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本編
初夜不能の呪いとやらはどうしたんだと言いたい初夜
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さて、今夜は聖夜、つまりは初夜である。
「月日が経つの早いわぁ……」
ペラッペラの下着みたいな寝巻きを着せられて、公爵家の侍女に足の爪の間まで綺麗に磨き上げられ、まるで娘を嫁に出すような顔をした侍女頭に
「お綺麗でございます、坊ちゃんもさぞお喜びでしょう」
とウルウルの眼差しで激励されて押し込まれた公爵令息の寝室。
「いやちょっと待って、本当に。なぜこうなった?」
馬鹿みたいに研究に没頭して研究室で寝泊まりし、気絶するように寝てはコーリーに公爵家へ運び込まれてせっせと介抱されること、この半年で何十回。侍女頭にはもはや娘のように思われているのかもしれない。まぁそれは良い。
「なんでみんなこんなに好意的なの?というかなんで歓迎ムード?おかしくない?未婚の二人が初夜ですよ?いいの?」
公爵家は頭がおかしいのかもしれない。いや、大事な坊ちゃんの不能を治すための一大計画だから、気合が入るのも当然なのか?
「でもなー、毎週のデートにも全面協力だったし、本当に意味不明だわ……」
コーリーとのデートに相応しい格好なんて我が家と私の財力では不可能である。だから最初の頃は身分差があっても可能な市場食べ歩き(研究試料を買いに行った帰り)とか、森にハイキング(研究試料の熊狩り)とか、比較的お手頃価格の宝石店を訪問してペアアクセサリー購入(魔石を買い取るついで)だったりとか、そうやってデートをこなしていた。
しかし。
「カミラお嬢様、本日は私どもにお任せくださいませ!」
「は?」
例によって例のごとく、研究室で白衣を寝袋代わりに寝ていたところを公爵家に連れ去られた私は、起きた瞬間目を爛々と輝かせた侍女集団に拘束された。
「え?え?え?」
「今からお嬢様を、王家の姫君にも負けない美少女にして差し上げますのでね!気合い入れて踏ん張ってくださいませ!」
「は!?いや、ちょ、えーー!?」
ずるずると早朝から風呂に入れられ磨き上げられ、よく分からない高そうな水とクリームと香水を振りかけられ、コルセットで締め上げられ、髪を複雑怪奇に結い上げられ、とんでもなく上等の砕いた宝石があしらわれたドレスを着せられ、耳と首と頭にコーリーの目の色のサファイアを飾られ、そして。
「綺麗だよカミラ!まるで女神だ!」
「……さようですか」
死んだ魚の目になった私が連れ出されたのは、大公様主催の夜会だった。
「いやぁ、パートナーがいないならウチの娘と、って大公閣下がうるさくてね!カミラが居てくれてよかったよ!」
もはやはしゃいでいると言っても過言ではないコーリーに、全身を満遍なく観察され、事細かに描写されながら賛美の限りを尽くされ、精神的に灰になった気分で辿り着いた夜会。
さぞ悲惨な目に遭うのだろうと……つまりは、三文小説のごとく、お綺麗で高貴な身分のお嬢様方に遠回しな悪口雑言を叩かれたり酒をかけられたり、周囲のお偉い人たちから嘲弄と侮蔑の目で見下されたり、まぁいろいろ散々な羽目になるだろうと思っていた。だが。
「おや、コーリー殿。そちらが噂の才媛ですかな?」
「コーリー殿が口説き落としたと言うご令嬢か」
「やっと恋人にしたと仰っていたのがそちらですか」
「なるほどお綺麗で賢そうだ。冷たい氷のような目で睨まれて、コーリー殿もお幸せそうですなぁ」
「なによりなにより、……まぁ若人の恋路にこれ以上口を挟むのはやめておきましょう」
