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第1章:7度目の人生は侍女でした!
5.翻弄されそうです。
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イケメン侍従のライトさん。
フルネームはオーウェン・ライトさんとおっしゃるそうです。
200年前の英雄オーウェン・ヒューズがご先祖さまで、それに肖って母親につけられたのですって。
「名前負けしてしまっていますが」と照れながら頭をかく仕草も、やばいくらいイケメンです。
「英雄オーウェン……。建国の英雄様ではないですか!」
オーウェン・ヒューズは建国後、この国の貴族としての最上位の爵位を叙位されました。
以後、ヒューズ家はこの国を建てた英雄一族として貴族階級、それもイーディス様のご実家と同じ侯爵位を守り継いでいます。
でもこの侍従さんはライト姓。直系ではないのかしら。
ちょっと探ってみることにしました。
「オーウェン・ヒューズの御子孫であるのにヒューズ姓ではないのですね?」
「ええ。私はヒューズ侯爵様の血は継いでおりますが、嫡子ではありません。ですので母の姓のライトを名乗っています」
つまり私生児ってことですね。
貴族にはよくあることです。
貴族の子とはいえ正式な配偶者との間の子でなければ、貴族としての地位も財産も保障されません。貴族の血が流れていても日々の生活費を稼がないといけない平民と同等なのが辛いところです。
ライトさんもそうなのでしょう。
ちなみにこの世界では、お金がある男性(ときに女性)が配偶者以外にも相手を作ることは、珍しいことではありません。
むしろ富裕層の嗜みっぽい認識です。
ただ妾を囲うにはたいそうなお金がかかりますから、貧乏な我がベネット家には縁のないことですが。
これがよかったのか、悪かったのか。
「あら。私ったら、なんて不躾なことを聞いてしまいましたね。お気を悪くしたら、ごめんなさい」
「いいえ、皆知っていることですから。気にもしていません。……ところでベネット様は男爵家の御令嬢なのですから、侍女のお勤めもご結婚式までのご予定でしょう。具体的には?」
案の定、反撃きましたね!
ライトさん笑顔で意地の悪いことができるタイプなのかもしれません。宮を取り仕切る執事向けの性格ですね。
(私がイーディス様の侍女になった理由を知らないわけないのに、わざと聞くなんて! 底意地が悪いわ)
自業自得って言えばその通りですけどね!
私から仕掛けたことですけど!
ピンポイントで突かれるとそれなりにムカつきます。
私がイーディス様の侍女となったことは、この王子宮界隈結構有名らしいのです。
一時、宮廷での話題になっていました。貧乏故に生涯侍女コースのお気の毒な方(もちろん蔑まれ視線付き)なのだと。
王子宮付きの侍従が知らないわけありません。
「……ご存知のくせに、意地悪ですね」
「ははは。お互い探らなくてもいい腹があるということですね。ここまでに致しましょう」
イケメンなのに腹黒いとはどういうことでしょう。
でも、王族相手の侍従となるのならば、策士でないとやっていけないのも事実。
適材適所とは当にこのことです。
私は息を吐きました。
「ではもう敬語で話す必要もないですね。面倒くさいしですし。ライトさん、いいえ、オーウェンさん。イーディス様のお使いで度々来ることになるだろうから、タメ口で行かせてもらいますね」
「いいですよ。俺もそっちの方が気が楽だし。ベネット嬢? それともダイナ?」
「ダイナで」
私は右腕を差し出しました。
ここで友情の握手が定説でしょう!
「よろしくね、オーウェン」
「こちらこそ。ダイナ」
ライトさんことオーウェンは私の手を握り、そのまま自分の口元まで持ち上げ手の甲にキスをしました。
「ええっ、ちょっと。オーウェン?!」
え、待って?
驚きすぎて心臓おかしくなりそうですよ?
オーウェンは挙動不審の私を横目に、
「女性への挨拶はこうだよね」
と呟くと、何事もなかったかのように手を離し、カイル殿下の待つ部屋まで案内してくれたのでした。
あ、すっかり忘れてましたがお役目はきちんとこなしました。
イーディス様宛てのお返事もいただきましたし。
オーウェンとのことが衝撃的すぎて、あまり覚えてなかったりします。
うん。カイル殿下のことは……割愛します!
