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皇国への道中にて
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しおりを挟む「彼らは奴隷ではない!」
皇子の矛盾を嘲笑するようなケイの言葉に皇子は腹立たしそうに言った。
「あれは、スルタンの、要望だ。この度の各国との謁見は、献上品に、条件があった。色々と綺麗事で飾って遠回しには言っても……要は美しい人間を、と言う話だ」
怒りのままに髪をかきあげる皇子は、まるでスルタンに向けられなかった怒りをぶつけるかのように、ケイを睨みつけた。
「我が国の民を、スルタンの欲望のための、奴隷になどさせるものか」
強い目で言う皇子は、まさしく上に立つ者なのだろう。
言い切る声の強さに、ケイの腰にぞわぞわとした興奮が宿る。
「彼らは正式な、留学生だ。戯れに誇りを踏み躙り、命を奪うことは許されない。そんなことがあれば我が国は正式に抗議するし、各国への評判は地に落ちるだろう。そんな不要の不評を買うほど、今代のスルタンは愚かではあるまい」
「左様でございますか。それは、随分なお優しさで」
茶化すように目を細めて笑うケイに、皇子は舌打ちせんばかりに苛立ちを表し、眉間に深い皺を刻んだ。
「スルタンが、こんな低俗な欲望を露わにして、属国に醜い要求をするようなことがなければ」
一瞬、地へ視線を落として呻くように呟くと、皇子は怒りに任せたようにキッと顔を上げ、ケイを敢えて挑発するごとく嘲弄の笑みを浮かべた。
「はっ!おおかた、お前に飽きたのだろうがな」
「っ」
明らかに自分を傷つける意図を持って放たれた言葉に、ケイは不覚にも一瞬怖気付いた。
『理想』だったはずのケイの『終焉』を勘づいたスルタンが、新たな『お気に入り』を探し始めているのには、気づいていた。
だから、ケイは自分から捨てたのだ。
あの国と、あの地位と、あの男を。
ケイが人生の半分近くを捧げ、その奉仕への対価のごとく、戯れにケイの命を守り続けた、あの帝王を。
情がないわけではない。
ケイの能力を、存在を、価値を、欠片なりとも認めてくれたのは、あの男だけであったから。
彼の利益となるほどに役立つ人間として、彼にとって好ましい存在として、ケイはあの後宮でおそらくは過分なほどの存在価値を与えられていた。
例えそれが、一時的な評価であったとしても。
その日々を全く惜しんでいない訳ではない。
たとえ自分から捨てたのだとしても。
僅かに唇を噛むケイの感傷には気づくことなく、皇子ははっきりと告げた。
「穢らわしい女め、私の愛を求めるな。私は皇家に穢れた血を混ぜる気はない。……俺に二度と、そのようなおぞましい誘いをかけるな」
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