犬だと思って可愛がっていた狼はヴァンパイアだったそうです

桜月みやこ

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05.

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ロゼリアに正体を明かすきっかけになった事に対してはまぁ、あの男に礼を言っても良いかもしれないな、等と思いながら、レイヴィスは腕の中のロゼリアの頬に唇を寄せた。

「ん……だいじょ、ぶ……」

レイヴィスの痛くないかという問いにとろりと頷いたロゼリアに口付けて、もう一度ロゼリアの首筋から体液を啜ると、その細い両の足を持ち上げる。

「挿れるぞ」

短い宣言にロゼリアが反応を示す前に、レイヴィスはロゼリアの中に一気に自身を穿った。

「あぁっ──!?」

ロゼリアの背が仰け反って、悲鳴のような声が上がる。
レイヴィスはゆっくりと自身を半分程、ロゼリアの中から引く。
途端ふわりと香るロゼリアの匂いと、自身に纏わりついている赤色とを確認すると、ロゼリアの身体を抱き締めて、ぎゅうっと目を瞑っているその眦に唇を落とす。

「"いっぱい"ってのはこういう事だ──痛みはないはずだが……辛かったら言えよ」

レイヴィスはそう言って、ゆるりと抽挿を開始する。

「あっ…あぁっ……だ、め……うごくの、だめ…まっ……あっ……ぁんっ」
「"だめ"じゃないだろ?」

聞きたいのは、もっと とか 気持ち良い とか、そういう言葉だ。
レイヴィスは徐々に抽挿を速めて、時折ぐるりと腰を回して、ロゼリアの最奥を強く突き上げる。

「ひぅっ!んっ…あっ……あっ……や、ぁっ」

いくら擦っても突いても、レイヴィスの動きに合わせてロゼリアの口から零れるのは善がる声ばかりで、意味を成す言葉は出てこない。

「ロゼリア、辛くはないか?」

耳朶を食んで耳元で問うてみれば、ロゼリアは僅かに頷いた。

「んっ……い……きもちい……」

漸く得られたロゼリアからの言葉に、レイヴィスは満足気に笑むとふっと動きを止める。

「っ、レイヴィス……?」

潤んだ瞳で見上げられて、吐息交じりに名を呼ばれたその時、レイヴィスは今までに感じた事のない感情を覚えて、小さく笑う。

「なるほどな……」

呟きはロゼリアの耳には届かなかったらしい。
潤む瞳に僅かに問うような色を滲ませたロゼリアに、レイヴィスは言葉にはせず口端を上げるだけに止める。

レイヴィスに嗜虐心なんてものはないし、そういう趣味を持つものに呆れさえ覚えていた。
けれど、今のロゼリアの潤んだ瞳を見た瞬間に沸き上がった、もっと泣かせてみたい、滅茶苦茶に突き上げて啼かせたいという衝動に、こういう事なのかと納得をした。
レイヴィスのそれは嗜虐とまではいかないのだろうが、それでもこれが高じたものなのだろうという想像はついた。

だが、流石に初めての、催淫効果で痛みを感じにくいとは言え、ついさっき拓かれたばかりのロゼリアに無理をさせるのは可哀想だし、何よりそれで嫌われてしまっては今までの努力が水の泡だ。

今蕩ける様にレイヴィスを見つめているのも催淫効果でこうなっているだけで、『レイヴィス』に恋をしているわけではないし、今のところロゼリアの中では『レイヴィス』よりも『シルヴァ』の方が好感度は遙かに上だろう。

「──自分で自分シルヴァに嫉妬する羽目になるとはな……」

ぼそりと落とされた呟きは、やはりロゼリアの耳には届かず、ロゼリアは不思議そうにレイヴィスの名を呼ぶ。
レイヴィスは自身に苦笑を零してから、ロゼリアの顎に指をかけて上向かせた。

「もっと、欲しいか?」

その言葉に、ロゼリアの中が、僅かにレイヴィスを締め上げた。

「……ほしい……です」
「なら、強請ってみろ。上手に出来たら……くれてやる」

少しだけいじめてみようかと、そんな事を言ってみる。
ロゼリアが嫌がれば、すぐに動いてしまえば良い。
その内自分から欲しがるように、身体から堕としていけば良いのだから──

