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86章
元魔王様と龍の子 7
しおりを挟むジル達はフォルトゥナがテルイゾラで購入した奴隷の少女ルルスの下へと向かう。
「ルルス、無事でしたか?」
他の人質達と救われた喜びを分かち合っていたルルスに話し掛ける。
他の人質達は一礼して自分の大切な者達の下へと戻っていった。
「はい、私は大丈夫です。フォルトゥナ様の方こそ大丈夫でしたか?」
フォルトゥナが戦う事が好きでは無いと知っていたので心配していたのだ。
「当然無事です。僕は強い魔族ですから。」
「それはよかったです。」
お互いの無事を喜び合う。
ジル達がテルイゾラにやってきてくれたからこそ、こうして笑い合えている。
「ルルス、この後の事に付いて話しておきたい事があります。」
「この後ですか?」
「はい、僕はここにいるジル様の住むジャミール王国に向かう予定です。昔のよしみで一緒に暮らさないかと誘ってもらえたので。」
「そうでしたか。」
ルルスは安心した様な表情で呟く。
デザイアゴーストの呪詛魔法で操られて一度敵対してしまったので、その後の事が気になっていたのだ。
関係が悪化する様な事が無くて良かった。
「なのでルルスも一緒にどうですか?」
「私もですか?」
自分も誘われるとは思っておらずルルスが驚いている。
これは事前にジルに許可を得ている。
フォルトゥナの奴隷なのだから一緒に浮島で暮らすのも構わない。
「僕を好きでいてくれる女性は共に連れて行きますよ!奴隷と言った身分は関係ありません!必ず幸せにしてみせます!」
「あっ…。」
フォルトゥナの言葉を聞いて少し気まずそうな声を漏らす。
それを見てジルは察してしまった。
「ん?どうかしましたか?」
「あの、フォルトゥナ様の事は好きですよ?奴隷である私の突然の頼みを聞いて購入して下さいましたから。でも申し訳無いのですが私はフォルトゥナ様と婚約する事は出来ません。本当にすみません。」
「ん?んんん?」
フォルトゥナの頭の中が?でいっぱいになる。
自分に好意を寄せていたから売り込みを掛けてきたと思っていたが、ルルスからのお断りの言葉で勘違いだったと知る。
「何か話しが違う様だな。」
「街中で突然奴隷の少女に買ってほしいと懇願されたと言っていましたよね?あれは一目惚れに間違い無いとも。」
「ルルスちゃん、そこのところはどうなの?」
固まっているフォルトゥナの代わりに話しを聞く事にする。
本人から聞くのが一番分かりやすい。
「え、えーっと。」
ルルスは固まっているフォルトゥナを申し訳無さそうに見ながら出会った時の事を説明してくれた。
どうやらルルスは別の国の貴族令嬢らしい。
デスザードにはテルイゾラのオークションに参加する為に婚約者とやってきたと言う。
しかし不運な事にテルイゾラへ向かう途中で砂賊に襲われ、護衛は殺されて婚約者共々違法奴隷にされてしまった。
そして近々奴隷専門のオークションが開かれるらしく、見目麗しい貴族令嬢のルルスは高値で売れるからと先に出品されそうになったらしい。
このままオークションに出品されれば誰に買われるか分からない。
お互い奴隷のまま婚約者とも離れ離れになってしまうのは嫌だと、ルルスは無害そうな者を見つけて購入してもらう事にした。
そこで選ばれたのがフォルトゥナだった。
一先ず自分を買ってもらって、後に婚約者も一緒に購入してもらい奴隷解放もする予定だった。
最終的に実家から充分なお礼をするつもりでいたのだが、突然人質にされてしまって伝えるのが遅くなってしまった。
「成る程、それは大変だったな。」
「は、はい。フォルトゥナ様、伝えるのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。」
悪気は無かったがフォルトゥナを傷付けてしまった事をルルスは気にしている。
「人質として直ぐに捕まってしまったのだろう?仕方が無い事だ。」
「フォルトゥナの勘違いの一人暴走だった様ですね。」
「やれやれ、いつもの事ね。そんな事だとは思ったわ。」
女性の奴隷に自分を買ってほしいと言われて勘違いしてしまったのが今回の内容だ。
フォルトゥナにとっては気の毒な事ではあるが、過去にも似た様な事が何十件もあったので、三人はまたかと言った様子だ。
「あ、あの、フォルトゥナ様?」
「今はそっとしておいてやれ。フォルトゥナにも立ち直る時間が必要だ。」
フォルトゥナにとっての春が遠ざかってしまった。
中々ショックは大きいだろう。
「それよりもルルスさんは先に奴隷解放された方が宜しいのでは?貴族の令嬢がいつまでも違法奴隷でいるものではありません。」
「そうですね。また後から誠心誠意謝らせてもらいます。」
「ジル様、奴隷商人が到着しました。」
丁度到着した複数の奴隷商人を連れてミネルヴァがやってくる。
これで違法奴隷達は奴隷解放する事が出来る。
「丁度良かったな。ルルスも奴隷解放してもらうといい。」
「はい、改めて皆さんにも感謝しています。ありがとうございました。」
ルルスが丁寧にお辞儀をしてから奴隷解放の為に奴隷商人の下へ向かっていった。
「おや?貴方は確か砂漠船でお会いした冒険者殿では?」
到着した奴隷商人の一人がジル達に気付く。
テルイゾラへ向かう砂漠船に乗っていた奴隷商人である。
「あの時の奴隷商人か。信用出来る者と言う話しだったが、これに関しては他言無用で頼むぞ。」
自分達の事を話し広められるのも面倒だ。
早く終わらせてセダンに帰りたいのでこれ以上の面倒事は遠慮したい。
「大まかにですが説明は受けています。まさか自分の暮らすテルイゾラがそんな事になっているとは思いもしませんでした。」
テルイゾラで暮らしている者達でも分からなかったらしい。
デザイアゴーストは上手くやっていた様だ。
「住民を代表してお礼申し上げます。」
「気にするな。だがそれは内密にな。それと奴隷解放も頼んだぞ。」
「お任せ下さい。」
人質を取られて違法奴隷にされていた者達は、奴隷商人達の手によって次々に奴隷から解放されていき、ジル達は口々に感謝されるのだった。
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