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帝国の後宮にて
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「はぁ?」
理解できないと顔を歪め、表情全てで不快を表す皇子を意に介さず、ケイは刃を向けられた状態のまま、するりと立ち上がった。
「私を切っても構いませんが、その結果については責任はとれません。悪くすると、己を軽んじられたと、スルタンはお怒りになるかもしれませんが……」
それでも良ければ、お切りなさいませ。
そう囁いて無防備な白い首すじを晒すと、皇子は動揺したように刃先を引いた。
「……お前は、本当に死んでも良いと思っているようだな」
機微に聡い人間のようだ、と、ケイは笑みを深める。
別に死にたくはないけれど、死んだとしても構わないと、ケイはいつだって思っているのだから。
「さすが皇子様、よくお分かりで」
「……許可証を見せろ、とりあえずそれで納得しよう」
紛い物は看破してやるとばかりに目を細め、皇子はケイから刹那も目を逸らさない。
その視線の濃度に快感を覚えながら、ケイは頷き、首に掛けられた鎖をしゅるりと手繰った。
「ええ、簡易的なものではありますが、こちらでございます」
首すじに掛けられた赤い宝石と、それを縁取る金の細工、そして金属のプレートに刻まれたスルタンの御璽。
「……どんな恐ろしい価値の石を、首から下げているのだ、お前は」
呆れたようにため息をついて剣を収める皇子の冷静さに感嘆しつつ、ケイは微笑んだ。
「スルタンより、直々に下賜されたものにございます。とても美しいでしょう?」
「あぁ、あぁ。そんな石を簡単にやれるのは、この世でスルタンぐらいだろう。まったく、そんな巨大な紅玉、見たこともないわ」
首を振ってため息をつく皇子に、ケイは満面の笑みを送った後、頭を下げて暇の礼をとった。
「ふふふっ、それでは皇子様、また」
「なにが、また、だ。二度と来るな」
ケイが攻撃をしてくる相手でないと判断したらしい皇子が興味をなくしたように歩き去ろうとする背中に、ケイは愉悦をにじませた声をふわりと送った。
「いえ。必ずや、再びお目見え致します。えぇ、……明日にでも」
理解できないと顔を歪め、表情全てで不快を表す皇子を意に介さず、ケイは刃を向けられた状態のまま、するりと立ち上がった。
「私を切っても構いませんが、その結果については責任はとれません。悪くすると、己を軽んじられたと、スルタンはお怒りになるかもしれませんが……」
それでも良ければ、お切りなさいませ。
そう囁いて無防備な白い首すじを晒すと、皇子は動揺したように刃先を引いた。
「……お前は、本当に死んでも良いと思っているようだな」
機微に聡い人間のようだ、と、ケイは笑みを深める。
別に死にたくはないけれど、死んだとしても構わないと、ケイはいつだって思っているのだから。
「さすが皇子様、よくお分かりで」
「……許可証を見せろ、とりあえずそれで納得しよう」
紛い物は看破してやるとばかりに目を細め、皇子はケイから刹那も目を逸らさない。
その視線の濃度に快感を覚えながら、ケイは頷き、首に掛けられた鎖をしゅるりと手繰った。
「ええ、簡易的なものではありますが、こちらでございます」
首すじに掛けられた赤い宝石と、それを縁取る金の細工、そして金属のプレートに刻まれたスルタンの御璽。
「……どんな恐ろしい価値の石を、首から下げているのだ、お前は」
呆れたようにため息をついて剣を収める皇子の冷静さに感嘆しつつ、ケイは微笑んだ。
「スルタンより、直々に下賜されたものにございます。とても美しいでしょう?」
「あぁ、あぁ。そんな石を簡単にやれるのは、この世でスルタンぐらいだろう。まったく、そんな巨大な紅玉、見たこともないわ」
首を振ってため息をつく皇子に、ケイは満面の笑みを送った後、頭を下げて暇の礼をとった。
「ふふふっ、それでは皇子様、また」
「なにが、また、だ。二度と来るな」
ケイが攻撃をしてくる相手でないと判断したらしい皇子が興味をなくしたように歩き去ろうとする背中に、ケイは愉悦をにじませた声をふわりと送った。
「いえ。必ずや、再びお目見え致します。えぇ、……明日にでも」
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