【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
933 / 1,122
106章

元魔王様と冒険者の国 1

しおりを挟む
 翌日、朝早くから部屋の扉をノックする音で目が覚めるジル。

「ジルー、起きてるー?」

「ん?」

「ふわあ~。」

 ノックの後にルルネットの元気な声が聞こえてくる。
ジルとホッコは大きな欠伸をしながら目を開く。

「入るわよー?」

 部屋の中に入ってくるルルネット。
ジル達とは違って着替えも済んでおり、出掛ける準備は万端と言った様子だ。

「起きてるじゃない!二人共おはよう!」

「…朝からテンションが高いな。」

「ルルネット、煩いの。」

 起きたばかりの二人にルルネットが挨拶をする。
思わず耳を塞ぎたくなるくらい元気だ。

「もう!ダラダラしてないでさっさと起きなさい!サリーが美味しい朝食を用意してくれてるんだから!私はもう食べちゃったわよ!」

 まるで母親の様な事を言いながら起こしてくるルルネット。
しかしまだ眠いと身体が訴えてくる。

「そんなに遅く起きたか?」

「いや、普段よりも大分早い方じゃぞ。」

 そう言いながら部屋の扉の前で眠そうに瞼を擦っているナキナ。
どうやらルルネットの被害に遭ったのはジル達だけでは無いらしい。

「ナキナもいつまでも眠そうな顔してないで顔を洗ってシャキッとしてきなさい!」

「眠そうな顔をしているのは早く起こされたからなんじゃが。」

 ぶつぶつと文句を言いながらも言われた通りに顔を洗いに向かった。

「ほらほらジルも早く起きて起きて!」

 そう言いながら掛け布団を畳んでジル達を起こそうとしてくる。

「…分かったぞ、早くアバント公国に行きたいからと言う理由で我らを早く起こしたな?」

「な、何の事かしら?」

 わざとらしい口笛を吹きながらそっぽを向く。
どうやらジルの予想は当たったらしい。

「まだ眠いの。」

「我もまだ眠り足りないところなんだが?」

 ホッコと共に大きな欠伸をしながらジト目で訴えるジル。
大分早く起こされた様だ。

「美味しい朝食を食べれば眠気も吹き飛ぶんじゃないかしら?」

「やれやれ、我を食べ物で釣ろうとするとはな。」

「食べないの?」

「…仕方無い、釣られてやる。」

「よしっ!」

 ルルネットの美味しい朝食で早起きしてもらおう作戦は成功した。
少し不満そうにしながらもジルが起き上がってくれる。

「ホッコはまだ寝たいの。」

「構わないぞ、ギリギリまで寝ているといい。」

「それなら変化を解いちゃえば?私が運んであげるわよ。」

「そうするの。」

 ホッコが変化のスキルを解いて魔物の姿に戻る。
そしてルルネットの肩に飛び乗ると、自分から首にくるりと巻かれる様にして眠った。

「器用に眠るな。」

「ふわふわで気持ちいいわね。これからもたまにこうしてもらおうかしら。」

 首に巻いているホッコを撫でながら嬉しそうにルルネットが呟く。
その後宿屋の食堂へと向かうとサリーが朝食の準備をして待っていてくれた。

「ジル様、おはようございます。」

「ああ、おはよう。」

「サリー、ジルに美味しい朝食を出してあげてね。」

「用意は出来ています。」

 朝からテーブルにとんでもない量の食事が用意されている。
何十人前あるのかと言う量だが、ジルにとってはこれくらい朝飯前だ。

「ジル様、朝からお嬢様がすみませんでした。」

 無理矢理起こしに行った事をサリーが謝罪する。

「全くだ。我の睡眠を邪魔するとは教育がなってないぞ。」

「これでも何度かお止めしたのですが、昨日からアバント公国に行けるとずっと楽しみにしていましたので。高揚した気持ちを抑えられなかった様です。」

「アバント公国!アバント公国!」

 今もアバント公国と言う言葉を嬉しそうに呟きながら揺れている。
それだけアバント公国に行けるのが嬉しいのだろう。

「やれやれ、向かう途中に寝不足で墜落したらどうしてくれる。」

「つ、墜落する可能性があるのですか!?」

 サリーが驚きながら尋ねてくる。

「寝落ちしたら魔法は解除されるだろうからな。」

 アバント公国への移動は当然ジルの魔法を使う。
その魔法も意識を失えば効果は消えてしまうので、空から真っ逆さまとなってしまう。
と言っても朝食を食べてある程度眠気も消えてきたので大丈夫だろう。

「ジル様、二度寝しましょう。墜落死なんて嫌ですから。」

 サリーが安全確保の為に二度寝を提案してくる。
まさか早起きさせてしまう事でそんな可能性を生むとは思わなかったのだろう。

「もう飯まで食べてしまったのだぞ?今から寝てもユメノとの集合時間まで大して眠れない。だからそうならない様にサリーが見張ってくれればいい。」

「わ、分かりました。」

 皆の命を預かる重要な役目を負う事になってしまったサリー。
移動中も気は抜けなそうだ。

「お代わりだ。腹一杯食べて眠気を吹き飛ばす事にする。」

「それは逆効果なのではないですか?」

「アバント公国!アバント公国!」

 ジルの寝不足を不安に思うサリーとは違い、一人アバント公国に想いを馳せているルルネットだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...