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第二部
19. ベールとフィンガーレース
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その日の晩、セヴィはクードにドレスのデザインが決まった事を報告した。
おずおずと結局フルオーダーになってしまった事を伝えると、クードはさも当然とばかりに頷いた。
「既製品ではセヴィの可愛らしさを引き立て切れないだろうからな。そうなると思っていた。どんなドレスなのか楽しみだ」
うんうんと頷いていたクードは、不思議そうな顔で見上げられている事に気付いてどうした?とセヴィの頭を撫でる。
「いえ、あの……クードさまがドレスを楽しみにしてるって、何だか意外と言いますか……」
普段の服も可愛いとか似合っているとか言ってくれてはいるけれど、デザインについて何か言われた事はないように思ってそう言うと、クードはあぁとセヴィの頭を撫でていた手を頬に移動させる。
「披露目で纏うドレスだからな──披露目は、この愛らしい兎が俺の番だと、知らしめる為のものだ」
頬を撫でていた手がするりと首の後ろに回って、引き寄せられたかと思った時には唇を重ねられていた。
「愛らしい兎が、俺の愛しい番が、俺との披露目の為に選んだただ一つのドレスだ。気にならないわけが、ないだろう?」
鼻先を合わせたまま囁くように言われて、セヴィは眉と垂れ耳をぺしょりと下げる。
「な、何だか……不安になって来ました……」
「何故だ?」
「クードさまのご期待に、添えているかしらって……」
不安そうに瞳を揺らしたセヴィに、クードはふっと口端を上げる。
「無用な心配だな。セヴィが気に入って納得したものを、俺が気に入らないわけがない」
「そ……そうでしょうか……?」
「心配するな。何を着てもセヴィは愛らしい──まぁ一番愛らしいのは、何も纏わず俺の下で啼いている時だが」
「……っ!!」
セヴィが頬を染めたのと同時にぽすんと寝台に転がされて、あっという間に”一番愛らしい姿”にされてしまったセヴィは、この日も逞しい腕の中でとろとろに溶かされて、甘い啼き声でクードの鼓膜を震わせた──
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
ドレスが決まってしまえば、その後は特にセヴィがやらなければいけない事はなかった。
合同で行う為のブライド側との擦り合わせはクードとブライドの間でいつの間にかすっかりと終わっていて、セヴィは家族以外に呼びたい友人はいるか?と確認されただけだった。
カーニナは「私は今更だから村の子たちは良いわ」とからりと笑って今仲の良い友人を二人呼ぶ、と言うから、セヴィは特に仲の良かった幼馴染を三人だけ呼ぶ事にした。
御披露目は、冬が来る前にと少し急ぎで行われる事になった。
セヴィのドレスがどんなに急いでも一月はかかるという事で、一月半後、少し肌寒くなってきているであろう頃に、クードの屋敷の庭で行われる事に決まった。
あとはドレスが出来上がるのを待つばかりで、本当に私は他に何もする事はないのかしらとセヴィが不安を覚え始めた頃。
ドレスのデザインが決まってから少し経って、ドレスに合うアクセサリーなどの小物類を決めた時に、セヴィはカーニナからお祝いにとベールを貰った。
それは御披露目の当日、”披露目”のその時まで女性の顔を覆う為のベールだった。
「本当はセヴィの為に作ってあげられたら一番なんだけど」と申し訳なさそうに言ったカーニナに、セヴィはぶんぶんと首を振る。
カーニナは家族の中でも一番──それどころか村の女性の中でだってきっと一番、繊細なレース編みを得意としていた。
話を聞けば、カーニナは自分が作ったことは伏せて時折ブランシュールに作品を出しているらしい。
このベールもそんな作品の一つで、五月程をかけてつい最近完成したばかりなのだという。
「何でだか、これを編んでいる間よく家族の事を思い出したの──きっと神様の思し召しだったのね」
そんな風に微笑んだカーニナに、セヴィも何か贈りたいと考えた。
何が良いかしら。
出来ればベールと同じように、御披露目の時に身に付けられる物を──
考えて考えて、セヴィはカーニナにフィンガーレースを贈ることにした。
これなら一月あれば間に合うと、セヴィは自身のドレスが出来上がるまでの間大好きな姉の為に毎日必死でレースを編んだ。
──と言っても、時々カーニナに呼ばれてブライド邸へ遊びに行って昔話やお互いの旦那様自慢に花を咲かせたり子供たちと遊んだりと、御披露目やドレスの事を忘れて過ごす日もあったりしたのだけれど。
それが良い息抜きになったのか、フィンガーレースは思いの外順調に編めて、そうしてセヴィがフィンガーレースを編み終えた、デザインが決まってから一月と少し──御披露目まであと十日程となったその日、