「そうですな、人の閨事に口を出す者は女神に首を刎ねられて死にますゆえな」
「「「「はっはっはっはっは」」」」
と、挨拶回りでは年配のおじ様方から大変に謎な扱いをされた。
しかもコーリーが片時も離してくれないしお手洗いすら「僕の恋人は逃亡癖があるので」とか言って付き添ってくるので、こちらを睨んでくる美女や美少女とは接触する暇もなかった。
そして散々お偉いさん……宰相とか大臣とか団長とか、明らかに普通じゃない肩書の御仁に挨拶が終わると、コーリーはさっさと私を連れて馬車に飛び乗って帰った。
「早く家に帰ってダンスしよう!」
「なんでよ!帰るなら早く脱ぎたいんだけど!?」
「そんなに綺麗なカミラ、人に見せるのはもったいない!でももう少し見たいし密着して踊りたいよ!」
「嫌よ変態!」
「頼むよカミラ!この通りだ!」
「絶対いや!!」
まぁ結局、帰路の間続いた懇願に負けて一曲だけ踊った。気を遣った公爵家お抱え楽師のせいで、五曲分くらいの長さがあったけれど。
「もう二度と夜会には行きたくないからね!今後はお仕事に絡めたデートだけでたくさんよ!」
そう宣言した結果、夜会はなかった。しかし、その後も観劇だとか奇術師が来たとか庭園の花が満開だとか、理由をつけては家に招かれ、あちらこちらに連れ回された。その結果私とコーリーの交際については当然王都で話題となり、公爵家と男爵家の身分差については釣り合わないと口さがなく言われることが増えた。研究所でも研究室の外では、面と向かって言われることも多々あった。腹は立ったがその通りだし、まぁ、半年の辛抱だと堪えた。
そして目がまわるような日々を乗り越えて、ついでに研究もほぼ完成に近づき、とうとう迎えた今日である。
初夜だ。
私は今夜、コーリーの初夜不能……いや、初夜失敗の呪いを解かなければならない。
下手にいろいろ考えて構えるよりも、普通にしていた方が良い気がする。コーリーは私といる時はしごく自然体だから、一人でいる時みたいに元気に立ち上がってくれるだろう。多分。
「いや、私も本読んで知識は蓄えたけど、実践経験はないからなぁ。ちゃんとできるのかかなり不安だわ」
なにせこれだけが条件ともいえる、破格のお給料をいただけるお仕事である。
失敗したら大変だ。コーリーの卒業までという制限時間もあるから、のんびり延長というわけにもいくまい。頑張れ私、処女だけど。尻の穴まで舐め回す覚悟でいこう。
一人で密かに己を鼓舞して緊張していると、ガチャリとドアが開いた。
「カミラ」
「……コーリー」
現れたのはもちろんコーリーだ。部屋の外を歩いてきたからか、私とは違ってきちんとした厚みのある羽織りも被っている。
「とうとう初夜だ」
「そ、うね」
感極まったように呟くコーリーに、私は緊張に乾いた声で相槌を返す。
「ふふ、緊張してるの?」
「そ、りゃそうよ。初めてだもの。あなたはしてないって言うの?」
「うーん、してるけど……それより高揚と興奮が強くて、自制するので精一杯って感じかな」
「自制?…………え?」
軽やかな足取りでこちらにやってきたコーリーの言葉に首を傾げ、チラリと視線を落とした私は絶句した。
「……それ、なに?」
「これはもちろん、カミラのおかげで治ったアレだよ」
ガウンの隙間から天に向かって咆哮するように血管をビキビキに盛り上がらせて立ち上がっているコーリーのコーリーは、とんでもなく凶悪な面構えで、完全に臨戦態勢であった。
「アンタ、初夜不能の呪いとやらはどうしたのよ!?」
「だから言っただろう?」
「ぁ……」
火傷しそうな熱い眼差しに蕩ける笑みで、グッと私に近づいてきてコーリーは、私を抱き寄せると己の昂りをグリッと押し付けてきた。