そんな事を思っていたレイヴィスの腕の中で、ロゼリアの瞳が揺れる。
戸惑うように僅かに開いた口から小さく吐息だけが零れて──

「──もっと、ください」

小さな、囁くようなロゼリアの声を、けれどレイヴィスの耳はしっかりと捉えた。

「レイヴィスの……奥に、もっと……ください……」
「──────っ!!!」


拓かれたばかりのロゼリアに無理をさせるのは可哀想

──などと思っていたのはほんの少し前の事のはずなのに、ロゼリアの"おねだり"に、レイヴィスの中でそんな考えはあっという間に空の彼方に消え去ってしまった。



「くっ……!」
「ぁ…やぁっ……なか……あっ……!」

ロゼリアの最奥に、レイヴィスの白濁が勢いよく注ぎ込まれる。
お腹の中がどくどくと満たされて熱くなっていく感覚に、ロゼリアがぎゅうっとレイヴィスにしがみつくと、レイヴィスもロゼリアを抱き締め返して、そして数回腰を打ち付ける。

ロゼリアの中に全てを注ぎ込むと、レイヴィスははぁっと息を吐いた。
それと同時にロゼリアの腕から力が抜けて、くたりとシーツに沈み込む。

二人の隙間から、収まりきらなかった白濁がとろりと溢れ出て来て──その感覚にロゼリアは僅かに身じろいだ。


レイヴィスに強請ってみろと言われた後、火が付いたように突き上げられて、何が何だか分からないままレイヴィスに縋り付いていたロゼリアは、途中で粗相をしてしまった。
恥ずかしくて申し訳なくてごめんなさいと泣いていたら、レイヴィスにそれは"達したイった"んであって粗相ではないと教えられて……気持ち良かったか?と問われたから、頷いてしまった。

霞がかかったように頭がぼんやりしていて思考能力なんてものはほとんどなくなっていたし、何もかも全部が気持ち良すぎたから、それまでも色々と言わされていたから何と言ったのかきちんとは覚えていないけれど、
その時に口にした、強請るような言葉が何かいけなかったのだと、ロゼリアはくたりとシーツに沈み込んだままぼんやりと振り返る。

それまでもレイヴィスの与えてくれる刺激は気持ち良すぎてどうにかなってしまいそうだったけれど、そこからは更に、何というか……
怒涛の勢い、とでも言うべきか……
啼かされてイかされて、おかしくなりそうで怖くなって必死に縋り付いて、やだ、もう無理と泣いたら少しだけゆっくりしてくれて、
だけど気が付けばまた……を何度か繰り返されて、先ほどようやく、終わった。

終わった……はずだ。
いまだレイヴィスは中に挿ったままだけれど。
何だかロゼリアが身じろいだ拍子にまた中でむくりとした気がするけれど──


ふと、顔にかかった髪を払うようにレイヴィスの指がロゼリアの顔に触れて、そして遠慮がちにロゼリアの頬を撫でる。
その遠慮がちな触れ方が何だかとてもくすぐったくて、ロゼリアはレイヴィスのその手に頬を寄せた。

「ロゼリア……悪い。少し、調子に乗り過ぎた」

心なしかしゅんとしたような声音でレイヴィスがそんな事を言ってきた。
だったらひとまず中から出て欲しい、と思ったけれど、何だかそれは言ってはいけない気がして、ロゼリアは閉じたままだった瞼をゆっくりと持ち上げる。

いつの間にか夜が明けていたのか、僅かに射し込んでいる光がレイヴィスの白銀の上で跳ねている。
さっきのしゅんとした声と相まって、ロゼリアにはその白銀に何となく尻尾を垂れたシルヴァの姿が重なって見えて、小さく笑う。

「──シルヴァ」

ぽつんとロゼリアの口から零れたその名に、レイヴィスがぴくりと肩を揺らした。

「何で今、シルヴァ──?」

不機嫌そうな声音に、ロゼリアは腕を持ち上げて、そっとレイヴィスの髪に触れる。

「だって、今ね。光があたって、きれいだったの……シルヴァの、色だなぁって…」
「やっぱり、ロゼリアの中では俺よりもシルヴァの方が上か……」
「うえ、というか……」

何か言葉を続けたようだったけれど、重そうだった瞼がとろとろと閉じて、ロゼリアの腕から力が抜ける。

「ロゼリア?」
「……ん」

今のは返事か?とレイヴィスはロゼリアの頬をふにっと軽く摘まんでみたけれど、何の反応もない。
すぐに小さな小さな寝息が聞こえて来て、レイヴィスは残念そうに息をつくとロゼリアの隣に横になって、その身体を抱き締めた。


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