俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ

文字の大きさ
30 / 53

お姫様抱っこと保健室。

しおりを挟む
 日も高くなってきた頃、体育祭は午前中最後の盛り上がりを迎えていた。

 行われている競技は2年生種目の騎馬戦。
 それぞれの軍でいくつかの騎馬を構成し、騎手のハチマキを巡って争う団体戦だ。
 2年生にとっては目玉とも言える競技である。

 すでに男子の騎馬戦は終結している。俺も騎手の一人として奮闘したつもりだが、親衛隊を中心に構成された紅軍に惨敗を喫する結果に。
 
 ユキの筋トレメニューを実直にこなした親衛隊のフィジカルが異常なレベルに達していたのだ。

 あれは無理だ。勝てるビジョンが湧かなかった。

 ということで、今は女子の騎馬戦が行われている。
 応援団の星乃率いる白軍にはなんとか勝って欲しいところである。


 そんな女子騎馬戦も、すでに最終戦の終盤。現在のスコアは一勝一敗だ。これに勝った軍の勝利となる。

 残っている騎馬は両軍合わせて3騎。
 白軍が2騎で、紅軍が1騎だ。
 そのうち白軍の1騎では星乃が、紅軍ではユキが、それぞれ騎手をしている。

 白軍としてはタイムアップを待てば勝てる状況だが、星乃たちはユキの騎馬を倒しに向かった。全ての騎馬を落とした方が点数は多く加算されるのだ。

 しかしハチマキを渡さないユキの粘りに、会場、選手共々ヒートアップしてきている。

 混戦を極めており、それぞれの騎馬にも疲れが見え始めた。



 そんな時、それは起こった。



 ユキの騎馬が足を滑らせ、バランスを崩した。白軍の騎馬の方へのしかかり、巻き込まれるようにしてそちらもバランスを崩す。

 危ない……!
 
 直感的にそう思った。
 そう思ったとき、いやその直前には俺の身体は動き出していたと思う。

 応援席からでは決して、ユキのピンチに間に合いはしないのに。

 騎馬が完全に崩れて、ユキは宙に放り出された。そして地面へ落ちる。

 俺は走るが、やはりまるで間に合わない。

 が、ユキは持ち前の運動神経の良さでしっかりと受け身を取った。

 一瞬の安心。

 ここまでは良かった。
 その直後、白軍の騎馬もひとつが崩れ、騎手が落ちる。

 ——ユキの真上に。

「いつっ……!」

 砂埃が舞い、ユキの小さな呻き声が聞こえた気がした。しかし幸い、全身が衝突するということはなかったように見える。

 踏まれたのは足だろうか?
 足首のあたりお尻で思い切り踏まれた形だ。
 ユキは足を押さえていて蹲っている。立てないらしい。


「————ユキ!!」


 試合中にも関わらずグラウンド中央に駆け込み、俺は叫ぶ。
 制止させようとする声が少しだけ聞こえた気がした。


「大丈夫か!?」

「ヒロ、さん……?」

 俺はユキの元へしゃがみ込む。

「あ、あたし、タンカ持って来るね!」

 星乃はそう言って保険室の方へ走り出そうとする。星乃はすでに騎馬から降りていた。

 だが、そんな星乃を俺は呼び止める。

「星乃、ありがとう。でも必要ない」

「必要ないって……」

 疑問を投げかけようとする星乃を背に、俺はユキを優しく抱え上げた。

 世間一般で言う、お姫様抱っこだ。

 ユキが立てない以上、こうするしかないだろう?

「きゃっ……」

 ユキがまた小さく、でも今度は少し高揚したような。そんな声を上げる。

「俺が運ぶから。問題ないよ。星乃」

「そ、そっかぁ~、そうだよねぇ……」

 そこでやっと、切羽詰まった表情をしていた星乃がホッとしたように笑った。

「ユキ、痛くないか?」

 俺はゆっくり歩きながら、ユキに問いかける。

 それに対してユキはなんだか、もごもごとした様子で顔を赤くして答える。

「は、はい。大丈夫です……けど……」

「けど?」

「さすがに、恥ずかしいです……」

 ユキは目を伏せる。

 応援席の生徒、観客、全ての人が注目しているんだ。「ひゅーひゅー」とか、囃し立てるような声まで聞こえる。親衛隊が騒ぐ声も。実況も何やらテンションが上がった様子で何かを叫んでいる。

 俺だって恥ずかしくないわけがない。

 だけど幼馴染が、ユキがピンチならすぐに駆けつける。そんなの当たり前じゃないか。昔、俺がそう言ったんじゃないか。

 本当は、怪我なんてする前に助けたかったけど。さすがにそれは出来ないから。俺はなんでも出来るスーパーヒーローなんかではないから。
 
 これくらいでなんとか、許してほしい。

「もぉ……今日は敵同士だって。さっき言ったばかりですよ?」

「そんなの関係ないって。俺はいつでも、例え敵だったとしてもユキを助けるよ」

「そう……ですか……」

 ユキは純白の顔をさらに真っ赤に染める。目は全く合わせてくれない。子供みたいに、身も小さくしていた。

「抱いてあげてる時はあんなに可愛いのに……こんなときばっかりカッコよくなるなんてズルい……」

「え?」

「なんでもないです。それより、早く運んでください。じゃないと恥ずかしくて死んじゃいます」

「お、おう……?」

 早口で捲し立てるユキに首を傾げながらも、俺は返事をする。
 それからユキの怪我を刺激しない程度に、小走りでグラウンドを後にした。

 先ほどのユキの呟きは、あまりにも小さすぎて俺にはほとんど聞き取ることが出来なかった。

 

