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帝国の後宮にて
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更なる情報を求めて、庭園を散策しているケイの背に、突然声がかかった。
「誰だ」
鋭い誰何の声に、思わず口元を綻ばせる。
低く響く艶のある声は、昨日、聞いた声だった。
「怪しい者め、その布を取れ」
「……仰せのままに」
ゆっくりと振り向き、膝をついて、スルリと薄衣を落とす。
突きつけられた剣先を前に欠片の恐れもせず、ケイはそのまま優雅に帝国で最上位の人間にしか許されないはずの跪拝の礼をとった。
「お前のその空気、ただの侍従ではあるまい。殺気は感じんが……違和感しかない」
冷静に観察する男の落ち着いた声に、ケイは顔を伏せたまま微笑みを浮かべた。
「さすが皇子殿下、私は侍従ではございませんが、貴方様を害する人間ではございません。どうかその剣を下ろして下さいませ」
「……それを私が、信じるとでも?」
鋭く眼を細めて睨みつける皇子の視線を背中に浴びながら、ケイは込み上げる笑いを抑えるのに必死だった。
廊下を行き来していた多くの人間は、離宮へ用を言いつけられた侍従にすぎないと気に留めていなかったのに、皇子は一目で違和感を感じたと言う。
おそらくは、自分の色気なんて、そんな生やさしいものではない。
面白い、と感じた。
この皇子は、容姿だけではなく、とてもとても面白い。
自分の存在を掬い取られるのは、思わぬ快感だった。
「顔を見せろ」
「御意に」
伏せていた顔を上げると、美しい黒の双眸が不可解そうに僅かに歪んだ。
「…………お前、異国人か。東方の肌をしているな」
なるほど、気にかかるのは、そこか。
意外な着眼点に、ケイはますます楽しくなった。
「ええ、ご明察の通り、私の体には異国の血が流れております。……東の人間は、お嫌いですか?」
「好きも嫌いもあるまい。ただ、怪しいだけだ。なぜこの灼熱の国に、お前のような人間がうろついている?しかも、外を歩くには適さんような、薄い衣しか纏わずに。……スルタンに招かれた客では、あるまい」
「……ふふ、お察しの良いことで」
ケイの顔を見て、幼さと妖艶さが同居する歪な美貌ではなく、ただこの暑い国に似合わない肌を持つ人間であるという一点に注目されたのは、初めてだった。
「お前は、何者だ」
見極めようとするように夜色の目を細めてまっすぐに瞳を見据えてくる皇子に、惑わすように微笑んだ。
「何者だと思います?」
「誰だ」
鋭い誰何の声に、思わず口元を綻ばせる。
低く響く艶のある声は、昨日、聞いた声だった。
「怪しい者め、その布を取れ」
「……仰せのままに」
ゆっくりと振り向き、膝をついて、スルリと薄衣を落とす。
突きつけられた剣先を前に欠片の恐れもせず、ケイはそのまま優雅に帝国で最上位の人間にしか許されないはずの跪拝の礼をとった。
「お前のその空気、ただの侍従ではあるまい。殺気は感じんが……違和感しかない」
冷静に観察する男の落ち着いた声に、ケイは顔を伏せたまま微笑みを浮かべた。
「さすが皇子殿下、私は侍従ではございませんが、貴方様を害する人間ではございません。どうかその剣を下ろして下さいませ」
「……それを私が、信じるとでも?」
鋭く眼を細めて睨みつける皇子の視線を背中に浴びながら、ケイは込み上げる笑いを抑えるのに必死だった。
廊下を行き来していた多くの人間は、離宮へ用を言いつけられた侍従にすぎないと気に留めていなかったのに、皇子は一目で違和感を感じたと言う。
おそらくは、自分の色気なんて、そんな生やさしいものではない。
面白い、と感じた。
この皇子は、容姿だけではなく、とてもとても面白い。
自分の存在を掬い取られるのは、思わぬ快感だった。
「顔を見せろ」
「御意に」
伏せていた顔を上げると、美しい黒の双眸が不可解そうに僅かに歪んだ。
「…………お前、異国人か。東方の肌をしているな」
なるほど、気にかかるのは、そこか。
意外な着眼点に、ケイはますます楽しくなった。
「ええ、ご明察の通り、私の体には異国の血が流れております。……東の人間は、お嫌いですか?」
「好きも嫌いもあるまい。ただ、怪しいだけだ。なぜこの灼熱の国に、お前のような人間がうろついている?しかも、外を歩くには適さんような、薄い衣しか纏わずに。……スルタンに招かれた客では、あるまい」
「……ふふ、お察しの良いことで」
ケイの顔を見て、幼さと妖艶さが同居する歪な美貌ではなく、ただこの暑い国に似合わない肌を持つ人間であるという一点に注目されたのは、初めてだった。
「お前は、何者だ」
見極めようとするように夜色の目を細めてまっすぐに瞳を見据えてくる皇子に、惑わすように微笑んだ。
「何者だと思います?」
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