子供の頃結婚の約束をした男の子は魔王でした。

桜月みやこ

文字の大きさ
19 / 34

19 勇者と傭兵、ようやく蚊帳の内

しおりを挟む
「仲良しって……。気持ち悪い事言わないで、ティーア」

「なに、我からすれば孫のようなものだしな。これ・・は今までの魔王の中でも特に面白い」

顔を顰めたヴィリディスと、
いかにも愉快、という風なエリアディールの様子に、
ティレーリアはどうやら『仲良し』らしいと、がっくりと脱力する。


「あー……あの、何だか盛り上がってるところ申し訳ないのですが……」

ベルトールが、申し訳なさそうにそぉっと手を上げる。

「花嫁とか、盟約って……何、かな?」


「―――あ。」

ベルトールの問いかけに、事情を知らない男性陣への説明を失念していた。
という事に気づいたコーデリアがコホンと咳払いをする。

「ごめんなさい。本来魔王の城に到着した時点で説明をするはずだったのだけれど―」

色々めちゃくちゃになってしまったから忘れていたわ、と、コーデリアは勇者一行に ―というよりベルトールとバルドルフに対して、盟約についての説明を行った。
随分遅れて事の次第を理解したベルトールとバルドルフは、今更ながらに「何やってんだ、この王様」という視線を、あからさまにならない程度にエリアディールに送ったが、お綺麗な微笑みの前にあっさりと溶けて消えた。

ちなみに盟約について、コーデリアは王族教育として子供の頃から知っており、
エレナにも花嫁候補に選ばれた時点で人の王と精霊王から説明がなされていた。

リュシアンは精霊術師である為、精霊の噂話を聴いていたから何となく知っていた。
という事を聞いた精霊王は、「噂好きな風妖精シルフらの仕業かな?」と少しばかりお怒りだったようだ。
どうやら精霊族でも盟約については誰もが知っていて良い話ではないらしい。

「精霊族も魔族も、盟約の詳しい内容について知らせるのは種族長までに限定している。……が、風妖精シルフの長には少し仕置きが必要のようだの」
「僕が勝手に聴いてしまったのです。どうか風妖精シルフたちへのお怒りは……」

慌てたリュシアンの悲しそうな表情に、エリアディールはふむ、と腕を組む。

「そなたに弱いのは、我も変わらぬな。 風妖精シルフへの咎めは ―今回だけは見送ろう」
「ありがとうございます」

「……リュシアンって何者だ?」
精霊王から愛し気に頬を撫でられているリュシアンをぽかーんと見ていたバルドルフの呟きに、コーデリアが精霊術師ですもの、と返す。

「精霊術師は精霊との相性が良くないとなれないわ。相性の良い人が精霊に選ばれる、というべきかしら。 特にリュシアンは "精霊の愛し子" とまで言われているのよ。精霊王であるエリアディール様ですらメロメロよ。長年守護を得ている王家も嫉妬するくらいに、ね」

ズルいわ、と心の声が漏れたコーデリアに、リュシアンがすみません、と苦笑する。


リュシアンのような "精霊の愛し子" は極稀に誕生する。
そこらの精霊はおろか、精霊王までもその愛し子には甘々になってしまうらしいと聞いて、バルドルフが首を傾げる。

「それって、仮にリュシアンが精霊に「人間を襲えー」とか言ったら大惨事になるって事か?」
「精霊に愛されるのだ。悪意を持つような人間がなれるわけがないさ」

何をぬかしておる、と笑われて、バルドルフはそういうもんか、と頷く。

「じゃあ魔王と花嫁みたいに、精霊王サマも愛し子リュシアンを夫に迎えたりするのか?」

バルドルフの言葉に、精霊王がおやおやと笑う。

「人の子は物事を知らぬのだな。精霊王は夫も妻もとらぬよ」
「え、じゃあどうやって―」
「我の寿命が尽きた瞬間、どこかで次代が産まれるのさ」
「へぇ……じゃあ精霊王サマって処jy……」

途端、バルドルフに向かって稲妻のようなものが落ちた。

「うおっ、あっぶね!!!何すんだよ、姫さん!!」

僅かに服を焦がすだけで避けたバルドルフは、さすが『伝説』と謳われるだけの実力者なのだろう。

「バルドルフ、あなた、エリアディール様に対して なんっ… なんてことをっ!!!」

顔を真っ赤にして手の平の上で雷をバチバチさせて次の攻撃準備をしているコーデリアに、エリアディールがこらこらと手を振る。
途端霧散してしまった雷に、コーデリアがでも!とエリアディールを振り返る。

「人と恋に落ちる精霊もいるし、過去には精霊王でも人の伴侶を得た者はいたらしい。精霊と人とのそういう行為・・・・・・も不可能ではないのだろうよ」

我は興味がないがな、と付け足したエリアディールに、バルドルフが「じゃあ俺立候補」と言って、再びコーデリアから稲妻を落とされた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

処理中です...