✳︎ ✳︎ ✳︎



 午前の部が終わり、昼休み。

 午後の最初は応援合戦である。
 そのため大半の生徒は早々にお弁当を掻き込み、最後の練習に短い昼休みを充てることになる。
 
 そんな中、俺は保険室いた。

 ベッドにはユキが座っていて、俺は脇の椅子に腰掛けている。

 2人でゆっくり、お弁当を食べていた。
 ユキは俺の分のお弁当も作ってくれていた。
 敵同士と言ったくせに。お互い様である。

 俺たち以外に人はいない。
 また、ふたりきりの時間だ。

 ゴールデンウィークまではそれが普通だったのに、今は何故か貴重なことのように思えた。

「応援合戦の練習をしなくていいんですか? ヒロさん」

「いいよ。もう身体が覚えてるから」

「いっぱい練習してましたもんね。本番を見るのが楽しみです」

「見てたのか?」

「ちょっとだけですよ。練習の合間に覗いてました」

 そう言うとユキは俺のロボットダンスを思い出したらしく、少し顔を綻ばせた。
 
「練習の成果を見せてやるから。覚悟しておけよ」

「はい。私はもう参加できないですが、しっかり見てますね」

 ユキの右足首にはテーピングがされていた。軽い捻挫であるらしい。2、3日で腫れは引くらしいが、これ以上体育祭に参加することはできない。

「勝負の件も、これでは私の負けですね」

「そうなのか?」

「私の棄権により、ヒロさんの不戦勝です。私、ヒロさんにどんなお願いされちゃうんでしょう。欲望の限りを尽くされちゃうんでしょうか」

「は、はぁ!? 欲望って……そんなことしねえから!」

 俺は慌てて否定する。

「どうしたんですか? そんなこと、とはどんなことでしょう。何を想像したんですか? ヒロさん」

「いや想像もしてねぇから!」

「どうやらヒロさんはすっごく溜まっているみたいですね。何でもえっちなことに繋げて考えてしまうくらいに」

「それはおまえなんだよなぁ……」

 いや、俺も確かに最近は忙しかった上にユキにも会えなくて……ってそんなことはどうでもいい!

「でもヒロさん。また、ふたりきりですよ? しかも、保険室です」

「だ、だからなんだよ」
 
 ユキはずいっとこちらに身体を寄せる。にやっと目を細めて、誘惑するような。そんな小悪魔的な表情だ。

 そして俺の耳元にまで顔を近づけ、艶かしい声で告げる。



「————えっちなこと、仕放題ですね」



 言われた瞬間、心臓が跳ねた。バクバクと、痛いくらいに心臓が鼓動を伝える。

 いつもなら、軽く受け流せるはずなのに。
 理性が、吹き飛んでしまいそうだった。

 その声が、脳を蕩けさせるかのように頭の中で広がって。ユキの顔がいつもよりも、もっともっと綺麗に、美しく見えて。

 その心を、身体を、貪ってしまいたくなる。

 身体が言うことを聞かない。ユキの肩に両手を乗せる。ダメだ。ダメなのに。

 目の前にユキの整った顔があった。水晶のような瞳があった。銀色が視界をくすぐった。

「ヒロさん……」

 ユキが待ち構えるように。そのときを待つお姫様のように。目を閉じる。

 もう、止まれないかもしれない。

 だけど、俺は、俺は……。



 ————ガラガラガラッ。



「藤咲さーん? 足、どんな感じ~?」



「「————っ!!??」」



 理性が蒸発する寸前、保険室の扉が開く音で俺は我に帰った。

 ユキと2人、一気に身体が跳び上がるくらい驚いて。慌てて距離をとった。

 そして何でもないふうを装って声の主に返事をする。何を言ったのかは覚えていない。

 心臓の鼓動は未だ鳴り止まない。と言っても、もはやユキの誘惑によるドキドキか、誰かに見られそうになったことによるドキドキか分からないのだが。


「……邪魔が入っちゃいましたね。ヒロさん」

「え? あ、ああ……そう……だな」

「続きはまた今度、ですね」



 昼休みも終わりが近づき、俺はユキを置いて保険室を後にする。

 俺はあのとき、何をしようとしていた?
 あと一歩、誰かの介入が遅かったら俺はきっと……。

 ダメだ。それだけはあってはならない。いくらユキが求めてこようとも、俺にはまだ……。

 両の頬を思い切り叩く。

 大丈夫。次からはいつも通りやれる。

 俺はひとつの思いを重ねて、応援合戦へ向かった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。

久野真一
青春
 羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。  そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。  彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―  「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。  幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、  ある意味ラブレターのような代物で―  彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。  全三話構成です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...