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帝国の後宮にて
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しおりを挟む「あぁ、無論分かっている。そして、ここまで怪しい者を、捕らえないという選択肢は、私にはない」
強く言い切る皇子に、ケイはいっそ揶揄うように軽やかな声で告げた。
「おや、焦らずとも、遠からず私はあなたの元に参上致します。無論、丸腰で」
くすくすと笑って見せれば、探る目つきのまま皇子も薄く笑った。
「本気で、私がお前を見逃すとでも思っているのか?随分な自信だな」
その気になれば一瞬で頸動脈を裂かれるのだろうと思うほど、迷いなく喉元に突きつけられた刃に柔らかな吐息を寄せて、ケイは歌うように告げた。
「まぁ、首を切り裂いて頂く分にも、離宮の兵士に突き出して頂く分にも、全く構いませんが……そうなりますと、もしかするとあなた様の方が分が悪いかもしれません」
「なぜ?私は、自分の滞在している宮にいた、怪しい者を捕らえただけだ」
片眉を上げて不可解だと表明する皇子に、ケイは花のような笑みを零した。
「私は、王宮内のあらゆる場所への通行許可証を持っておりますので。この庭まででしたら、咎められることはないのです」
「…………なんだと?」
初めて驚愕を露にした皇子に、どこか恍惚に近い感覚を覚えながら、ケイは唇を綻ばせた。
「正規の手順を踏んで得た、スルタンの署名入りの証書でございますので、私を『理不尽に拘束』した者として、あなた様が捕らえられることも、ともすればあり得てしまいます」
「…………お前は、何者なのだ。まさか、あの老獪なスルタンを父と呼んではおらぬだろうな?だとしたら、とんだ隠し玉だ」
刃先には微塵の動揺も見せず、皇子は唸るように低く問うた。
ケイからすれば驚くほどの見当違いに、思わず肌のすれすれに停止する刃の存在も忘れて、吹き出してしまった。
「ふふふっ、スルタンを父とは、恐れ多すぎて震えてしまいそうです。まぁ、神を父と呼ぶ国もあると聞きますので、この帝国の父としてでしたら、父上とお呼びすることもあるかもしれませんが」
「意味のない会話はやめろ。……お前は何者か、それだけに答えろ」
愉快そうに流れるごとく言葉を繋ぐケイを苛立たしげに遮って、皇子は叩きつけるように迫った。
しかしケイは、答える選択肢を選ぶつもりはなかった。
「せっかちなことで……皇子様、名乗るのは、まだ早うございます」
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