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届かない想いに身を寄せて
証明
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……我ながら、馬鹿だと思った。
だってそうじゃないか。ジュノンさんが放とうとしている魔法、『魔王』は、正真正銘闇魔法だ。闇魔法に対してシエルト……ほぼ無効だ。
「――――ウタくん」
そうせめて、他の光魔法で打ち消すとか、そういう風にすればよかった。これじゃあ意味がない。二人とも死んで終わりだ。
「…………柳原、羽汰……」
死ぬ? ……まぁ、いいか。いや、よくはないんだけど、僕が死ぬことで、もしかしたらディランさんは助かるかもしれない。そうだ。対象は一人なんだからきっと
『諦めるのか?』
――どきりと、心臓が鳴るのが分かった。……あいつの声だった。あいつの声を聞いたとたん、ぐわっと体が熱くなるのが分かった。全身が熱くなり、恐怖からなのかなんなのか分からない涙が込み上げ、溢れた。
地面に立つ足に、力がこもる。ボロボロと涙が溢れ落ち、歪んだ視界に、しっかりとジュノンさんをとらえた。
シエルトと唱えてからここまで、一体何秒だったろう。僕は確実に思っていたのだ。
諦めるもんかと。壊すもんかと。
今度こそは、守るんだと。
……シエルトを使う手に、力を込めた。ジュノンさんの攻撃をシエルトで受けるなんて、そんな自殺行為ないけど、でも、この選択を咄嗟にしてしまったんだ。今出来ることは、これしかない。
「…………」
ジュノンさんは、無言のまま、魔方陣から魔法を放った。
魔法が、シエルトにぶつかるのを感じる。瞬間、シエルトにヒビが入る。
諦めるな、諦めるな、諦めるな。
僕は決めた。絶対絶対、諦めないって決めたんだ。あのとき……僕は確かに、もう少し生きたいって思ったんだ。すごく自分勝手に、そう思ったんだ。
だから、僕は、生きなきゃいけない。死ぬわけにはいかない。
「っ……シエルト!」
強すぎる魔法を、必死になって止める。止めきれない。いや、止められる。
出来る出来ないじゃない……やらなきゃいけない。
――目の前が、真っ白になった。
「――――」
膝をついた。あまりの脱力感から、立っていることが出来なくなっていた。自分の呼吸が頭の中で反響する。これが現実か、それとも違うのか。理解するにも時間が必要だった。
「……羽汰」
後ろから声がする。弱々しい声だ。膝も手もついたまま目だけをちらりと後ろにやれば、どこか怯えたような表情でディランさんが立っていた。
「……ディラン、さ……」
「…………ごめん」
しかし、その顔を見れたのは本当に少しの間だけで、瞬きをしたその瞬間に、ディランさんは姿を消してしまった。
僕は必死に息を整えた。体に傷は…………奇跡的に、無い。ホッとした僕の耳を、
「ウタくん」
酷く冷たい声が刺す。ハッと顔をあげると、見たこと無い表情のジュノンさんが立っていた。その表情は……怒り、なのかも分からない。負の感情である以外全て分からない。そんな表情。僕は途切れ途切れに話した。
「あ……ごめ、な……さい…………で、でも、僕は」
「ウタくんさぁ……今、自分が何したか分かってる?」
ディランさんを、逃がした。
個性の塊'sはいつも正しかった。それを、否定した。
「シエルトで、私の呪文を受けたよね?」
「……え」
「ただでさえ闇魔法に弱いシエルトで、最強の勇者である私の魔法を、受け止めたんだよね? ……それがどういうことになるのか、分かる?」
僕は混乱していた。なにを、どういう意味で言われているのか全く分からなかった。と、アリアさんが、上から飛び降りてくる。ちらりと見ると、レイナさんとロインは落ち着きを取り戻したようで、治療されたドラくんと一緒に上にいる。
「ジュノン! 何がなんだか分からないが、でも、今じゃなくていいだろう? とにかくウタの回復をしないと」
「それってつまりさぁ……」
ジュノンさんはアリアさんを全く気にしないように言いつつ、手に持っていた鎌の血を払った。
「――ヤナギハラ・ウタの力が個性の塊'sを越えるってこと、証明しちゃったってことなんだよ?」
視界が反転する。何が起きたのか分からなくて体に触れたら、ドロリと赤い液体で手が染まった。……ジュノンさんの鎌で、体の上下を真っ二つにされるような勢いで切りつけられたのだと、やっとの想いで気づく。
「ジュノン!? 何やってるんだ! やめてくれ! そんなことしたらウタは」
「プランツファクトリー、ポイズネーション」
ジュノンさんに駆け寄り、止めようとしたアリアさんに、テラーさんがスキルを使う。とたんにアリアさんの体は蔦に覆われ、小さく悲鳴をあげて倒れこんだ。
「な、あぁっ……ぅ、ぁ……く…………て、らー…………?」
「……ごめんね、アリアさん」
ジュノンさんは、僕があの一撃で死んでいないのが分かると、再び鎌を振り上げ、勢いのままに切り裂く。頭の中がチカチカと点滅して、意識が朦朧とする。
ドラくんがもとの姿に戻り、飛び降りてきた。それを見たおさくさんがドラくんの左の翼を切り裂き、ドロウさんが右の翼を何本もの槍で貫く。それを見て飛び降りようとするレイナさんとロインは、光の結界で覆われた。……アイリーンさんだ。
個性の塊'sが、本気で、僕を殺そうとしている。
魔法が降ってくる。避ける術も、受け止める術もなく、それを体で受けるしかない。
地面に仰向けに倒れた僕に向かって、ジュノンさんは鎌を振り上げた。
