【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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104章

元魔王様と王子の忙しい休日 9

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 オークの集落はジルが単独で攻め落とす事にして、エトワールとソートには逃げ道となる洞窟のところで待機してもらう事になった。
積極的に援護しようかと提案されたが、あまり攻撃し過ぎて目を付けられても守れるか分からないので、倒し損ねたオークが洞窟付近に逃げたらお願いする事にした。

「一応安全地帯も作っておく。危なそうなら逃げ込んでくれ。」

 そう言ってジルが断絶結界を洞窟の入り口に張っておく。
魔物は通れないがエトワールやソートは簡単に通れる様にしてあるので、体勢を立て直す時等に使えるだろう。

「こ、これは結界魔法ですか?」

「まさか結界魔法まで使えるとはな。魔法適性を隠したがる訳だ。」

 珍しい魔法適性を持つ者は権力者に囲われる傾向が高い。
結界魔法の適性を持っているなんて知られていれば、ジルの下へ多くの権力者が押し寄せていただろう。

「では行ってくるぞ。」

「気を付けてな。」

 二人を残してジルは洞窟から出ていく。

「これからオークの集落を襲撃しに行く人には見えませんね。まるで散歩でもしに行くかの様です。」

「我々とは感覚が違うのだろうな。」

 洞窟にいるだけでも緊張している二人と違ってジルは普段と変わらない。
圧倒的な実力があるからこその余裕だ。

「さて、先ずは捕えられている者がいるかどうかだが。」

 暴れる前に空間把握で死の谷の底全体を確認していく。
すると建物の一つに大勢の人種が集められているのを見つける。

「うーむ、かなり多いな。洞窟の食糧庫や武器庫の物資の数から街道付近で相当暴れていると思っていたが予想以上だ。」

 王都を訪れようと遠くから来た者達が街道付近で襲われていたのだろう。
王都近郊の者達が大勢被害に遭っていたのなら、もっと早く知れ渡って大掛かりな調査がされていた筈だ。

「だが一纏めにしてくれているのは有り難いな。先ずは安全を確保しておくとしよう。」

 ジルはその建物を断絶結界で包み込んだ。
近くに魔物もいなかったので完全に隔離する事が出来た。
結界があるのでこれ以上オークに触れられる事も無いだろう。

「これでどれだけ暴れても問題無いだろう。最初から一気に減らすか。」

 エトワールとソートが結界内にいるのを確認してジルが銀月を少しだけ鞘から抜いた状態にして両方を魔装する。

「納刀術・斬響!」

 銀月を鞘に戻して鍔と鞘が当たるとチンッと言う心地良い音が死の谷に響いていく。
鍔と鞘がぶつかって生じる音にジルの魔力を乗せる事で音の刃となって敵にダメージを与えられる。

 魔装している者には全くダメージを与えられない弱い攻撃力ではあるが、魔装が無ければ擦り傷くらいなら負わせる事が出来る。
死の谷に音が響いた事でオーク達は体表を浅く傷付け血を流す。

「ふむ、上位種の何体かは魔装で防いだか。中々やるではないか。」

「「「ブモオオォ!」」」

 洞窟から出てきたジルに気が付いたオーク達が雄叫びを上げる。
すると地鳴りの様な足音が鳴り響き、ジル目掛けて大量のオーク達が集まってこようとしている。

「あまり来られては面倒だ。鮮血魔法、ブラッドフラワー!」

 ジルが鮮血魔法を使用するとオーク達の体表から流れ出ていた血が操作され、近くにいる別のオークの身体を貫く。
そして貫かれたオークから流れ出た血も別のオークの身体を貫き、その連鎖が続いていき死の谷の底は阿鼻叫喚と言った様子だ。

 上から見下ろせばオーク達の血によって大輪の花が見えたかもしれない。
一瞬で大量のオーク達が血塗れになって地面に倒れると言う地獄絵図が完成する。

「我の鮮血魔法による攻撃は効くだろう。だがやはり数が多いな。これだけ倒してもまだまだ出てくるか。」

 際限が無いかの様に次々と現れるオーク達。
エトワールやソートが援軍を呼びたがるのも当然である。

「ブモオ!ブモオ!」

「統率個体のオークキングのお出ましか。本来ならこいつを片付ければ大分楽になるのだがな。」

 オークの上位種の中でもランクが高いのがこのオークキングだ。
集落があるとすれば一体いるかどうかと言う魔物であり、統率個体として優秀なバフを同種に与える事が出来る厄介な存在だ。

「「「ブモオ!ブモオ!」」」

 新たにオークキングが複数現れる。
死の谷の集落の規模は普通では無い。
故にオークキングも一体だけで無く複数体存在していた。

「王が何体もいるのは反則ではないか?まあ、全て斬り伏せればいいだけだがな。ホワイトゾーン!アイシクルエンチャント!」

 相手がバフを使うのであれば自分も氷結魔法によるバフを使えばいい。
周囲の温度が急激に下がり、空からは雪が降ってくる。
環境変化で氷結魔法の威力を上げつつ、銀月を氷結魔法で強化したのだ。

 オーク達は急な温度変化に戸惑っていたが待ってやる必要は無い。
ジルは氷結魔法により強化された銀月で統率個体も上位種も全て一撃で倒して無双していく。

「あれがジルの本気か。我々に見せていたのは本当にごく一部の力だったのだな。」

「その様ですね。正に一騎当千の実力、王国騎士団が敵わないのも当然です。」

 ジルの本来の実力を見て二人が呟く。
Sランクとは常人とは違う歴とした化け物なのだ。

「エトワール殿下、ジル殿が我々に友好的で本当に良かったですね。」

「ああ、くれぐれも口を滑らせる様な事は無い様に気を付けなければな。」

「はい、心しておきます。」

 オークに囲まれながら無双するジルを見てエトワールとソートが頷き合うのだった。
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