「カミラなら大丈夫だと思うって」
この大嘘つき。
そう詰ろうと思ったのも束の間、私の罵倒は熱くて荒々しい口づけに溶けて、力無く消えた。
「月日が経つの早いわぁ……」
ペラッペラの下着みたいな寝巻きを着せられて、公爵家の侍女に足の爪の間まで綺麗に磨き上げられ、まるで娘を嫁に出すような顔をした侍女頭に
「お綺麗でございます、坊ちゃんもさぞお喜びでしょう」
とウルウルの眼差しで激励されて押し込まれた公爵令息の寝室。
「いやちょっと待って、本当に。なぜこうなった?」
馬鹿みたいに研究に没頭して研究室で寝泊まりし、気絶するように寝てはコーリーに公爵家へ運び込まれてせっせと介抱されること、この半年で何十回。侍女頭にはもはや娘のように思われているのかもしれない。まぁそれは良い。
「なんでみんなこんなに好意的なの?というかなんで歓迎ムード?おかしくない?未婚の二人が初夜ですよ?いいの?」
公爵家は頭がおかしいのかもしれない。いや、大事な坊ちゃんの不能を治すための一大計画だから、気合が入るのも当然なのか?
「でもなー、毎週のデートにも全面協力だったし、本当に意味不明だわ……」
コーリーとのデートに相応しい格好なんて我が家と私の財力では不可能である。だから最初の頃は身分差があっても可能な市場食べ歩き(研究試料を買いに行った帰り)とか、森にハイキング(研究試料の熊狩り)とか、比較的お手頃価格の宝石店を訪問してペアアクセサリー購入(魔石を買い取るついで)だったりとか、そうやってデートをこなしていた。
しかし。
「カミラお嬢様、本日は私どもにお任せくださいませ!」
「は?」
例によって例のごとく、研究室で白衣を寝袋代わりに寝ていたところを公爵家に連れ去られた私は、起きた瞬間目を爛々と輝かせた侍女集団に拘束された。
「え?え?え?」
「今からお嬢様を、王家の姫君にも負けない美少女にして差し上げますのでね!気合い入れて踏ん張ってくださいませ!」
「は!?いや、ちょ、えーー!?」
ずるずると早朝から風呂に入れられ磨き上げられ、よく分からない高そうな水とクリームと香水を振りかけられ、コルセットで締め上げられ、髪を複雑怪奇に結い上げられ、とんでもなく上等の砕いた宝石があしらわれたドレスを着せられ、耳と首と頭にコーリーの目の色のサファイアを飾られ、そして。
「綺麗だよカミラ!まるで女神だ!」
「……さようですか」
死んだ魚の目になった私が連れ出されたのは、大公様主催の夜会だった。
「いやぁ、パートナーがいないならウチの娘と、って大公閣下がうるさくてね!カミラが居てくれてよかったよ!」
もはやはしゃいでいると言っても過言ではないコーリーに、全身を満遍なく観察され、事細かに描写されながら賛美の限りを尽くされ、精神的に灰になった気分で辿り着いた夜会。
さぞ悲惨な目に遭うのだろうと……つまりは、三文小説のごとく、お綺麗で高貴な身分のお嬢様方に遠回しな悪口雑言を叩かれたり酒をかけられたり、周囲のお偉い人たちから嘲弄と侮蔑の目で見下されたり、まぁいろいろ散々な羽目になるだろうと思っていた。だが。
「おや、コーリー殿。そちらが噂の才媛ですかな?」
「コーリー殿が口説き落としたと言うご令嬢か」
「やっと恋人にしたと仰っていたのがそちらですか」
「なるほどお綺麗で賢そうだ。冷たい氷のような目で睨まれて、コーリー殿もお幸せそうですなぁ」
「なによりなにより、……まぁ若人の恋路にこれ以上口を挟むのはやめておきましょう」
「そうですな、人の閨事に口を出す者は女神に首を刎ねられて死にますゆえな」
「「「「はっはっはっはっは」」」」
