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chapter2
step.9-4 腰痛とDIY
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* * *
その日の夜。
ソウさんと帝人さんが仕事から帰ってくると、デスクのデザインについて話し合いが行われた。
「……なるほどね。それで、作るってことになったんだ」
と、コーヒーをすすりながら帝人さん。
「楽しそうだろ?」
「そうだね。でも、どこで作るつもりなの? まさか室内じゃないでしょ?」
「管理人さんに相談したら、駐車場の空きスペースでやっていいよって」
「そう」と、帝人さんはニコニコと答える。
ニャン太さんはソファを立ち上がった。
「えーえー、それではみなさん静粛に。第1回デンデンのデスクデザイン会議を始めます!」
第1回ということは、第2回もあるんだろうか……
「帝人たちが帰ってくるまでに、類ちゃんとボクでデザイン考えておきました。こちらです!」
じゃん! と、勢いよく、彼は簡素なデスクの図面が記されたA3用紙を広げた。
何故か、天板にくっつく脚の部分に絶妙に可愛くない猫と犬の顔が描かれている。
「みなさんのキタンのないご意見をヨロシクお願いしまーす」
「ええと、この脚の部分の模様はどうなってるのかな?」
「さすが帝人、お目が高い!
このデスクのポイントなんだけど、彫刻しようかと思ってるんだ」
「オシャレだろ? この龍と虎がぐわっと口を開けてる感じ」
「ああ、これネコとイヌじゃなかったんだ……」
帝人さんが僕と同じような感想を口にする。
――じゃなくて!
「普通のデスクでいいですってば……っ」
進言するとニャン太さんと類さんが不思議そうな顔をした。
あ、ダメだこれ。僕の普通と彼らの普通が重ならない。
「それで、色は何にする予定?」
「金と黒」「ピンク」
帝人さんの問いにふたりがハモる。
それからこめかみをピクピクさせて、彼らは顔を見合わせた。
「お前な……ピンクはねぇつったろ。ガキかよ」
「類ちゃんこそ色のチョイスおかしいでしょ。どこの田舎のヤンキー?」
「あ?」
「なに」
どうしよう。どっちの色もイヤだ。
というか、こんなオシャレな部屋に住んでてどうしてそんな色の選択になるんだ?
「あ、あの、ですから普通のデスクに……」
「まだ色は決まっていない、と。木材の種類も決まってないのかな?」
睨み合うふたりを物ともせず、帝人さんは話を進める。
「まだ、だな。広葉樹なんだろうけど、決めかねてる」
「はーい。ボクはちょっと目をつけてるのがありまーす」
類さんから体を離すと、フフンとニャン太さんは鼻を鳴らした。
「マホガニーとかどうかな? 調べたら、なんかいい木って書いてあったんだ」
「初めてのDIYでマホガニーを加工するって無謀じゃない?」
「じゃあ、ウォールナット?」
「同じかな」
帝人さんは足の間で手を組んで、うん、と低く唸った。
「もっと手軽で、かつ、長持ちするものにしたらどう?」
「手軽で、長持ち……っつーと、ヒノキとか? 確か法隆寺もヒノキだったよな?」
「どれだけ長持ちさせる気ですか!? だから、ほんと、普通のでいいんですってば……!」
えーと不服そうな類さん。
「まあでも、ヒノキはよく聞くよ。香りもいいし、木目もキレイだし。……ソウは? 何か意見ある?」
ソウさんが悩ましげに空になったグラスを見つめる。ついでボソリと口を開いた。
「…………和柄とか」
「和柄っつーと……寄木細工とか?」
「寄木細工? ってなに?」
「箱根の土産屋に売ってるやつだよ」
類さんの言葉にニャン太さんがポケットから携帯を取り出す。
それからあーっと声を上げた。
「これ、知ってる知ってる! お父さんがこんな箱買ってきてくれたことあったよ! うーん、この模様を天板にしたらすっごくキレイだね」
「だろ?」
「そいえばボクが貰った箱、なんかいろいろガチャガチャして開けなくちゃいけなかったんだけどさ、それを机に組み込んだりできないかな?」
「からくり細工か。いいじゃん。やろーぜ、それ」
怒濤のトークに僕はあたふたとふたりを見比べた。
引き出しは……普通に開けたい。
「じゃ、さっそく詳しそうな知り合いに聞いてみるか」
「箱根の人?」
「そう。寄木細工の職人さん。前に小説の取材で出掛けた時、色々と世話になったんだよ」
「いいね~! 旅行だね!」
「最近、行ってなかったもんな。箱根なら近いし、明日にでも行くか」
話がどんどん大きくなっていく。
下手したら初めに買おうとしていたデスクの何十倍もお金がかかるんじゃないか……
「あの、類さん」
思い切って声を掛けると、類さんはニコニコして僕を見た。
「伝は箱根行ったことあるか?」
「あ、ありませんけど……ーーって、そうではなくてですね。今はデスクの」
「期待してていいぞ。いい旅館知ってるから」
「ご飯も美味しいし、岩盤浴もあるんだよ~」
…………この人たち自由過ぎないか!?
