神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

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第四章

それぞれの守りたいもの

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 これまでもディアブロのやる事に散々横槍を入れて来たがエルムでの接触以降、姿どころかその影さえ現さなかった彼がここに来て急に動き出したようだ。
 流石に今回のデロス島での我々の活動は彼にとって困る事だったのだろう。

 ディアブロの基本的な目的はこの世界が成長・発展しないこと。新しい知識が広まったり、技術力が高くなったりする事を阻止している。

 ドワーフ族が作った品物がどれだけ世界を動かすのか正直言って分からない。確かに武器や防具などの鍛治の才能は高いが、それは別に特段ドワーフに限ったことでは無いように思う。現にガンロはデロス島へは戻らず、彼のその技術をリーン達はかなり利用していた。
 ただ、ディアブロがこれだけ警戒しているのだからそれ以外にも何か彼らを島の外に出したくない理由があるのだろう。
 多分そのヒントとなるのが、この世界が誕生する前の世界。何故ならリーンが神示を通して知った知識はこの世界のもので、ディアブロが作り直した以前のことは何も知らない。
 “ベンジャミンの大冒険”の内容は何処までが正しくて、何処からが作り話なのだろうか。

「リーン様、準備が整いました」

「…はい、今行きます」

 まだまだ考えなくてはならない事、やらなくてはならない事が山積みだ。ディアブロからの攻撃を覚悟していたとしてもかなり頭の痛い問題だ。

「「「「「…」」」」」」

 部屋に集められた使用人達はリーンが話し出すのを固唾を飲んで待つ。基本的に表情を変えないリーンの少し焦ったような戸惑っているような…そんな表情に困惑の色を隠せていない。

「緊急事態が起こりました」

「き、緊急事態…」

「何があったのでしょう…?」

 この中で一番戸惑っているのはラテだろう。【予知】をする彼女に分からない事がある事自体が変なこと。
 ラテは困惑の色を隠せていない。

「先程、この屋敷内に侵入者の痕跡を発見。我々の計画を邪魔されたようです」

「レスター様、計画を邪魔されたと言うのは具体的に何を…?」

「侵入者の特徴は…?」

「何も分かってないのです」

「…分からない…?」

 察しの良い数人はリーンの表情を見て、顔色をより一層悪くさせる。リーンにも何も分からないと言う事の意味を理解しているのだろう。

「恐らくこれからも妨害は続くでしょう。ただ、対策のしようがありません」

「みんなも知っている通り、リブリーの作った台本の通りにここまで行動を進めて来ましたがその台本を先程書き換えられていました」

「ハルト様。これはディアブロの仕業だと思って良いのですね」

「はい」

 キールの言葉に周りもその辺の事は大方予想はしていただろうが、リーンがそれをしっかりと肯定した事で確信に変わり、言葉を無くす。

「…ただ対策がないとは言え、デロス島での活動を止めるわけにも行きませんし、水晶鏡の普及の方もこのままのペースで進めるつもりです。だから、もし…」

 もし…。そこまで言ってリーンは言葉を飲み込む。
 この先は本当に命の保障ができない。勿論みんなを守るつもりでいるけども、力の及ばない事もあるかもしれない。

「ハルト様。ここにいる者…誰も…誰一人として。貴方様の側を離れる者はおりません」

「…」

 分かっている。私は今、ヴェルムナルドールだ。全部分かっている。分かっているからこそキチンと伝えなければならない。

「私は誰一人として失いたくありません。勿論、そこにはここにいない者達も含みます。分かりますか?」

 こういう時ほど表情が変わらない事を良かったと思う事はないだろう。

「勿論、死ぬ気は御座いません。リーン様を悲しませるような事も望まぬ事も致しません」

 レスターがその場に跪き、リーンの手を取って誓いを立てる。手の甲に落とされた小さなリップ音がリーンの耳にも届く。

「リーン、心配するな。俺もいる」

 イアンもレスターの行動に習い、リーンのもう片方の手を取って手の甲にキスをする。
 二人の行動に習い、他の使用人達も跪いて祈るように指を組む。

「…リヒト」

 最後に頭に落とされた優しいキスに私は上を向く。

「リーン、信じろ」

「…はい」

 リーンはただ小さく頷いた。



ーーーーーー






「どうだった」

「ディアブロ様のご指示の通りに実行してまいりました」

「そう…」

 少し寂しそうな表情の主人に返事をした男は怪訝な表情を向ける。主人の薄暗い部屋にも、いつ来ても散らかり放題になっている部屋にも、妙に甘ったるい香の匂いにも慣れてしまった男は部屋に散らばっている物を淡々と拾い集めながらも意識は主人に向けたまま。

「ねぇ。なんでリーンはこの世界を壊したいのかな」

「…彼女は壊しているつもりは無いのだと思います」

「お前はどう思う?」

「私はディアブロ様と…。いえ、ベンジャミン様と出会ったあの時のままなのです」

「後悔しているかい?」

「まさか」

 男は鼻で笑うように言う。

「…私は貴方と共に一度あの馬鹿らしい世界を見てしまいました。人間は良く深い生き物です。与えられて満足すれば良いものの、つけ上がり更なるものを欲する。そしてその恩を忘れ、神を忘れ、そして自らの手柄とする者すら出てくる始末。あれをどうする事など出来るわけがありません」

「…善を善たらしめるのはいつだって勝った者の権利なのだよ」

「…ディアブロ様」

 薄い天幕の向こうからシルエットだけを写している男はもうすっかり冷めきってしまっている紅茶のカップをくるくると優雅に回して口元へ運ぶ。

「感情というものはこの紅茶のようにいずれ冷めてしまう。私のこの世界を思う気持ちも今や風化してしまっているのだと思う」

「…どうするおつもりなのですか」

「お前も分かっているだろう。私にはもう殆ど力らしい力は残っていない」

「…しかし、向こうもまだ完全体ではありません」

「それも時間の問題だ。私にお前がいたように彼女にも彼らがいるからな」

「…」

 困ったようにフッと小さく笑った主人に男は溢れてきそうな感情を抑えるために悔しそうな表情でこぶしを強く握る。

「そんな顔をするな。私はお前が居てくれたお陰でここまで来れたのだから」

「…私は諦めません」

「勿論、私も諦める気はないよ。そうだね…次は少し後悔してもらおうかな」

「私に何でもお申し付け下さいませ」

 天幕が降りたベッドからとても男のものとは思えないほどに痩せ細った足を下ろしてひょっこりとこれから楽しいことが起こると言わんばかりのにこやかな表情を覗かせる。
 だが、とても穏やかで優しげなその表情が偽物であると色を移すことがなくなってしまった瞳が言っている。

「じゃあ、そうだなぁ……そろそろヴェールズのあの船…なんて言ったかな…蒸気船?だっけあれが完成する予定だったよね」

「はい」

「面白いよね、あれ。蒸気で動くんだって」

「…」

「壊しちゃおうか」

「お任せくださいませ」

「頼んだよ。シュトラード」

「…安静にされて下さい」

「ハハ、お前は本当に心配症だ」

 主人の背中に手を添えてゆっくりとベッドに優しく寝かせる。ベッドからずれ落ちた布団を肩までしっかりと被せ、男は静かにベッドの脇に腰を下ろす。

「…私は諦めませんよ」

 彼の心からの言葉は男を優しく微笑ませた。









 
 


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