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18 精霊王の戯れ
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「あの……精霊王様」
おずおずとティレーリアが前に進み出る。
エリアディールに視線で先を促されて、ティレーリアは頭を下げてから、思い切ってエリアディールに質問をぶつけた。
「本来私は、ヴィーの……魔王の花嫁候補で……そして、精霊王様のご意思で、外されたのですか?」
頭を下げたままじっとエリアディールの答えを待っていたティレーリアは、ふいに伸びてきた腕に絡めとられた。
「きゃっ!?」
何事かと顔を上げると、何故かエリアディールに抱き上げられている。
「そうだよ、"ティーア"。 おまえは、魔王ヴィリディスの花嫁候補だ」
「で……では、なぜ……」
美しいなんてものではないレベルの美貌を目の前にしてクラクラする頭を必死に保って、ティレーリアは何とか言葉を発する。
「我は知っていたんだよ。ヴィリディスと人の子の、ままごとのような『結婚の約束』をな」
するりと頬を撫でられて、ティレーリアの頬が真っ赤に染まる。
「ようやく"ティーア"を間近で見られた。 ヴィリディスはこういうタイプが好みだったのだな」
「ふぇ???」
頬を撫でられたまま可愛いの、と微笑まれて、ティレーリアはぼふんっと自分の頭が噴火してしまいそうな錯覚を覚えた。
「さっき僕が言っただろ、"全部視てたんだろう?" って」
ヴィリディスはエリアディールの腕からティレーリアを強引に取り返すと、自身の腕の中へぎゅっと抱え込む。
「通常の人の目には視えないだろうけど、精霊はどこにでもいるんだ。 だから、あの湖畔の時から僕は― 僕らは、『見張られてた』んだよ、精霊達にね」
「―――へ???」
驚いてヴィリディスとエリアディールを交互に見ているティレーリアに、エリアディールがゆったりと微笑む。
「当たり前だろう? 『魔王の息子が人の子と逢瀬をしている』 なんて報告が来れば― 気になるじゃないか」
「おうせ!?」
これ以上ないくらい真っ赤になって叫んだティレーリアに、ヴィリディスが「あれ?気になるのはそこ?」と首を傾げる。
「魔王は、魔族が人の国に出ていく事を禁じてる。だから魔族は森までしか行けず、魔族の国の中でしか暮らせない。 だけど精霊はどこだって行ける。さすがに並みの精霊ではこっちには入ってこられないみたいだけど、人の国に近い森の中はセーフなんだろうね。だから精霊族は常に魔族を森から見張ってる。だから僕も、ずっと見張られてた」
「……どうして……」
「精霊も僕らがやってる事と同じ事をしてるんだよ。 魔族が人の国に出ていないか監視する為、森で迷っている人間がいないか見回る為。 そして、魔王の世代交代にいち早く気付く為、だったっけ?」
「そうだな。 ―だがまぁ、あの頃は暇つぶしが一番の理由だったがな」
悪びれなく言うエリアディールに、ヴィリディスは片眉を上げる。
「僕とティーアの事は精霊王に知られていた。 僕が魔王になって― 精霊王が花嫁候補を選ぶ時に、だからこいつはわざとティーアを外して……僕の反応を見て遊んでたんだ」
不貞腐れたように言うヴィリディスに、ティレーリアはパチパチと瞬く。
「えぇっと……。では、そもそも今回の"盟約違反"は……」
「最初に盟約を無視したのは精霊王だよ。"魔力の高い娘を上から順に" 選ぶはずなのに…2番目に高いはずのティーアを飛ばしてそこの魔法士を候補者にした」
「私が、2番目……?」
「こうして3人並んでいるのを視れば一目瞭然だよ。 それに、僕だってティーアの魔力を鍛える手伝いをしたから、ティーアの魔力はよく分かってるしね。 そもそも中間発表だとかほざいて、こいつは2年前に候補に入りそうな娘の名前を、自分から僕に言いに来てる」
「………え?」
「"愛しのティーア"に会えなくて荒れてたお前の為に、候補に入りそうだと教えてやったんじゃないか」
「だったら責任持ってきっちり入れろ」
「………あの?」
「候補から外したら、どんな事をしてくれるんだろうと思ったんだよ。 まさか魔王自ら森から出て攫うなんてねぇ」
「先に盟約を無視したのはそっちなんだから、僕が森から出た事については何も言わせないよ」
「あああああああああのぉ!!!」
言い合っている2人に、ティレーリアが叫ぶ。
「何?ティーア」
自分の腕の中にいるティレーリアの髪を掬ったヴィリディスと、愉しそうに笑っているエリアディールを交互に見つめて、
ティレーリアはこくりと喉を鳴らす。
