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chapter2
step.9-5 腰痛とDIY
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* * *
翌週末、類さんたちは朝から駐車場のスペースを借りてD IYに取り掛かった。
僕も一緒に手伝った。ふたりに任せるのが不安だったということではなくて、単純に興味があったからだ。
「な、なんとか……形になりましたね……」
「そうだな……」
やっとデスクらしい形に組み立て終えた頃には、全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
馴れない作業は僕が想像していたものよりも遥かに重労働で、面取りひとつするだけでとても時間がかかった。
今は接合面に塗ったボンドが乾くのを待ちつつ、休憩中だ。
「凄い、凄い! めっちゃデスクだ!」
歓声を上げながら、ニャン太さんが色んな角度からデスクの写メを撮る。
それを受けて壁に寄りかかった類さんがぐったりと口を開いた。
「デスク作ったんだから、当たり前だろうが……」
天井を仰いだ彼のこめかみから、汗が頬へと伝う。
首に下げたタオルで顔を拭う仕草に、僕は知れず目を奪われていて、慌てて視線を逸らした。
「でも、なんとか完成して安心したわ。それに超絶いい経験になったしな……」
「楽しかったですね。切りこみにストンってハマる時の感触とか、ちょっとクセになりそうでした」
「わかる。うまく組めるかハラハラしてたから尚更な」
その時、類さんの携帯が鳴った。
「……っと悪い、仕事の電話。戻ってきたら作業再開しよう」
「お疲れさまです」
「おう」
くしゃりと僕の髪を撫でてから、類さんが駐車場を後にする。
僕は彼の背中が見えなくなると適当なブロックに腰をかけた。水分補給をする。
と、ニャン太さんが隣に座った。
「結構うまく出来たよね~」
そう言って、達成感に満ちた表情でデスクを眺める。
「ですね。部屋に置くの、凄く楽しみです」
ふいにニャン太さんが僕に携帯を向けた。
続いて、カシャリと撮影音。
「わっ……! な、なんで撮るんですか!?」
「いい笑顔だったんだもん」
僕は小さくため息をついた。
「僕の写真なんて容量の無駄ですよ」
「いやいや、待ち受けにしたいくらいカワイイよ」
「それは本当にやめてください……!」
慌てる僕に、ニャン太さんがケラケラ笑う。
ややあってから、彼は唇を引き結ぶと優しく目を細めた。
「……良かった。喜んでくれたみたいで」
「え?」
「いやさ、デンデン、デスク作るの乗り気じゃなかったでしょ? 正直言うと心配してたんだ。押しつけがましかったかなーって」
携帯をしまって、ニャン太さんが言う。
僕はブンブンと首を振った。
「そんなことないですよ!……すみません、嫌な気持ちにさせてしまって。その……作るなんて面倒だし、申し訳なかったんです」
「申し訳ない? なにが?」
「ニャン太さんたちの時間を僕なんかに使わせてしまったし、お金だって……」
「あ、そゆこと……。もー、デンデンはさー……」
頬を突かれて、「ゎう」と変な声が漏れ出る。
「ボクのワガママだって言ったはずなんだけどなー」
彼は指先でグリグリと円を描いた。
「そ、それは……わかってはいりゅんですけど……すーー」
「すみません」口を突いて出ようとした言葉を僕は咄嗟に飲み込んだ。
いつものように笑うニャン太さんの表情がどこか寂しげに見えたからだ。
「……でも……あの、かなり……嬉しいんですよ。あまり自分だけの特別って、手にしたことがなかったので」
うつむき加減に告げれば、頬を突き回していた指が止まる。
両親の期待を一心に受けた兄は、何だって新品のものを買い与えられていた。一方で、成績も人格もパッとしない僕は親戚のお古ばかりだったっけ。
でも、今、目の前にあるデスクは違う。
正真正銘、僕のために作ってくれた特別なものだ。
「……あとですね、本当に押しつけがましいなんて思ったことありませんから。むしろ……その、色々気にかけてもらって幸せだなぁって思ってます。自分ではなかなか言い出せないこととか、ニャン太さんは気付いてくれるし」
彼のお陰で、僕の鬱陶しさが薄らぐ気がする。
「……そっか」
頬を突いていた指が離れた。
ついでニャン太さんは膝をかかえると、こちらに甘えるように身体を寄せてきた。
「…………じゃあさ、その言い出せそうにないことで、今気付いてるのがひとつあるんだけど……言ってもいい?」
「はい、なんでしょう?」
促すと彼は押し黙る。
僕はスポーツ飲料で喉を潤し、続きを待った。
とーー
「デンデンさ……類ちゃんと全然エッチしてないでしょ?」
