐れている。居なくなってもその者が生きているのなら寧ろ離れられたことにリーン様は安心なされる。だから、私は証明するしかなかった」

「でも、死んでいたら…」

「リーン様に以前頂いた物だ。リーン様がここに来たのならこれを確認した筈。これが壊れていないと言う事は私は危険ではなかったという事。きちんと証明は出来た筈だ」

 以前よりレスターの胸元に光るネックレス。装飾品を好まない彼がずっと肌身離さず身につけていたそれを知らないものは居ない。

「これは身代わり石。身の危険を一度だけ守ってくれる大変貴重な物だ。私はリーン様に役割を与えられ対価としてこれを頂いた」

「何か身に危険が…?」

「元々は私の唯一の家族…妹の為に私が血眼で探していた物だ。多分、リーン様は私の妹が奴らの手によって殺され…もうこの世にはいない事も知ってはいたのだろう。リーン様から石を頂いた直後、私は妹の死を予期せず知ってしまった。そして私は無駄な時間を奴らに奪われ、搾取され続けていたと知った。もしあの時、これがなかったら私は……私のそれまでの苦痛と努力の日々を、全て無に帰えしていた事だろう…」

 普段身の上など一切話さないレスターの悲しい過去。そこからリーンのお陰で這い上がったと語るレスターの瞳は揺らぐことの無いリーンへの忠誠を語っていた。

「…とにかく、リーン様を探します。手段は問うている時間はありません。直ぐにでも“桃源郷”へ向かいましょう」

「…分かった」

「「かしこまりました」」

「それでラテは?」

「あの子は…」

 レスターは何となく状況を察して用意に移る為にベッドから降りる。
 大凡だが、ラテはリーンの居場所をその能力を使って知ったのだろう。そして、リーンの思いを尊重する彼女は自分達に問いただされると分かり、黙って此処を去った。
 まぁ、大方行くあての無い彼女の取る行動と言えば、リーンの後を追う、ぐらいなものだろう。


 粗方荷物をまとめ終わるとレスターは自身がどれ程の間眠っていたのかを知った。

 襲撃の日。
 リーンがリヒト達を助けに行くためにエルムに向かった直後。城は最も簡単に族の侵入を許し、レスター達は襲われた。

 レスターは予め、ラテの予言をリーンから知らされていた。その頃から先程皆んなに説明したように考えていた為、各地に残るよう使用人達にリーンからの言伝を命じられた際にレスターの独断で“悪魔”を片付けるように命令していた。
 と言うのも、リーンも“悪魔”が蔓延っていて色んなな被害がある事を勿論知っていて、レスターはリーンがそこ件に関しては相当頭を悩ませていたのを知っていた。
 当然リーンは神殿に赴いた際に目に付いた“悪魔”をイアンに始末させていたように各地を巡っていた間も同様に始末していた。

「レスター様には《予知》の件があります。直ぐにお逃げ下さい」

「いや、あれは“悪魔”だ。それならイアンと一緒にいた方が何処かへ逃げ隠れするよりも安全だ。それよりも今は奴らの目的を知らなくては…」

 だから、正直言ってこの襲撃は“悪魔”を始末するのに好都合だと思った。

「はいはい、近くに居ろよ。リーンに怒られるのは嫌だからな」

「だそうです。ミモザとラテにはカールに付いて貰って、キールは私と一緒に来なさい」

 ただ、レスターには気になる事があった。
 リーンはそんな“悪魔”の処理に躊躇している節があったのだ。
 それはエマ、ベン夫婦が関わっていて、“悪魔”と取引をした事によってフレディが産まれた事も知っていた。フレディはリーンにその事で取引をしており、だからリーンは彼らを“悪魔”と関わらせないように始末に関しては後回しにしていたのだ。

「何故急に動き出した」

「多分、各地で“悪魔祓い”を行っていたからでしょう。向こうは【錬金王】の仕業だと考えたのだと思います」

「エリザベス女王が危ないですね。向かいますか…?」

「そうですね、行きましょう」

 カールに連れられてミモザと移動し始めていたラテはふと立ち止まってエリザベスの元へ向かう彼らの後ろ姿を見ていた。

「やっぱり…」

「ラテ…?」

「私は忠告したのよ…その為に嘘偽りなく《予知》の内容も話したのに…」

 “悪魔”と言う存在は闇深き考えを持つ者の前に現れて、誘惑し身体を対価に願いを叶える存在。
 リーンの考えを知らないレスターはラテの話しを聞いた時、自身の中にあるあの醜い感情が呼び起こされ、今直ぐにでも“悪魔”を始末しなければならない、と勝手な事をしてしまった。

「…お二人には話しておきます。今回の件《予知》では、我々が“特定の悪魔を祓う”事で、アンティメイティア様、レスター様、エマさん、ベンさん、ジェシーさん、フォークさんが死ぬ…と言う者でした。だから、リーン様はそれを避けるように最低限の行動しか行っていなかったはずなのです」

「では、レスター様が勝手に…?」

 結果、リーンが考えていた全員生存ルートが少し変わり、死者は出なかったが、沢山の重軽傷者を出してしまった。
 




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