――死ぬ。これは、死ぬよ。
そして鎌は、振り下ろされる。
だってそうじゃないか。ジュノンさんが放とうとしている魔法、『魔王』は、正真正銘闇魔法だ。闇魔法に対してシエルト……ほぼ無効だ。
「――――ウタくん」
そうせめて、他の光魔法で打ち消すとか、そういう風にすればよかった。これじゃあ意味がない。二人とも死んで終わりだ。
「…………柳原、羽汰……」
死ぬ? ……まぁ、いいか。いや、よくはないんだけど、僕が死ぬことで、もしかしたらディランさんは助かるかもしれない。そうだ。対象は一人なんだからきっと
『諦めるのか?』
――どきりと、心臓が鳴るのが分かった。……あいつの声だった。あいつの声を聞いたとたん、ぐわっと体が熱くなるのが分かった。全身が熱くなり、恐怖からなのかなんなのか分からない涙が込み上げ、溢れた。
地面に立つ足に、力がこもる。ボロボロと涙が溢れ落ち、歪んだ視界に、しっかりとジュノンさんをとらえた。
シエルトと唱えてからここまで、一体何秒だったろう。僕は確実に思っていたのだ。
諦めるもんかと。壊すもんかと。
今度こそは、守るんだと。
……シエルトを使う手に、力を込めた。ジュノンさんの攻撃をシエルトで受けるなんて、そんな自殺行為ないけど、でも、この選択を咄嗟にしてしまったんだ。今出来ることは、これしかない。
「…………」
ジュノンさんは、無言のまま、魔方陣から魔法を放った。
魔法が、シエルトにぶつかるのを感じる。瞬間、シエルトにヒビが入る。
諦めるな、諦めるな、諦めるな。
僕は決めた。絶対絶対、諦めないって決めたんだ。あのとき……僕は確かに、もう少し生きたいって思ったんだ。すごく自分勝手に、そう思ったんだ。
だから、僕は、生きなきゃいけない。死ぬわけにはいかない。
「っ……シエルト!」
強すぎる魔法を、必死になって止める。止めきれない。いや、止められる。
出来る出来ないじゃない……やらなきゃいけない。
――目の前が、真っ白になった。
「――――」
膝をついた。あまりの脱力感から、立っていることが出来なくなっていた。自分の呼吸が頭の中で反響する。これが現実か、それとも違うのか。理解するにも時間が必要だった。
「……羽汰」
後ろから声がする。弱々しい声だ。膝も手もついたまま目だけをちらりと後ろにやれば、どこか怯えたような表情でディランさんが立っていた。
「……ディラン、さ……」
「…………ごめん」
しかし、その顔を見れたのは本当に少しの間だけで、瞬きをしたその瞬間に、ディランさんは姿を消してしまった。
僕は必死に息を整えた。体に傷は…………奇跡的に、無い。ホッとした僕の耳を、
「ウタくん」
酷く冷たい声が刺す。ハッと顔をあげると、見たこと無い表情のジュノンさんが立っていた。その表情は……怒り、なのかも分からない。負の感情である以外全て分からない。そんな表情。僕は途切れ途切れに話した。
「あ……ごめ、な……さい…………で、でも、僕は」
「ウタくんさぁ……今、自分が何したか分かってる?」
ディランさんを、逃がした。
個性の塊'sはいつも正しかった。それを、否定した。
「シエルトで、私の呪文を受けたよね?」
「……え」
「ただでさえ闇魔法に弱いシエルトで、最強の勇者である私の魔法を、受け止めたんだよね? ……それがどういうことになるのか、分かる?」
僕は混乱していた。なにを、どういう意味で言われているのか全く分からなかった。と、アリアさんが、上から飛び降りてくる。ちらりと見ると、レイナさんとロインは落ち着きを取り戻したようで、治療されたドラくんと一緒に上にいる。
「ジュノン! 何がなんだか分からないが、でも、今じゃなくていいだろう? とにかくウタの回復をしないと」
「それってつまりさぁ……」
ジュノンさんはアリアさんを全く気にしないように言いつつ、手に持っていた鎌の血を払った。
「――ヤナギハラ・ウタの力が個性の塊'sを越えるってこと、証明しちゃったってことなんだよ?」
視界が反転する。何が起きたのか分からなくて体に触れたら、ドロリと赤い液体で手が染まった。……ジュノンさんの鎌で、体の上下を真っ二つにされるような勢いで切りつけられたのだと、やっとの想いで気づく。
「ジュノン!? 何やってるんだ! やめてくれ! そんなことしたらウタは」
「プランツファクトリー、ポイズネーション」
ジュノンさんに駆け寄り、止めようとしたアリアさんに、テラーさんがスキルを使う。とたんにアリアさんの体は蔦に覆われ、小さく悲鳴をあげて倒れこんだ。
「な、あぁっ……ぅ、ぁ……く…………て、らー…………?」
「……ごめんね、アリアさん」
ジュノンさんは、僕があの一撃で死んでいないのが分かると、再び鎌を振り上げ、勢いのままに切り裂く。頭の中がチカチカと点滅して、意識が朦朧とする。
ドラくんがもとの姿に戻り、飛び降りてきた。それを見たおさくさんがドラくんの左の翼を切り裂き、ドロウさんが右の翼を何本もの槍で貫く。それを見て飛び降りようとするレイナさんとロインは、光の結界で覆われた。……アイリーンさんだ。
個性の塊'sが、本気で、僕を殺そうとしている。
魔法が降ってくる。避ける術も、受け止める術もなく、それを体で受けるしかない。
地面に仰向けに倒れた僕に向かって、ジュノンさんは鎌を振り上げた。
――死ぬ。これは、死ぬよ。
そして鎌は、振り下ろされる。
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