春宵桜夢現

桜月みやこ

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弐話

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「はっ……ん……」

 庭から姫の部屋へと駆け込む様に飛び込んで、乱暴にならないように気をつけながら褥に横たえると、雅時はそのまま圧し掛かるようにして姫の小さな唇を塞ぐ。
 余裕などなかった。
 何度も何度も貪るように唇を重ねて、小袖の襟元から手を差し入れる。
 外に出たことで冷えてしまったのか、少し冷たい肌に手を滑らせて、思ったよりも豊かな胸で指を遊ばせる。

「あ……っ!」

 ぴくんと身体を揺らした姫の頂をくるりとなぞって、はだけた襟元を更に寛げてその柔らかな肌に唇を寄せるとちゅっと吸う。
 白い肌に小さな花のように咲いたその痕を舐めてそのまま肌の上を滑らせると、姫の口からあぁ、と甘い声が零れた。

「桜姫……」

 掠れた声で、少々安直だろうかとも思いながらそう呼び掛けると、姫がとろりと雅時を見上げてくる。

「さくら……」
「桜に導かれ、桜の精のような姫と出逢いました故」

 お嫌でしたかと不安になれば、姫はいいえと首を振って、嬉しそうに微笑んだ。

「桜は大好きなので、嬉しいです……あの、貴方様は……」
「雅時、と」
「まさとき、さま……」

 うっとりしたように見上げてくる姫の顎をそっと持ち上げて、雅時は既に何度交わしたのか覚えていない口付けをまた贈る。
 啄むような口付けを繰り返してから、首筋から肩へ、そこから胸元へとゆっくりと唇を滑らせながら、小袖の肩を落として袴紐を解く。
 恥ずかしくなったのか、身を捩ろうとする姫の肩をやんわりと押さえて柔らかな胸に口付けて、つんと上向いた頂きを舌で転がす。

「あっ……ぁん……」

 恥ずかしそうにしながらも甘い声を上げる姫の、足の間へと指を滑らせる。
 まだまだ固い蕾のようなそこでゆっくりと指を動かせば、姫がいやいやと小さく首を振った。

「雅時さま……っ」
「大丈夫です。乱暴にはいたしません」

 本当はすぐにでも突き入れたいような衝動を押さえ込んで、雅時は秘裂を撫でる。
 次第にくちりと小さな水音を立てるようになったそこにくっと指先を沈めてみると、姫の身体がぴくんと跳ねた。

「痛くはありませんか?」
「は……い……」

 小さく頷いた姫にほっと息をついて、雅時はゆっくりと指を沈み込ませていく。

「あ……あぁ……っ」

 くちゅくちゅ、と立つ水音に併せて、姫の口からも甘やかな音が零れ落ち始めた。



「あっ……あ、ん……あぁ……っ」

 ゆっくりと丹念過ぎるほどに解したそこは、いつしかすっかりと濡れそぼって雅時の指を難なく飲み込んでいる。
 中で指を広げてみても、姫の声はただ甘い。
 もう充分だろうかと、雅時は既にしっかりと起ち上がっているそこを姫の秘裂に擦り付ける。

「まさ、ときさ……」
「すみません、もう……桜姫と、一つになりたい」

 良いですか、と問うてはみたものの、嫌だと言われたところで止まれる事など出来そうにない。
 強引にしては泣いてしまうだろうかと思ったその時、ふ、と姫の腕が持ち上がった。

「わたくしも……雅時様と……」

 遠慮がちに背に回された腕にあぁと溜息のような声を落として、そうしてありがとうと姫に口付けると、雅時はゆっくりと腰を進めた。



「あっ……! あぁっ、あっ……あんっ」

 身体がぶつかる音と、溢れる蜜がかき混ぜられる水音、鈴を転がしたような声が室内に響く。
 最初こそ痛みを訴えていた姫も、何度も擦られるうちただただ甘い音を奏でるようになっていた。