「伝くん」
がく然としていると、ポンと帝人さんに肩を叩かれた。
「少ししたら落ち着くから、お菓子でも食べながら待っていよう。コーヒーのおかわりいる?」
「あ、はい……いただきます……」
それからしばらくして……
帝人さんの理路整然とした説得のお陰で、デスクはかなりシンプルなデザインに落着したのだった。
その日の夜。
ソウさんと帝人さんが仕事から帰ってくると、デスクのデザインについて話し合いが行われた。
「……なるほどね。それで、作るってことになったんだ」
と、コーヒーをすすりながら帝人さん。
「楽しそうだろ?」
「そうだね。でも、どこで作るつもりなの? まさか室内じゃないでしょ?」
「管理人さんに相談したら、駐車場の空きスペースでやっていいよって」
「そう」と、帝人さんはニコニコと答える。
ニャン太さんはソファを立ち上がった。
「えーえー、それではみなさん静粛に。第1回デンデンのデスクデザイン会議を始めます!」
第1回ということは、第2回もあるんだろうか……
「帝人たちが帰ってくるまでに、類ちゃんとボクでデザイン考えておきました。こちらです!」
じゃん! と、勢いよく、彼は簡素なデスクの図面が記されたA3用紙を広げた。
何故か、天板にくっつく脚の部分に絶妙に可愛くない猫と犬の顔が描かれている。
「みなさんのキタンのないご意見をヨロシクお願いしまーす」
「ええと、この脚の部分の模様はどうなってるのかな?」
「さすが帝人、お目が高い!
このデスクのポイントなんだけど、彫刻しようかと思ってるんだ」
「オシャレだろ? この龍と虎がぐわっと口を開けてる感じ」
「ああ、これネコとイヌじゃなかったんだ……」
帝人さんが僕と同じような感想を口にする。
――じゃなくて!
「普通のデスクでいいですってば……っ」
進言するとニャン太さんと類さんが不思議そうな顔をした。
あ、ダメだこれ。僕の普通と彼らの普通が重ならない。
「それで、色は何にする予定?」
「金と黒」「ピンク」
帝人さんの問いにふたりがハモる。
それからこめかみをピクピクさせて、彼らは顔を見合わせた。
「お前な……ピンクはねぇつったろ。ガキかよ」
「類ちゃんこそ色のチョイスおかしいでしょ。どこの田舎のヤンキー?」
「あ?」
「なに」
どうしよう。どっちの色もイヤだ。
というか、こんなオシャレな部屋に住んでてどうしてそんな色の選択になるんだ?
「あ、あの、ですから普通のデスクに……」
「まだ色は決まっていない、と。木材の種類も決まってないのかな?」
睨み合うふたりを物ともせず、帝人さんは話を進める。
「まだ、だな。広葉樹なんだろうけど、決めかねてる」
「はーい。ボクはちょっと目をつけてるのがありまーす」
類さんから体を離すと、フフンとニャン太さんは鼻を鳴らした。
「マホガニーとかどうかな? 調べたら、なんかいい木って書いてあったんだ」
「初めてのDIYでマホガニーを加工するって無謀じゃない?」
「じゃあ、ウォールナット?」
「同じかな」
帝人さんは足の間で手を組んで、うん、と低く唸った。
「もっと手軽で、かつ、長持ちするものにしたらどう?」
「手軽で、長持ち……っつーと、ヒノキとか? 確か法隆寺もヒノキだったよな?」
「どれだけ長持ちさせる気ですか!? だから、ほんと、普通のでいいんですってば……!」
えーと不服そうな類さん。
「まあでも、ヒノキはよく聞くよ。香りもいいし、木目もキレイだし。……ソウは? 何か意見ある?」
ソウさんが悩ましげに空になったグラスを見つめる。ついでボソリと口を開いた。
「…………和柄とか」
「和柄っつーと……寄木細工とか?」
「寄木細工? ってなに?」
「箱根の土産屋に売ってるやつだよ」
類さんの言葉にニャン太さんがポケットから携帯を取り出す。
それからあーっと声を上げた。
「これ、知ってる知ってる! お父さんがこんな箱買ってきてくれたことあったよ! うーん、この模様を天板にしたらすっごくキレイだね」
「だろ?」
「そいえばボクが貰った箱、なんかいろいろガチャガチャして開けなくちゃいけなかったんだけどさ、それを机に組み込んだりできないかな?」
「からくり細工か。いいじゃん。やろーぜ、それ」
怒濤のトークに僕はあたふたとふたりを見比べた。
引き出しは……普通に開けたい。
「じゃ、さっそく詳しそうな知り合いに聞いてみるか」
「箱根の人?」
「そう。寄木細工の職人さん。前に小説の取材で出掛けた時、色々と世話になったんだよ」
「いいね~! 旅行だね!」
「最近、行ってなかったもんな。箱根なら近いし、明日にでも行くか」
話がどんどん大きくなっていく。
下手したら初めに買おうとしていたデスクの何十倍もお金がかかるんじゃないか……
「あの、類さん」
思い切って声を掛けると、類さんはニコニコして僕を見た。
「伝は箱根行ったことあるか?」
「あ、ありませんけど……ーーって、そうではなくてですね。今はデスクの」
「期待してていいぞ。いい旅館知ってるから」
「ご飯も美味しいし、岩盤浴もあるんだよ~」
…………この人たち自由過ぎないか!?
「伝くん」
がく然としていると、ポンと帝人さんに肩を叩かれた。
「少ししたら落ち着くから、お菓子でも食べながら待っていよう。コーヒーのおかわりいる?」
「あ、はい……いただきます……」
それからしばらくして……
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