フルネームはオーウェン・ライトさんとおっしゃるそうです。
200年前の英雄オーウェン・ヒューズがご先祖さまで、それに肖って母親につけられたのですって。
「名前負けしてしまっていますが」と照れながら頭をかく仕草も、やばいくらいイケメンです。
「英雄オーウェン……。建国の英雄様ではないですか!」
オーウェン・ヒューズは建国後、この国の貴族としての最上位の爵位を叙位されました。
以後、ヒューズ家はこの国を建てた英雄一族として貴族階級、それもイーディス様のご実家と同じ侯爵位を守り継いでいます。
でもこの侍従さんはライト姓。直系ではないのかしら。
ちょっと探ってみることにしました。
「オーウェン・ヒューズの御子孫であるのにヒューズ姓ではないのですね?」
「ええ。私はヒューズ侯爵様の血は継いでおりますが、嫡子ではありません。ですので母の姓のライトを名乗っています」
つまり私生児ってことですね。
貴族にはよくあることです。
貴族の子とはいえ正式な配偶者との間の子でなければ、貴族としての地位も財産も保障されません。貴族の血が流れていても日々の生活費を稼がないといけない平民と同等なのが辛いところです。
ライトさんもそうなのでしょう。
ちなみにこの世界では、お金がある男性(ときに女性)が配偶者以外にも相手を作ることは、珍しいことではありません。
むしろ富裕層の嗜みっぽい認識です。
ただ妾を囲うにはたいそうなお金がかかりますから、貧乏な我がベネット家には縁のないことですが。
これがよかったのか、悪かったのか。
「あら。私ったら、なんて不躾なことを聞いてしまいましたね。お気を悪くしたら、ごめんなさい」
「いいえ、皆知っていることですから。気にもしていません。……ところでベネット様は男爵家の御令嬢なのですから、侍女のお勤めもご結婚式までのご予定でしょう。具体的には?」
案の定、反撃きましたね!
ライトさん笑顔で意地の悪いことができるタイプなのかもしれません。宮を取り仕切る執事向けの性格ですね。
(私がイーディス様の侍女になった理由を知らないわけないのに、わざと聞くなんて! 底意地が悪いわ)
自業自得って言えばその通りですけどね!
私から仕掛けたことですけど!
ピンポイントで突かれるとそれなりにムカつきます。
私がイーディス様の侍女となったことは、この王子宮界隈結構有名らしいのです。
一時、宮廷での話題になっていました。貧乏故に生涯侍女コースのお気の毒な方(もちろん蔑まれ視線付き)なのだと。
王子宮付きの侍従が知らないわけありません。
「……ご存知のくせに、意地悪ですね」
「ははは。お互い探らなくてもいい腹があるということですね。ここまでに致しましょう」
イケメンなのに腹黒いとはどういうことでしょう。
でも、王族相手の侍従となるのならば、策士でないとやっていけないのも事実。
適材適所とは当にこのことです。
私は息を吐きました。
「ではもう敬語で話す必要もないですね。面倒くさいしですし。ライトさん、いいえ、オーウェンさん。イーディス様のお使いで度々来ることになるだろうから、タメ口で行かせてもらいますね」
「いいですよ。俺もそっちの方が気が楽だし。ベネット嬢? それともダイナ?」
「ダイナで」
私は右腕を差し出しました。
ここで友情の握手が定説でしょう!
「よろしくね、オーウェン」
「こちらこそ。ダイナ」
ライトさんことオーウェンは私の手を握り、そのまま自分の口元まで持ち上げ手の甲にキスをしました。
「ええっ、ちょっと。オーウェン?!」
え、待って?
驚きすぎて心臓おかしくなりそうですよ?
オーウェンは挙動不審の私を横目に、
「女性への挨拶はこうだよね」
と呟くと、何事もなかったかのように手を離し、カイル殿下の待つ部屋まで案内してくれたのでした。
あ、すっかり忘れてましたがお役目はきちんとこなしました。
イーディス様宛てのお返事もいただきましたし。
オーウェンとのことが衝撃的すぎて、あまり覚えてなかったりします。
うん。カイル殿下のことは……割愛します!
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