と、挨拶回りでは年配のおじ様方から大変に謎な扱いをされた。
しかもコーリーが片時も離してくれないしお手洗いすら「僕の恋人は逃亡癖があるので」とか言って付き添ってくるので、こちらを睨んでくる美女や美少女とは接触する暇もなかった。
そして散々お偉いさん……宰相とか大臣とか団長とか、明らかに普通じゃない肩書の御仁に挨拶が終わると、コーリーはさっさと私を連れて馬車に飛び乗って帰った。
「早く家に帰ってダンスしよう!」
「なんでよ!帰るなら早く脱ぎたいんだけど!?」
「そんなに綺麗なカミラ、人に見せるのはもったいない!でももう少し見たいし密着して踊りたいよ!」
「嫌よ変態!」
「頼むよカミラ!この通りだ!」
「絶対いや!!」
まぁ結局、帰路の間続いた懇願に負けて一曲だけ踊った。気を遣った公爵家お抱え楽師のせいで、五曲分くらいの長さがあったけれど。
「もう二度と夜会には行きたくないからね!今後はお仕事に絡めたデートだけでたくさんよ!」
そう宣言した結果、夜会はなかった。しかし、その後も観劇だとか奇術師が来たとか庭園の花が満開だとか、理由をつけては家に招かれ、あちらこちらに連れ回された。その結果私とコーリーの交際については当然王都で話題となり、公爵家と男爵家の身分差については釣り合わないと口さがなく言われることが増えた。研究所でも研究室の外では、面と向かって言われることも多々あった。腹は立ったがその通りだし、まぁ、半年の辛抱だと堪えた。
そして目がまわるような日々を乗り越えて、ついでに研究もほぼ完成に近づき、とうとう迎えた今日である。
初夜だ。
私は今夜、コーリーの初夜不能……いや、初夜失敗の呪いを解かなければならない。
下手にいろいろ考えて構えるよりも、普通にしていた方が良い気がする。コーリーは私といる時はしごく自然体だから、一人でいる時みたいに元気に立ち上がってくれるだろう。多分。
「いや、私も本読んで知識は蓄えたけど、実践経験はないからなぁ。ちゃんとできるのかかなり不安だわ」
なにせこれだけが条件ともいえる、破格のお給料をいただけるお仕事である。
失敗したら大変だ。コーリーの卒業までという制限時間もあるから、のんびり延長というわけにもいくまい。頑張れ私、処女だけど。尻の穴まで舐め回す覚悟でいこう。
一人で密かに己を鼓舞して緊張していると、ガチャリとドアが開いた。
「カミラ」
「……コーリー」
現れたのはもちろんコーリーだ。部屋の外を歩いてきたからか、私とは違ってきちんとした厚みのある羽織りも被っている。
「とうとう初夜だ」
「そ、うね」
感極まったように呟くコーリーに、私は緊張に乾いた声で相槌を返す。
「ふふ、緊張してるの?」
「そ、りゃそうよ。初めてだもの。あなたはしてないって言うの?」
「うーん、してるけど……それより高揚と興奮が強くて、自制するので精一杯って感じかな」
「自制?…………え?」
軽やかな足取りでこちらにやってきたコーリーの言葉に首を傾げ、チラリと視線を落とした私は絶句した。
「……それ、なに?」
「これはもちろん、カミラのおかげで治ったアレだよ」
ガウンの隙間から天に向かって咆哮するように血管をビキビキに盛り上がらせて立ち上がっているコーリーのコーリーは、とんでもなく凶悪な面構えで、完全に臨戦態勢であった。
「アンタ、初夜不能の呪いとやらはどうしたのよ!?」
「だから言っただろう?」
「ぁ……」
火傷しそうな熱い眼差しに蕩ける笑みで、グッと私に近づいてきてコーリーは、私を抱き寄せると己の昂りをグリッと押し付けてきた。
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