神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

経験値

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 エリザベスが部屋を後にした後、イアンは暫く椅子にかけたまま何も話し出さなかった。それを不思議に思いながらも部屋を出たイアンに続いて二人も部屋を後にする。

 まだ悪魔の襲撃から復旧が済んでいなく、瓦礫も残る廊下を歩きながらミモザは痺れを切らしたように声をかける。

「では、イアン様。早速、リーン様の元へ向かう準備を致しましょう」

「あー、俺らは行かないぞ」

「「はぁ!?」」

 苦心して、苦労して、やっとエリザベスからリーンの居場所を聞き出したのにわざわざ行かない理由が二人には全くわからなかった。
 そもそも、行く気がないのなら初めからあんなに苦労してエリザベスから居場所を聞き出す必要は無かった筈だからだ。

「な、何故ですか!?」

「そうです!行かない理由があるなら教えてください!」

 興奮する二人に、イアンはとても面倒だと言わんばかり頭を掻きながら深いため息をつく。
 イアンのそういう態度に対しても二人は更に興奮して、言葉尻を強める。

「冷静に考えてみろ」

「私たちはずっと冷静です!」

「えぇ、その通りです!イアン様こそ、良くお考え下さい!」

 流石のイアンも我慢の限界だ、と興奮冷めやまない二人の頭を上から鷲掴みにし、力を込めてそのまま地面に跪かせる。

「良い加減にしろ。レスターが協力を頼んだのは誰だ。そんなのも頭から抜けて考えてんなら使い物にならねぇから黙ってろ」

「「…」」

 イアンの言いたいことを理解して、ゆっくりと視線を地面に向ける。
 レスターはティリスに協力を得た。聖王国の教皇であるティリスは瞬間移動が可能。よってレスターは一瞬でデロスへ向かうことが出来るという事。しかし、イアン達は自力。ここからデロスまでは数ヶ月はかかる。
 と言うことは、レスターがリーンを説得、もしくは和解して此方に帰ってくる時にはまだ船の上、という状態に成りかねない。
 ならば、初めからリーンのことはレスターに任せて待っていよう、という判断をするのが賢明だとイアンは言いたいのだ。

 地面を見つめる二人を確認してイアンは立ち上がり再び歩き出す。

「で、でも!もし…もしも!レスター様の説得でリーン様が帰って来なかったら…!」

 自分達が冷静さを欠いていたのは明らかだ。でも、まだ何処かで納得していない自分がいて、ミモザは去っていくイアンの背中に投げかける。

「ミモザ。それはあり得ねぇよ。分かるだろ…」

「…申し訳ありませんでした」

「気持ちは分かるが、自分を優先にするな。他にもやれる事はあるだろ?明日には出るから、予定通り帰る支度をしろよ」

「「はい…」」

 分かっている。何もかもが分かっているから納得出来ないのだ。いや、したくないと言った方が正しいだろう。
 リーンとレスターの中で行き違いがあった事。そして、誰も傷付けたくないリーンの気持ち、何があってもそばにいると証明したかったレスターの気持ち、どっちも分かっている。
 だから、やっぱりこの状況を作ったのはレスターに怒りながらも、それでもやっぱりリーンが一番信頼してるのもレスターである事への嫉妬。そして、戻って来なかったら…と言う焦り。

「ミモザさん…準備しましょう」

「そうですね」

 今は全て飲み込む事しか出来ないのだ。



ーーーーーー



「準備が整いました」

「よし、帰るか」

 翌日、イアン達は朝食をささっと済ませると出発した。
 この数日で仲良くなった兵士や瓦礫の片付けをする使用人達などに朝の挨拶を交わしつつ、何事もないかのように屋敷を出る。