ブランシュールからドレスが完成したとの連絡があった。
おずおずと結局フルオーダーになってしまった事を伝えると、クードはさも当然とばかりに頷いた。
「既製品ではセヴィの可愛らしさを引き立て切れないだろうからな。そうなると思っていた。どんなドレスなのか楽しみだ」
うんうんと頷いていたクードは、不思議そうな顔で見上げられている事に気付いてどうした?とセヴィの頭を撫でる。
「いえ、あの……クードさまがドレスを楽しみにしてるって、何だか意外と言いますか……」
普段の服も可愛いとか似合っているとか言ってくれてはいるけれど、デザインについて何か言われた事はないように思ってそう言うと、クードはあぁとセヴィの頭を撫でていた手を頬に移動させる。
「披露目で纏うドレスだからな──披露目は、この愛らしい兎が俺の番だと、知らしめる為のものだ」
頬を撫でていた手がするりと首の後ろに回って、引き寄せられたかと思った時には唇を重ねられていた。
「愛らしい兎が、俺の愛しい番が、俺との披露目の為に選んだただ一つのドレスだ。気にならないわけが、ないだろう?」
鼻先を合わせたまま囁くように言われて、セヴィは眉と垂れ耳をぺしょりと下げる。
「な、何だか……不安になって来ました……」
「何故だ?」
「クードさまのご期待に、添えているかしらって……」
不安そうに瞳を揺らしたセヴィに、クードはふっと口端を上げる。
「無用な心配だな。セヴィが気に入って納得したものを、俺が気に入らないわけがない」
「そ……そうでしょうか……?」
「心配するな。何を着てもセヴィは愛らしい──まぁ一番愛らしいのは、何も纏わず俺の下で啼いている時だが」
「……っ!!」
セヴィが頬を染めたのと同時にぽすんと寝台に転がされて、あっという間に”一番愛らしい姿”にされてしまったセヴィは、この日も逞しい腕の中でとろとろに溶かされて、甘い啼き声でクードの鼓膜を震わせた──
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
ドレスが決まってしまえば、その後は特にセヴィがやらなければいけない事はなかった。
合同で行う為のブライド側との擦り合わせはクードとブライドの間でいつの間にかすっかりと終わっていて、セヴィは家族以外に呼びたい友人はいるか?と確認されただけだった。
カーニナは「私は今更だから村の子たちは良いわ」とからりと笑って今仲の良い友人を二人呼ぶ、と言うから、セヴィは特に仲の良かった幼馴染を三人だけ呼ぶ事にした。
御披露目は、冬が来る前にと少し急ぎで行われる事になった。
セヴィのドレスがどんなに急いでも一月はかかるという事で、一月半後、少し肌寒くなってきているであろう頃に、クードの屋敷の庭で行われる事に決まった。
あとはドレスが出来上がるのを待つばかりで、本当に私は他に何もする事はないのかしらとセヴィが不安を覚え始めた頃。
ドレスのデザインが決まってから少し経って、ドレスに合うアクセサリーなどの小物類を決めた時に、セヴィはカーニナからお祝いにとベールを貰った。
それは御披露目の当日、”披露目”のその時まで女性の顔を覆う為のベールだった。
「本当はセヴィの為に作ってあげられたら一番なんだけど」と申し訳なさそうに言ったカーニナに、セヴィはぶんぶんと首を振る。
カーニナは家族の中でも一番──それどころか村の女性の中でだってきっと一番、繊細なレース編みを得意としていた。
話を聞けば、カーニナは自分が作ったことは伏せて時折ブランシュールに作品を出しているらしい。
このベールもそんな作品の一つで、五月程をかけてつい最近完成したばかりなのだという。
「何でだか、これを編んでいる間よく家族の事を思い出したの──きっと神様の思し召しだったのね」
そんな風に微笑んだカーニナに、セヴィも何か贈りたいと考えた。
何が良いかしら。
出来ればベールと同じように、御披露目の時に身に付けられる物を──
考えて考えて、セヴィはカーニナにフィンガーレースを贈ることにした。
これなら一月あれば間に合うと、セヴィは自身のドレスが出来上がるまでの間大好きな姉の為に毎日必死でレースを編んだ。
──と言っても、時々カーニナに呼ばれてブライド邸へ遊びに行って昔話やお互いの旦那様自慢に花を咲かせたり子供たちと遊んだりと、御披露目やドレスの事を忘れて過ごす日もあったりしたのだけれど。
それが良い息抜きになったのか、フィンガーレースは思いの外順調に編めて、そうしてセヴィがフィンガーレースを編み終えた、デザインが決まってから一月と少し──御披露目まであと十日程となったその日、
ブランシュールからドレスが完成したとの連絡があった。
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