「……ヴィーと、精霊王様は………とても仲良し、なんですか…?」
おずおずとティレーリアが前に進み出る。
エリアディールに視線で先を促されて、ティレーリアは頭を下げてから、思い切ってエリアディールに質問をぶつけた。
「本来私は、ヴィーの……魔王の花嫁候補で……そして、精霊王様のご意思で、外されたのですか?」
頭を下げたままじっとエリアディールの答えを待っていたティレーリアは、ふいに伸びてきた腕に絡めとられた。
「きゃっ!?」
何事かと顔を上げると、何故かエリアディールに抱き上げられている。
「そうだよ、"ティーア"。 おまえは、魔王ヴィリディスの花嫁候補だ」
「で……では、なぜ……」
美しいなんてものではないレベルの美貌を目の前にしてクラクラする頭を必死に保って、ティレーリアは何とか言葉を発する。
「我は知っていたんだよ。ヴィリディスと人の子の、ままごとのような『結婚の約束』をな」
するりと頬を撫でられて、ティレーリアの頬が真っ赤に染まる。
「ようやく"ティーア"を間近で見られた。 ヴィリディスはこういうタイプが好みだったのだな」
「ふぇ???」
頬を撫でられたまま可愛いの、と微笑まれて、ティレーリアはぼふんっと自分の頭が噴火してしまいそうな錯覚を覚えた。
「さっき僕が言っただろ、"全部視てたんだろう?" って」
ヴィリディスはエリアディールの腕からティレーリアを強引に取り返すと、自身の腕の中へぎゅっと抱え込む。
「通常の人の目には視えないだろうけど、精霊はどこにでもいるんだ。 だから、あの湖畔の時から僕は― 僕らは、『見張られてた』んだよ、精霊達にね」
「―――へ???」
驚いてヴィリディスとエリアディールを交互に見ているティレーリアに、エリアディールがゆったりと微笑む。
「当たり前だろう? 『魔王の息子が人の子と逢瀬をしている』 なんて報告が来れば― 気になるじゃないか」
「おうせ!?」
これ以上ないくらい真っ赤になって叫んだティレーリアに、ヴィリディスが「あれ?気になるのはそこ?」と首を傾げる。
「魔王は、魔族が人の国に出ていく事を禁じてる。だから魔族は森までしか行けず、魔族の国の中でしか暮らせない。 だけど精霊はどこだって行ける。さすがに並みの精霊ではこっちには入ってこられないみたいだけど、人の国に近い森の中はセーフなんだろうね。だから精霊族は常に魔族を森から見張ってる。だから僕も、ずっと見張られてた」
「……どうして……」
「精霊も僕らがやってる事と同じ事をしてるんだよ。 魔族が人の国に出ていないか監視する為、森で迷っている人間がいないか見回る為。 そして、魔王の世代交代にいち早く気付く為、だったっけ?」
「そうだな。 ―だがまぁ、あの頃は暇つぶしが一番の理由だったがな」
悪びれなく言うエリアディールに、ヴィリディスは片眉を上げる。
「僕とティーアの事は精霊王に知られていた。 僕が魔王になって― 精霊王が花嫁候補を選ぶ時に、だからこいつはわざとティーアを外して……僕の反応を見て遊んでたんだ」
不貞腐れたように言うヴィリディスに、ティレーリアはパチパチと瞬く。
「えぇっと……。では、そもそも今回の"盟約違反"は……」
「最初に盟約を無視したのは精霊王だよ。"魔力の高い娘を上から順に" 選ぶはずなのに…2番目に高いはずのティーアを飛ばしてそこの魔法士を候補者にした」
「私が、2番目……?」
「こうして3人並んでいるのを視れば一目瞭然だよ。 それに、僕だってティーアの魔力を鍛える手伝いをしたから、ティーアの魔力はよく分かってるしね。 そもそも中間発表だとかほざいて、こいつは2年前に候補に入りそうな娘の名前を、自分から僕に言いに来てる」
「………え?」
「"愛しのティーア"に会えなくて荒れてたお前の為に、候補に入りそうだと教えてやったんじゃないか」
「だったら責任持ってきっちり入れろ」
「………あの?」
「候補から外したら、どんな事をしてくれるんだろうと思ったんだよ。 まさか魔王自ら森から出て攫うなんてねぇ」
「先に盟約を無視したのはそっちなんだから、僕が森から出た事については何も言わせないよ」
「あああああああああのぉ!!!」
言い合っている2人に、ティレーリアが叫ぶ。
「何?ティーア」
自分の腕の中にいるティレーリアの髪を掬ったヴィリディスと、愉しそうに笑っているエリアディールを交互に見つめて、
ティレーリアはこくりと喉を鳴らす。
「……ヴィーと、精霊王様は………とても仲良し、なんですか…?」
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