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番外編
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コーリーにとって、カミラさんは特別な存在だ。
初めての友達というだけではない。
自分と対等で、そして自分を恐れも疎みもしないカミラさんは、コーリーにとって目新しく、そして眩しい存在だった。
幼い頃から天才で、周りから遠巻きにされてきたコーリーは、同じ立ち位置で会話ができる存在に飢えていた。
学園生活に大した期待を抱かず入学したコーリーにとって、カミラさんとの出会いはさぞや衝撃的だったことだろう。
己の思考速度について来られる稀有な存在であり、対等に切磋琢磨が出来る仲間。そんなものが得られるとは思ってもみなかったに違いない。しかも、カミラさんは分野によってはコーリーより勝る。
コーリーは知ってしまったのだ。自分よりも優れた存在に負けるということの快感を。
きっと、だからあんなにも執着したのだろう。
最初は幼い子供のような、友達としての独占欲だったかもしれない。けれど次第に、その感情は色を帯び、激しく相手を恋い、その全てを欲しいと願うようになってしまった。
今のコーリーは、どんな手を使っても、カミラさんを生涯手放したくないと強く決意しているのだ。
だから申し訳ないけれど、もうカミラさんには諦めて頂くしかない。
カミラさん自身にすら止められないのならば、コーリーにもカミラさんにも能力で劣る私たちには、できることなどないのだ。
「カミラさんがコーリーを見捨てないでくれて良かった」
「本当ですわね」
幸いにも、憎からず想ってくれているようなので、全力で支援するのでこのままコーリーの妻、そして魔の子とまで呼ばれたあの子の制御装置として、よろしくお願い申し上げたい。
カミラさんが真っ当な良識と道徳心と倫理観を持つ方でよかった。コーリーは下手をすれば躊躇いもなく国を壊せてしまう子だから。
「それにしても、結婚を同意してくれたのが奇跡ですわ。カミラさんが絶対了承しないと息を巻いていた、と侍女頭から聞いて私は心臓が止まりそうでしたのに」
「ある意味ではコーリーの努力の成果だろうな。アイツ、男娼館だけでなく、ミラー伯爵夫人やテラー侯爵夫人、ムーア男爵夫人のところにも修行に行っていたからなぁ」
「えっ!?そんなところに!?」
名前を挙げられたのは、何人もの老いも若きも種族もとりどりの男達を囲って、酒池肉林の限りを尽くし、退廃的かつ享楽的に過ごしていることで有名な女性達である。
性文化の発信地であるが性病の巣窟としても名高く、医師達や研究者達が時々調査に向かっているらしい。
「びょ、病気などはもらってきていないでしょうね!?そんなことになったら、カミラさんに合わせる顔がありませんわ!」
「コーリーの花嫁にしようとしている時点で、だいぶ合わせる顔はないが、まぁそこは大丈夫だろう」
さりげなく酷いことを言いながらも、夫は疲れたような笑いを浮かべて天を仰いだ。
「なにせアイツ、妻以外と性行為をしたら死ぬ呪いを自分にかけていたからな」
「は??」
「誰かに襲われたら大変だからとふざけたことを言って、家を出る前に玄関でかけていたんだ」
死ぬような呪いを?自分に?
さすがに意味が理解できず、私はぽかんと口を開けてしまった。動揺する私を憐れむように見て、夫は肩を落としてため息を吐いた。
「執務室にいたんだが、突如として悍ましい気配を感じて、慌てて飛び出したんだ。そうしたら玄関で、アイツが自分の股間に向けて毒々しい魔力を注ぎ込んでいたから……もう、ね。腰が抜けたよ」
「えええ!?」
そんな馬鹿な!?
死ぬ呪いを、気軽に玄関で!?
コートに防水魔法でもかけるように!?
誰かを巻き込んだらどうするつもりなのか!!