「ご挨拶は宜しいのですか?」

「あぁ?必要なのか?レスターもしてねぇけど」

「…そうですね」

 言ってることは確かだ。
 だからと言って、レスターがやらなければしなくて良いと言うことではないだろう、と思いながらも何も言い返す事も出来ず後ろをついて歩く。

「全く、礼儀のなってない奴らだ」

「…」

「む、無視をするなぁ!!」

 無言で横を通り過ぎて行く一行を慌てて追いかけて、先頭をいるイアンの前に滑り込んで、ゴホンッとワザとらしい咳払いをする。

「陛下の命でお前達の見送りを任せられた。有り難く受けたまえ!」

「いらねぇよ」

「そう言う訳には行かないのだ!」

「あー、コイツ暑苦しいし、しつこいなぁ」

「暴言は辞めたまえ!私はこの国の軍将であるぞ!」

「…」

 それでも変わらず軍将の横を無言で通り過ぎようとするイアンの肩を掴もうと手を伸ばす。
 が、その手は宙を切り、軍将は情けなく身体を前につんのめさせる。
 軍将という立場上、簡単に交わされたという恥ずかしさを一瞬で怒りに変えた彼はイアンにそれをぶつける為、キツイ視線を向けようと作った顔を上げる。

「…ひぃ…」

「名ばかりのお飾りのゴミが。自分の価値も分からないのか?」

「ゴミ…」

「…神のご友人よ。この度は失礼致しました。副官の私が陛下の代わりに深く謝罪させて頂きます」

「ふん、これで良かったのか?」

「誠に有難うございます」

 そうして再び歩き出したイアンは今度は愉快そうに笑いだす。首を傾げるミモザとカールにキールは小声で説明を加える。

「恐らくですが、イアン様の言う通りあの軍将はお飾りです。親か祖父か…エリザベス様でさえぞんざいには扱えないそれなりの地位のものなのでしょう。それでエリザベス様も含めてかなり手を焼いていたのではないでしょうか」

「確かにあの男はDランクの魔物も倒せそうにないな」

「彼を嗜める為にイアン様が協力したという事ですか?」

「そうなりますね。彼は内部からは言いづらい立場の相手なのでしょう。だから、昨日エリザベス様は敢えてイアン様を自分と同格だと認めたのだと思います。そうする事で、彼が泣きついたとしてもエリザベス様も其方を嗜める事が出来る」

「「なるほど」」

 本当に頭が上がらない。イアンの洞察力、考察力、視野の広さ、応用力はとてもじゃないが真似出来ない。経験がものを言う世界だろう。
 しかしながら、エリザベスも中々だ。勿論手を焼いていたことは間違いないのだろうが、一方的に此方に迷惑をかける事で昨日の取り引きについては完全にチャラになった。奴を穴場に同席させていた時点でそこまでも計算していたのだろう。全く、敵にしたくはない人だ。

 馬車に乗り込むイアンに続いたキールはそんなことを考えていた。
 キールもそれなりに其方の分野は得意だと自負しているし、大人を相手に危険を冒しながら経験も積んできた。ただ、今回これだけのものを見せつけられてリーンの側にいる為には今のままでは足りないのだと言うことを実感した。

 リーンのレスターとイアンに対しての態度はやはり、他から見ていても明らかに違う。本人は無意識で気付いていないのだろうが、視線や表情、言葉遣いなど本当に些細なものなのだが、本人達からしたら明らかなのだ。
 だからと言って、優秀だから特別扱いされている、とかそう言うつもりもない。あの二人をとことん羨んでも、リーンのそばにいて釣り合うのはやはりこの二人なのだとも分かる。
 
「まだまだ足りないようですね」

「…ん?」

「感服しました」

「んーあー、まぁ…こう言うのは経験値だからな」

 何も言わずとも理解してしまうイアンに完全な負けを認めて乾いた笑みを浮かべる。

「羨ましいです」

「何だ、今日はやけに素直だな」

「…完敗したんです。これ以上足掻いたって見苦しいだけじゃないですか」

「完敗か…」

 何処か遠い目をするイアンに首を傾げながらもリーンが好きなのはこう言う人だ、とキールはその場所を目指す覚悟を決めた。









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