【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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84章

元魔王様と生死の選択肢 4

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 鞘と銀月の両方を魔装して刀を鞘へと戻していく。

「納刀術・斬響!」

 銀月が鞘に完全に収まって鍔と鞘が当たるとチンッと言う心地良い音が辺りに響く。
その音には魔力が込められており、音の斬撃となってゴブイーターの体表を少し傷付ける。
女性の方は黒フードに守られたのかダメージは無い。

「な、何をしてくるかと思えば少し傷付いただけじゃない。そんな攻撃じゃゴブイーターは倒せないわよ!」

「倒す事が目的の攻撃じゃ無いからな。ブラッドニードル!」

 ジルが鮮血魔法を使用してゴブイーターの体表から流れる少量の血を操る。
流血を鋭い血の針に変えて全身を刺し貫いていく。

「ギャ…ガァ…。」

 自分の血に攻撃されるとは思っておらず、ゴブイーターは致命傷を負ってその場に倒れる。
警戒されていなかったので簡単に止めを刺す事が出来た。

「ゴブイーター!?」

「とっておきはあっさりと退場したが他にも従魔を出すか?」

 この女性がテイマーなのは分かっているのでまだまだ従魔は残っている筈だ。

「あ、当たり前でしょう!絶対に生き残ってみせるんだから!テルイゾラで従魔にした子達を全員解放よ!」

 複数の魔法陣が床に現れて従魔達が次々に召喚される。
襲い掛かってくる魔物を相手にして少しずつ数を減らしていく。

「これだけの高ランクの魔物を従魔にしているとは驚きだな。」

 テイマーとしての素質を見れば世界でもトップクラスだろう。
さすがにレギオンハートと同等とまではいかなくても、それに次ぐ実力はありそうである。

「平然と倒しているイレギュラーに私は驚きよ!誰でもいいからそのイレギュラーを殺して!」

 女性の言葉に反応して従魔達がやる気を漲らせる。
一斉に襲い掛かるがジルも本気を出す。

「アイシクルエンチャント!全員氷漬けにしてやろう。」

 得意の氷結魔法を使って魔物を次々に仕留めていく。
高ランクと言ってもジルの相手を出来る魔物はいない。

「こ、このままだと確実に殺される。」

 次々に倒されていく従魔達を見て女性が怯える。

「「「ぐわあああ!?」」」

「ひっ!?な、何なのよ本当に!?イレギュラーだけでも詰みかけてるのにあの魔族は何なのよ!?」

 正面のジルだけでは無く後方のフォルトゥナも見ながら女性が愚痴を溢す。
黒幕の用意した者達を次々に倒して無双する姿に更なる絶望を感じる。

「い、一か八か走るしかないわよね。このままここにいてもイレギュラーに殺されるし。…スー…ハー…よし!」

 女性は意を決して単身逃亡を図る。
ジルとフォルトゥナが戦闘している隙に走って離脱する。

「従魔を残して逃亡か。」

「ガアアアア!」

 女性の姿を自分の身体で隠す様にジルの前に魔物が立ちはだかる。

「主人が逃げる為の盾として使われていると言うのに、それでも我に捨て身で立ち向かうか。大した忠誠心だ。」

 ジルが銀月を一閃させて魔物を斬り伏せる。
これで魔物は全て倒し終えた。

「アイスウォール!」

 ジルが女性の進行方向に巨大な氷壁を作って逃亡を妨害する。

「なっ!?」

「逃しはしない。」

「うっ…。皆御免、私の為に犠牲になってもらったのにここまでかも。」

 ゆっくりと歩いて近付いてくるジルに女性が怯えている。
まるで自分に死を告げようとする死神に見える。

「邪神教には逃げられてばかりだからな。一先ず足を動かなくさせておくか。」

「ひっ!?」

 ジルが振るおうとしている銀月を見て小さな悲鳴が漏れる。

「簡易防衛型強化法陣起動!抜刀!」

 銀月が女性の足に触れる直前で間に滑り込んできたフォルトゥナの曲剣がそれを弾く。

「え?」

「え、えーっと、これはですね。」

 先程まで恐れていた魔族に突然救われて女性が困惑している。
そしてフォルトゥナは今の行動の言い訳を考えている様子だ。

「どうやらまだ呪詛魔法で操られている様だな。我が斬り刻んで目を覚させてやろう。」

「いやいやいや!?ジル様が万能薬をくれたじゃないですか!?正気ですよ正気!?」

 ジルの言葉に焦りつつ両手をぶんぶんと振って否定するフォルトゥナ。
既に正気なのでそんな事をされても目は覚めないのに、このままでは本当に目が覚めなくされてしまう。

「ならば何故邪魔をする?」

「そ、それは…。」

 少し気まずそうに視線を逸らす。

「まさかとは思うが。」

「し、仕方無いじゃないですか!こんな可愛いらしい女性をジル様が斬り殺そうとしていたんですから!」

「え?可愛らしい?私が?」

 フォルトゥナの言葉に女性が更に戸惑いを見せる。
実は意を決して逃亡する際に走った事でフードがはだけていたのだ。
そして女性のとても美しい姿を見てしまい、フォルトゥナは迷わず助けに入ったと言う訳だ。

「人聞きの悪い事を言うな。別に殺そうとはしていない。足を凍らせて逃走手段を奪おうとしただけだ。」

 ジルは氷結魔法で銀月を強化している。
それで触れれば足を一時的に凍らせる事が出来るので、軽く銀月を触れさせるつもりしかなかった。

「え?そうだったんですか?」

「本人に聞いてみたらどうだ?」

「わ、私?」

「他に誰がいる。」

 自分を指差して首を傾げている女性。
話しを振られるとは思っていなかった様だ。

「…私もイレギュラーに斬殺されるかと思ったけど。悪魔みたいな怖い顔で剣を振るおうとしてたし。」

「ほう、ならば望み通りにしてやろう。」

 ジルは女性の言葉を受けてニヤリと笑みを浮かべて剣を構える。
当然殺すつもりは無く冗談である。

「いやあああ!?」

「か、簡易防衛型強化法陣起動!」

 ジルの冗談は二人には冗談だと受け取ってもらえなかった。
邪神教の女性が恐怖に染まった表情で悲鳴を上げて、フォルトゥナは慌てて陣形魔法を起動させているのだった。
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