絶句してしまい、言葉が出ない。
「だから、死んでないってことは純潔を保って帰ってきたんだろうさ」
「なんていう極端な子なの!!」
「今更だがな」
呻いて頭を抱える私を、夫は諦観に似た優しい目で見守っている。夫は現場を見たのだから、きっとその後呪いの痕跡が消えるように、せっせと換気や掃除もしてくれたのだろう。使用人が誰も恐慌状態になっていないということは、夫が後始末をしたからだ。公爵ともあろう人が、なんて苦労人なのだろうか。
「コーリーは、例の快楽至上主義者なご婦人方の元でも、おそらくは講義を受けたり、彼女達の愛人達との営みを見学して学習してきただけだろう。なにせあの子は見ただけで大抵のことは習得できるからな」
「……はぁ。天才を変なところで発揮していそうで嫌ですわ」
妙な信頼を示す夫に複雑な心境で同意する。
「健全とは言い難いが犯罪ではないから良しとしよう」
「はぁ……」
息子の閨事情など知りたくなかった。
本当に、あの子の母親になってからため息が止まらない。
毎日大騒動で気の休まる暇がないのだ。
おかげで退屈とは無縁だけれども。
初めての友達というだけではない。
自分と対等で、そして自分を恐れも疎みもしないカミラさんは、コーリーにとって目新しく、そして眩しい存在だった。
幼い頃から天才で、周りから遠巻きにされてきたコーリーは、同じ立ち位置で会話ができる存在に飢えていた。
学園生活に大した期待を抱かず入学したコーリーにとって、カミラさんとの出会いはさぞや衝撃的だったことだろう。
己の思考速度について来られる稀有な存在であり、対等に切磋琢磨が出来る仲間。そんなものが得られるとは思ってもみなかったに違いない。しかも、カミラさんは分野によってはコーリーより勝る。
コーリーは知ってしまったのだ。自分よりも優れた存在に負けるということの快感を。
きっと、だからあんなにも執着したのだろう。
最初は幼い子供のような、友達としての独占欲だったかもしれない。けれど次第に、その感情は色を帯び、激しく相手を恋い、その全てを欲しいと願うようになってしまった。
今のコーリーは、どんな手を使っても、カミラさんを生涯手放したくないと強く決意しているのだ。
だから申し訳ないけれど、もうカミラさんには諦めて頂くしかない。
カミラさん自身にすら止められないのならば、コーリーにもカミラさんにも能力で劣る私たちには、できることなどないのだ。
「カミラさんがコーリーを見捨てないでくれて良かった」
「本当ですわね」
幸いにも、憎からず想ってくれているようなので、全力で支援するのでこのままコーリーの妻、そして魔の子とまで呼ばれたあの子の制御装置として、よろしくお願い申し上げたい。
カミラさんが真っ当な良識と道徳心と倫理観を持つ方でよかった。コーリーは下手をすれば躊躇いもなく国を壊せてしまう子だから。
「それにしても、結婚を同意してくれたのが奇跡ですわ。カミラさんが絶対了承しないと息を巻いていた、と侍女頭から聞いて私は心臓が止まりそうでしたのに」
「ある意味ではコーリーの努力の成果だろうな。アイツ、男娼館だけでなく、ミラー伯爵夫人やテラー侯爵夫人、ムーア男爵夫人のところにも修行に行っていたからなぁ」
「えっ!?そんなところに!?」
名前を挙げられたのは、何人もの老いも若きも種族もとりどりの男達を囲って、酒池肉林の限りを尽くし、退廃的かつ享楽的に過ごしていることで有名な女性達である。
性文化の発信地であるが性病の巣窟としても名高く、医師達や研究者達が時々調査に向かっているらしい。
「びょ、病気などはもらってきていないでしょうね!?そんなことになったら、カミラさんに合わせる顔がありませんわ!」
「コーリーの花嫁にしようとしている時点で、だいぶ合わせる顔はないが、まぁそこは大丈夫だろう」
さりげなく酷いことを言いながらも、夫は疲れたような笑いを浮かべて天を仰いだ。
「なにせアイツ、妻以外と性行為をしたら死ぬ呪いを自分にかけていたからな」
「は??」
「誰かに襲われたら大変だからとふざけたことを言って、家を出る前に玄関でかけていたんだ」
死ぬような呪いを?自分に?
さすがに意味が理解できず、私はぽかんと口を開けてしまった。動揺する私を憐れむように見て、夫は肩を落としてため息を吐いた。
「執務室にいたんだが、突如として悍ましい気配を感じて、慌てて飛び出したんだ。そうしたら玄関で、アイツが自分の股間に向けて毒々しい魔力を注ぎ込んでいたから……もう、ね。腰が抜けたよ」
「えええ!?」
そんな馬鹿な!?
死ぬ呪いを、気軽に玄関で!?
コートに防水魔法でもかけるように!?
誰かを巻き込んだらどうするつもりなのか!!
絶句してしまい、言葉が出ない。
「だから、死んでないってことは純潔を保って帰ってきたんだろうさ」
「なんていう極端な子なの!!」
「今更だがな」
呻いて頭を抱える私を、夫は諦観に似た優しい目で見守っている。夫は現場を見たのだから、きっとその後呪いの痕跡が消えるように、せっせと換気や掃除もしてくれたのだろう。使用人が誰も恐慌状態になっていないということは、夫が後始末をしたからだ。公爵ともあろう人が、なんて苦労人なのだろうか。
「コーリーは、例の快楽至上主義者なご婦人方の元でも、おそらくは講義を受けたり、彼女達の愛人達との営みを見学して学習してきただけだろう。なにせあの子は見ただけで大抵のことは習得できるからな」
「……はぁ。天才を変なところで発揮していそうで嫌ですわ」
妙な信頼を示す夫に複雑な心境で同意する。
「健全とは言い難いが犯罪ではないから良しとしよう」
「はぁ……」
息子の閨事情など知りたくなかった。
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