僕は飲みかけていた液体を勢いよく噴き出した。
翌週末、類さんたちは朝から駐車場のスペースを借りてD IYに取り掛かった。
僕も一緒に手伝った。ふたりに任せるのが不安だったということではなくて、単純に興味があったからだ。
「な、なんとか……形になりましたね……」
「そうだな……」
やっとデスクらしい形に組み立て終えた頃には、全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
馴れない作業は僕が想像していたものよりも遥かに重労働で、面取りひとつするだけでとても時間がかかった。
今は接合面に塗ったボンドが乾くのを待ちつつ、休憩中だ。
「凄い、凄い! めっちゃデスクだ!」
歓声を上げながら、ニャン太さんが色んな角度からデスクの写メを撮る。
それを受けて壁に寄りかかった類さんがぐったりと口を開いた。
「デスク作ったんだから、当たり前だろうが……」
天井を仰いだ彼のこめかみから、汗が頬へと伝う。
首に下げたタオルで顔を拭う仕草に、僕は知れず目を奪われていて、慌てて視線を逸らした。
「でも、なんとか完成して安心したわ。それに超絶いい経験になったしな……」
「楽しかったですね。切りこみにストンってハマる時の感触とか、ちょっとクセになりそうでした」
「わかる。うまく組めるかハラハラしてたから尚更な」
その時、類さんの携帯が鳴った。
「……っと悪い、仕事の電話。戻ってきたら作業再開しよう」
「お疲れさまです」
「おう」
くしゃりと僕の髪を撫でてから、類さんが駐車場を後にする。
僕は彼の背中が見えなくなると適当なブロックに腰をかけた。水分補給をする。
と、ニャン太さんが隣に座った。
「結構うまく出来たよね~」
そう言って、達成感に満ちた表情でデスクを眺める。
「ですね。部屋に置くの、凄く楽しみです」
ふいにニャン太さんが僕に携帯を向けた。
続いて、カシャリと撮影音。
「わっ……! な、なんで撮るんですか!?」
「いい笑顔だったんだもん」
僕は小さくため息をついた。
「僕の写真なんて容量の無駄ですよ」
「いやいや、待ち受けにしたいくらいカワイイよ」
「それは本当にやめてください……!」
慌てる僕に、ニャン太さんがケラケラ笑う。
ややあってから、彼は唇を引き結ぶと優しく目を細めた。
「……良かった。喜んでくれたみたいで」
「え?」
「いやさ、デンデン、デスク作るの乗り気じゃなかったでしょ? 正直言うと心配してたんだ。押しつけがましかったかなーって」
携帯をしまって、ニャン太さんが言う。
僕はブンブンと首を振った。
「そんなことないですよ!……すみません、嫌な気持ちにさせてしまって。その……作るなんて面倒だし、申し訳なかったんです」
「申し訳ない? なにが?」
「ニャン太さんたちの時間を僕なんかに使わせてしまったし、お金だって……」
「あ、そゆこと……。もー、デンデンはさー……」
頬を突かれて、「ゎう」と変な声が漏れ出る。
「ボクのワガママだって言ったはずなんだけどなー」
彼は指先でグリグリと円を描いた。
「そ、それは……わかってはいりゅんですけど……すーー」
「すみません」口を突いて出ようとした言葉を僕は咄嗟に飲み込んだ。
いつものように笑うニャン太さんの表情がどこか寂しげに見えたからだ。
「……でも……あの、かなり……嬉しいんですよ。あまり自分だけの特別って、手にしたことがなかったので」
うつむき加減に告げれば、頬を突き回していた指が止まる。
両親の期待を一心に受けた兄は、何だって新品のものを買い与えられていた。一方で、成績も人格もパッとしない僕は親戚のお古ばかりだったっけ。
でも、今、目の前にあるデスクは違う。
正真正銘、僕のために作ってくれた特別なものだ。
「……あとですね、本当に押しつけがましいなんて思ったことありませんから。むしろ……その、色々気にかけてもらって幸せだなぁって思ってます。自分ではなかなか言い出せないこととか、ニャン太さんは気付いてくれるし」
彼のお陰で、僕の鬱陶しさが薄らぐ気がする。
「……そっか」
頬を突いていた指が離れた。
ついでニャン太さんは膝をかかえると、こちらに甘えるように身体を寄せてきた。
「…………じゃあさ、その言い出せそうにないことで、今気付いてるのがひとつあるんだけど……言ってもいい?」
「はい、なんでしょう?」
促すと彼は押し黙る。
僕はスポーツ飲料で喉を潤し、続きを待った。
とーー
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僕は飲みかけていた液体を勢いよく噴き出した。
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