【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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86章

元魔王様と龍の子 8

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 デザイアゴーストに捕らわれていた人質を全て救出した事で、人質を盾に治安維持させられていた者達も解放された。
次の日には次々にテルイゾラから脱出して自分の国を目指して帰っていった。

 大半は黒幕であるデザイアゴーストをジル達が倒した事に納得してくれたが、中には長い間拘束された事を根に持ってテルイゾラに復讐しようとする者もいた。
しかしテルイゾラの他の者達も脅されたり呪われたりと同じ状態だった事を説明してなんとか納得してもらう事が出来た。

「婚約者が見つかって良かったな。」

「はい、本当に何とお礼を言ったらいいか。」

 ルルスは隣りにいる婚約者の男性を見て嬉しそうに微笑む。
砂漠船で出会った奴隷商人に違法奴隷とされたルルスの婚約者を探してもらったところ、なんと今日の奴隷オークションに出品されている事が分かって急遽参加した。

 貴族の子供と言う事で競争相手が多いかと思ったが、やはり女性の奴隷の方が人気が高く比較的楽に落札する事が出来た。
既にルルス同様奴隷解放済みである。

「代金はお礼も含めて必ずお支払いしますので。」

「それは気にしなくていいぞ。」

 安く落札出来たので特に痛い出費と言う訳でも無い。
テルイゾラに来てから稼いだ金はまだまだ沢山あったのだ。

「ルルス、婚約者とお幸せに。」

 一日経ってなんとか立ち直ったフォルトゥナが声を掛ける。
可愛い元奴隷と今日でお別れと言う事で残念そうではあるが、フォルトゥナもルルスのこれからの幸せを願っている。

「フォルトゥナ様、本当にこの度はご迷惑や勘違いさせる事をしてしまってすみませんでした。」

「いいんです。僕が早とちりしただけなので。」

 深々と頭を下げて謝罪してくるルルスに顔を上げる様に言う。
申し訳無く思っているのだろう、ルルスには既に何度も謝られていた。

「今回フォルトゥナ様に出会わなければ私達の人生は終わっていました。離れ離れとなり一生奴隷の身で過ごす事になった筈です。そんな状況から救って下さったのはフォルトゥナ様です。世界には心優しい魔族もいるのだと知れて良かったです。」

 人族と魔族は敵対関係にある。
この考えは長い戦いの歴史から両種族に深く根付いた考えなのでそう簡単に変える事は出来無い。

 それでも全ての者がそう言う考えでは無いと言うのもまた事実であり、ルルスはフォルトゥナとの出会いでそれを知る事が出来た。

「僕みたいな魔族は珍しいので油断はしない方がいいですよ。」

「ふふっ、そうかもしれませんね。人族にこれ程優しくして下さる魔族がいるなんて聞いた事もありませんから。」

 ルルスがにっこりと微笑む。
それはルルスが女性だったからと言うのも少なからずあるだろう。
フォルトゥナは種族関係無く女性には優しいのだ。

「フォルトゥナ様、私は婚約者がいるので貴方の期待には応えられませんでした。ですが必ず貴方の優しさと強さに惹かれる女性はいると思います。貴方の明るい未来を私は祈っております。」

 ルルスがフォルトゥナの手を取って真剣な表情で言う。
それ程長い付き合いでは無くてもフォルトゥナの優しさは充分に理解出来たのだろう。

「はい、僕もルルス達の幸せを願ってますよ。」

「このご恩は一生忘れません。皆さんもありがとうございました。」

 ルルスは婚約者と共に深々と一礼してから迎えの者達の下へと戻っていった。
どちらも貴族と言う事もあり大勢の使用人や騎士が心配して駆け付けてくれている。

 そしてジル達に救われた事をルルスが説明すると、お礼はいらないと言っているのに、どうしても受け取ってほしいとジル達の代わりにミネルヴァに押し付けられていた。

「はぁ~。」

「フォルトゥナ、そう落ち込むな。」

「直ぐに立ち直るのは難しいですよ。ルルスの様な美少女が僕の恋人になってくれるって思ってジャミール王国での今後を楽しみにしていたんですから。」

 大きく溜め息を吐いたフォルトゥナが本音を漏らす。
ルルスの前では呑み込んでいた言葉もジルの前では素直に口に出来る。

「まだまだお前の魔族生はこれからだろう?ルルスも言っていたがお前の優しさと強さに惹かれる女性はいる筈だ。」

「そうだといいんですけどね。」

「そんなに自分に自信が無いの?」

 レーテルが不思議そうに尋ねる。

「僕は他のインキュバス達と違ってこれまで女性とお付き合い出来た事が一度も無いですから。そんな状態で自信なんて持てませんよ。」

「でも私はフォルトゥナの事を結構格好良いって思ってるわよ?」

「え?」

 突然のレーテルの言葉にフォルトゥナは耳を疑う。
そんな直球で褒められるとは思っていなかった。

「邪神教で敵だった私をジルの攻撃から庇ってくれたり、デザイアゴーストから守ってくれたりしたでしょう?女好きな性格ってのは聞いてるけど、それだけでそんな危険な事が出来る人は中々いないと思うわ。とても強くて格好良かったじゃない。」

「れ、レーテルさーん!」

 レーテルの様な美人に褒められてフォルトゥナは一気に元気になり、両手を広げて抱き付こうとする。

「はいはい、褒めはしたけど抱き着こうとするの禁止。」

「そんなー!?」

 軽く避けられて手で制されてしまう。
この気持ちをどこにぶつければいいのかと、フォルトゥナが手を広げた状態で固まっている。

「フォルトゥナも知ってる通り、私にはやる事があるのよ。先ずはそれが最優先なの。まあ、それが終わったらデートくらい幾らでも付き合ってあげるわ。」

「ほ、本当ですか!?」

 まさかの提案に目を輝かせる。
デート経験すらも殆ど無いフォルトゥナにとっては明るい未来への大きな一歩と言える。

「ええ、でも私って一途な人が好きなのよね。インキュバスの普通は分からないけど、ハーレムとかは嫌だわ。」

「ぜ、善処します。」

 レーテルのデート宣言に心を躍らせるフォルトゥナだったが、女性好きな自分の性格をどこまで抑えられるか分からず、なるべく努力する事を心に誓った。
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