人狼坊ちゃんの世話係

Tsubaki aquo

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エピソード21

♡麗しき僧服の男(5)

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「ん……」

 触れるだけの口付けを2度、3度と重ねれば、
 それは次第に激しさを増していく。

「ん、んんっ、ん……はっ……ユリア……」

 角度を変えた拍子に唇をこじ開けられ、
 ザラついた舌が侵入してきた。

 抱きしめられているせいで身動きも取れず、
 ねっとりと口中を貪られる。

「バンさん……好き……好きだよ……」

 くちゅくちゅと水音を立てて、舌の表面を擦り合わせた。
 口の端から溢れかけた唾液を啜れば、
 オレの背に触れていたユリアの手が尻に移動する。

「んっ……こら……どこ、触って……」

 身を捩れば、熱く硬いものが太腿の辺りに押し付けられた。

「バカ……なに、おっ勃ててんだよ……」

「バンさんだって、硬くなってるでしょ……」

 息継ぎの合間に短く会話を挟んで、
 再び唇を重ねる。

 2つの欲望がズボン越しに触れ合うと、
 自然と腰が揺れた。

「バンさん……中、入りたい。ダメ?」

 銀糸を引いて唇を離し、ユリアが掠れる声で囁く。

「ダメに決まってんだろ……」

 オレは彼の肩口に額をくっつけて答えた。
 ベッドを汚すわけにはいかないし、壁だって……薄過ぎる。

「ですよね」

 ユリアがしょんぼりと頷いた。
 そんな彼を前に、オレとしては何もしないわけにはいかず、
 というか、オレだって触れたいわけで、
 溜息と共にグリグリと額を押し付けた。

「バンさん?」

「……口でなら、してやる」

「え……」

 ユリアがまじまじとオレを見下ろしてくる気配。
 やや間があってから、ユリアは手を上げる勢いで口を開いた。

「そ、それなら、僕もバンさんの舐めたいです!」

「それはダメ」

「ええっ、何でですか!?
 僕ばっかり気持ちいいのイヤですよ!」

「ワガママ言うなら、このまま寝るぞ。いいのか?」

 ユリアの拙い舌遣いに翻弄されたら、
 我慢が効かなくなる。

 断固とした態度を貫けば、
 彼は子供みたいに「うー……」と唸った末、短く溜息をついた。

「……分かりました」

「よし。じゃあ、オレの顔のとこまで来い」

「えっ、あ、あの……?」

 体を起こしたユリアが、困ったように眉根を下げる。

「早く。跨げ」

「こ、こうですか?」

「そうそう」

 オレはユリアのズボンをくつろげた。

 目の前に現れた屹立を手で支え、
 オレはその先端をペロリと舐める。

「……っ!」

「この体勢のまま、挿れてみ」

 根本を扱きながら告げれば、
 ユリアがギョッとした。

「ま、待ってよ、そんなことしたら、バンさん苦しいですよ!?」

「こっちのが普通に舐めるより、こぼしずらいんだよ」

「こぼしずらいって……でも……」

 オレが大口を開けて、見せつけるように裏筋を舐め上げる。

 顔を持ち上げ、パクリと先端を口に含めば、
 ユリアは観念したのか、躊躇いがちに腰を進めた。

「んぐっ……」

 熱い肉欲がゆっくりと口中に埋まっていく。
 オレは喉奥を開くようにして、それを受け入れた。
 凶悪に太くてデカい肉欲で、口の中がいっぱいになる。

「バンさん。平気? 痛くないですか?」

「ん、んむ、んんっ……へーき、だ……
 無理なら足叩いて、ん、合図するから……」

「わ……分かりました……」

 ベッドの上の部分を掴んで、
 ユリアが腰を前後させ始める。

 恐る恐る、労るように。

「バンさん……」

 目を閉じて、竿肌に歯を立てないよう気を付けていると、ふいに名前を呼ばれた。

「ん……? どーひた?」

 ユリアの喉が上下する。
 彼は唇を戦慄かせてから、首を振った。

「……いえ」

 大きく熱い手が、優しくオレの髪を撫でる。
 オレはユリアの腰を抱き寄せた。

「ん、んんっ、ん……」

「バンさんの、口の中……凄く、ねっとりしてて、気持ちいいよ……」

 彼の呼吸が荒さを帯びていくに従って、
 次第に遠慮や、躊躇いは薄れていき……

* * *

 腰が止まらない。
 少しでも気を抜いたら、バンさんの喉が詰まってしまうというのに。

「んっ、ぐっ……ぅ、んんっ」

 どうしよう。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 頭の中が、意味を持たない言葉で埋め尽くされている。

