【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
36 / 1,122
4章

元魔王様と初めての依頼 11

しおりを挟む
「仮にも王の名を冠する魔物ならば、配下を見捨てず共に戦ってる姿が見たかったのだが。」

 これは前世が王の名を冠した自分に少し重ねた言葉だ。
魔王ジークルードは、その圧倒的な個人の力により、誰の力を借りずとも一人で何でも解決出来る様になってしまった魔王であった。

 神々からの使命に関係無く、仲間にも当然死んでほしくは無かった。
なので他者に頼らずとも一人で戦える力は有り難いとさえ思い、仲間の力を借りずに単独で戦う事が多かった。

 だがその力は留まる事を知らずに膨れ上がり続け、望んでいないのに仲間を遠ざける事にも繋がる。
その結果仲間達と何かを共に行うと言う経験が、魔王の長き人生に比べるとあまりにも少なくなってしまった。

 後に一人になってから戦いやそれ以外の事でも、もっと仲間達と共に様々な事を成し遂げたかったと、いなくなってから初めて後悔した。

 そうしたいと思った時には既に自分ではどうする事も出来無くなっていたのだ。
しかし目の前にいるゴブリンキングは違う。

 統率個体と呼ばれるゴブリンキングは、配下のゴブリンを統率して行動する事が可能だ。
個人の戦闘能力が突出している訳では無く、統率する事によって真価を発揮する。

 故に共にジルと戦う事だって出来たのだが、実際は自分が逃げる為の時間稼ぎとして配下達を使った。
その結果が自分以外は全滅である。
過程は大きく違うが、二人の王は同じく孤独になった者同士ではあった。

「王とは民や配下を守り導く存在。己が命を長らえさせる駒では無く、困難を乗り越える仲間として率いるべき存在。まあ、我には説教をする資格は無いか。」

 自分の場合は一人で事足りるので、仲間達に頼った事は少なかった。
そんな自分と違い気軽に頼る事の出来る王が、自分が生き残る為に仲間を見捨てる行動を取った事が、非常に残念に感じた。

「我も選択を間違え無ければ、多少は思い出が増えたのだろうな。」

 魔力が膨大となり仲間達と切り離される未来は変えようが無い。
それに至るまでが魔王にとっての人生を選択出来る期間だった。

 魔王人生は仲間達ともっと過ごしたかった後悔はあるが、神々に言われた通りに魔族を救えた喜びもあるので、まずまずの人生と自分では言えた。

「だが貴様の選択は最悪手だったな。」

「グギャアアアア!」

 死を前にやけくそで反論する様にジルに殴り掛かってくるゴブリンキング。

「勝てないと分かった時に、仲間と共に逃走する事で統率していれば、全滅とまではならなかったかもしれん。まあ、我から逃げ切れたかは分からんが…なっ!」

 そう言って哀れな選択をしたゴブリンキングの首を刎ねた。
宙を舞い床に転がった首と合った目には、何に対する事か分からないが後悔の色が浮かんでいる様にジルには見えた。

 自分の前世には後悔した部分もあった。
この人生は後悔なんてしない様に、精一杯自由に生き抜こうと新たにジルは思った。

 ゴブリンキングを倒した事により、集落にいたゴブリンは全滅となった。
集落も半分程が戦いに巻き込まれてボロボロになっている。

 しかし再び魔物が住み着く事を考えると、徹底的に破壊しておいた方がいいとエルーとゾットに言われた。
なので適当にファイアボールを放って、家を焼き崩し村を荒らしておいた。

「これで討伐完了だな。」

 激しい炎に包まれて燃えている集落を眺めながらジルが満足そうに言う。
初依頼も達成、人質の救出も成功、更に今から街に向かえば門限にも間に合いそうである。
順調に事を運べたのも実力者であるエルーとゾットのおかげであろう。

「お疲れ様です。火魔法の得意な方がいると、やはり助かりますね。」

 ゾットは村を燃やし終えたジルに向けて言う。
火魔法を使える者がいなければ、火起こししてから村に火を放ったりしなければならない。
それに火力が乏しければ燃やすのにも時間が掛かるので、ジルの火魔法は非常に助かったのだ。

「気にするな、大して苦労もしていない。」

「その様ですね、あれだけの戦いをした後なのに。私の方で出来るだけ集めておきましたのでどうぞ。」

 そう言ってゾットが差し出してきた袋には、ゴブリン系統の魔石が大量に入っていた。
村を燃やしている間に、集落の外や入り口の分を回収してくれた様である。

「すまんな、我も残りを回収してくるとしよう。」

 袋を無限倉庫に仕舞い、集落の中にあるゴブリンの魔石の回収に向かう。
村と一緒に死体も大体燃えており、魔石だけが至る所に残されていた。

 魔石は魔法に対する耐性が高い事もあり、強い魔法による衝撃や物理攻撃を加えなければ割れる事も無いので、火魔法で燃やすと取り出しやすいのである。

 そしてゾットに聞いたのだが、ゴブリンキングの王冠やゴブリンジェネラルの手斧は、ゴブリン種にしては珍しく換金出来る物らしい。
回収して持ち帰れば金になると言われたので一緒に無限倉庫の中に入れておいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...