「辛くは、ありませんか」

 雅時が動きを止めて額にかかる前髪を払ってやると、姫は息を乱しながらもはい、と微笑んだ。

「しあわせ、です……」

 握っていた手をきゅっと握り返されて、雅時は胸に湧き上がる愛しい気持ちを隠すこともせず、その細い身体を掻き抱く。

「姫……桜姫……っ」
「あぁっ!」

 止まってた抽挿を急に再開されて、姫の背がびくりと反る。

「あっ……! あんっ、あっ、はぁ……んっ、んぅっ、あ……あぁっ、そこ……っ」
「ここが、お好きですか」
「ひぅっ!」

 ぐりっと抉るように突き上げられて、姫の身体が跳ね上がる。

「まさときさ……あぁっ……い……きもちい……です……っ」
「もっと、もっと悦くなって下さい、桜姫。私で、もっと──!」
「あぁ……っ!」

 縋るように抱きついてくる姫を思い切り抱き締め返して、雅時はまた大きく腰を引いた。



「あ──……っ!」

 姫の絶頂に誘われるように、雅時も自身の熱を注ぎ込む。
 どくどく、と勢いよく姫の中を満たして、そうして雅時が全てを出し終えたところで姫の身体からくたりと力が抜けた。
 ひくり、と絶頂の余韻に小さく跳ねる柔らかな身体を緩く抱きしめて、その額に口付ける。

「桜姫?」

 そっと呼びかけると、ん、と小さな応えはあったものの、姫は目を閉じたままぐったりとしている。
 乱暴にはすまいと、優しく抱こうと思っていたはずなのに、途中から無我夢中になってしまっていた事に雅時は項垂れる。

「申し訳ありません、ご無理を……」
「──……いいえ」

 小さく返ってきた声に、雅時はほっと息を落とす。

「うれしい、です。とても幸せで……夢のよう」
「……桜姫?」

 少し震えている声に、雅時は腕を解くと姫の顔を覗き込む。と、姫の瞳からはらはらと涙が零れ落ちていた。

「姫?」

 やはり辛かったのだろうかと、すみませんと慌てて涙を拭う手に、そっと小さな手が添えられる。

「いいえ、本当に嬉しくて……雅時様、ありがとうございます」
「桜姫……」

 嬉しい、と言って微笑んだ姫の、なのにどこか哀しみの色を湛えている瞳に、雅時はえも知れぬ不安に襲われる。

「明日も、参ります。明後日も。ですから、桜姫……」

 どうか私の妻に、と続けようとした雅時に、姫はいいえと首を振る。

「これ以上は、いけません。これ以上を、私は望めないのです」
「な……」

 何故、と問いかけようとした雅時の頬を姫の手が包み込んで、そしてそっと口付けられる。

「……桜姫」
「ありがとうございます、雅時様。優しいお方。一緒に桜を見て下さって、桜の下にもお連れ下さって……こんなに、愛して、下さって。本当に、幸せな一時ひとときでした。叶うことならばもう少し、と願ってしまう程に」

 ぽろぽろと涙を零しながら、それでも幸せそうに微笑んだ姫に雅時はぐっと唇を噛む。

 この姫は、ここで雅時との関係を終わらせるつもりなのだろう。
 両親を亡くして何もない、と言っていた。その事を気にしているのだろうか。
 それならば、そんな事は気にしなくても良いのだと思えるようになるまで通い続けてやろうと心に決めて、雅時は分かりましたと姫の頬を撫でる。

「朝まで共に居たいところですが……今宵は帰りましょう。けれど、明日も必ず参ります」

 雅時のその言葉に、姫は目を瞠って、そしてまた哀しそうに微笑んだ。

「今宵の事は、どうか全て夢とお思い下さい。桜と、望月が見せた夢──幻にございます」

 雅時は答える代わりに姫の頬を撫でてそっと口付ける。
 ゆっくりと唇を離すと、姫は蕩けるような幸せそうな微笑みを返した。


 まだ身体も辛かろうと、見送りは良いと言った雅時に、けれど姫は小袖を着直すと簀子まで見送りに出た。
 そうしてありがとうございましたと深く頭を下げた姫に暫しの別れを告げて、雅時は屋敷を後にした。

 屋敷の門をくぐる時、また強い風が吹いて桜が舞い上がった。
 中天に輝く望月の光を受けて、それはひどく美しく、どこか物悲しい光景だった。
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