「バンさん……バンさん……っ」

 限界に広げられた小さめの口を、
 肉欲が蹂躙している。

 無抵抗な相手の顔に跨がって、こんなことをするなんて、
 背徳的でなくて、なんだろう?

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 体が燃えるように熱かった。
 興奮し過ぎて、視界が涙で潤んでいた。

「バンさん、痛くない? 苦しくない?」

 何度も何度も問いかけながら、
 僕は、彼の限界を探っていた。

 彼が足を叩いて止まれと言ったとしても、
 それに従える自信なんてなかった。

 それでも、僕は気遣わしく声をかける。
 そして、どんどんエスカレートしていく。

「大丈夫? 本当に……?
 無理だったら、すぐに言って下さいね……」

 バンさんの頬は苦しいせいなのか上気していた。
 目尻は涙で濡れ、口の端から垂れる唾液が、艶やかに細い顎を伝う。

 たまらなかった。

 僕は、今、彼を支配している。
 そのことが心地良く、全身の血が沸騰するかのように気持ちが昂ぶる。

「ん、んぶっ、ぐっ……はっ、ぁ……」

「バンさん」

 名前を呼ぶと、彼は潤んだ目で僕を見上げた。
 その瞳には僕だけが映っていて、とても安心する。

「そろそろ、出そうです……」

 出せよ、と促すように、バンさんは僕の腰を撫でた。

「うん……」

 僕は、彼の頭を抑えると、腰の動きを速めた。
 腰を抱く彼の指にグッと力が入る。

「ん、くっ……ぁ、バンさん、バンさんっ、イクよ、イッ……」

 体が硬直し、下腹部にわだかまっていた熱が勢いよく弾ける。
 形の良いバンさんの眉が、苦しげに寄った。

「バンさん。……全部、飲んでね」

 バンさんの細い喉が何度も上下する。

 長い吐精だった。
 えずいた拍子に、逆流したのだろう白濁が、
 バンさんの鼻から溢れる。

 僕は腰を引かずに、親指の腹でそれを拭い、
 彼を見下ろした。

 彼は何もかもを見透かすように、目を細めた。
 微笑みかけてくれたのだと思う。

 その瞬間、雷が落ちたみたいに体が打ち震えた。

 それは、喉がカラカラになるほどの衝撃。

 僕は受け入れられている。
 僕は愛されている。

 大丈夫。
 大丈夫だ。

* * *

 翌日の朝、オレとユリアはスヴェンと一緒に、
 街道の村を出た。

 彼の案内は的確で、
 オレたちは予定よりもずっと早くにメティスの街に到着した。

 街は他と同様、為政者が政務を執り行う城を中心に、
 放射線状に商業区や、居住区が広がり、
 昔の名残か、1番外側は高い壁に囲まれていた。

 町の出入りは、日中のみと制限があるようだ。
 厳めしい門番が見守る中、馬を進めれば、
 目の前に、白い壁が印象的な家々が見えてきた。

 高い石造りの建物だ。
 祭りの期間だからだろうか、道には屋台が並び、
 街全体が花や旗で色鮮やかに飾り立てられている。

「凄い! 凄い凄い凄い!!
 バンさん、見て下さいよ! 人がたくさんいますよ!!」

「メティスはこの地方じゃ1番大きな街ですからね」

 スヴェンが馬上で誇らしげにする。
 ついで、彼はオレの方を見て小首を傾げた。

「どうかしたんですか? 怖い顔をして」

「ああ、いや……」

 オレは無理やり笑みを浮かべると、何でもないと頭を振った。

 けれど、動揺はすぐには消せない。

 手綱を握る手に汗が滲んでいる。
 探しあぐねて諦めた記憶にまさに今、到達したのだ。

 メティス。
 知識と祈りの街。

 ――教会の、領土だ。
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