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第1章:7度目の人生は侍女でした!
4.さわやかなイケメンと出会いました。
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イーディス様の無茶振りに、ため息が出てしまいます。
人の恋路になんて関わりたくもありません。
だっていいことなんて何もないじゃないですか?
あ、これは今までの経験上、学んだことですよ。
ダイナは18歳ですけどね。
今まで6周(1回鹿含む)回ってきていますから。
過去の経験だけはたっぷりあります。
例えば……。
恋愛相談して目移りされたり、しちゃったり。嫉妬に駆られたり。
寝取られたり、寝とったり?
まぁ6度も人生があれば、それなりにあるものです。
とにかく!
他人の恋に口は挟むべからず! です。
でも私は使用人。
被雇用者です。ご主人様の命令ならば、断ることはできません。
……実家に仕送りしているので、命令違反で減給なんかされちゃ困りますし。
それにイーディス様は可愛いですし。
王宮にもカイル殿下の思い人に会ってみたい気もしないでもないです。
――二つ返事で了承しました。
決して、決して、好奇心に勝てなかったなんてことはないですから!
ほんと私ってすごくいい侍女ですよね。うん。
翌日の午後、私は王宮のカイル殿下の宮でゆっくりと紅茶なんて啜ったりしていました。
さすが王宮。
最高級の茶葉で入れたお茶を一侍女である私にまで振舞ってくれるだなんて、どれだけ太っ腹なのでしょうか。
(王太子でもない王子の宮でもこれなのだから、ものすごく贅沢ね)
無駄使いじゃ……とかいう無粋なことは考えないでおきましょう。
王子宮の戸をくぐりすでに1時間。
アルカイックスマイル付きの『しばらくお待ちください』で放置されている最中なのです。
慰めは要りますよね?
そもそも、なぜこんな事になったのかといえば、貴族の訪問は事前に連絡が必要なのですが、その辺をするっとスルーしてノーアポイントメントで押しかけちゃったことが原因です。
イーディス様を快く思っていないカイル殿下のことです。
事前のアポなんて入れてもらえない可能性もあります。
それを踏まえての、突撃隣のお宅訪問……からの、待ちぼうけなのです。
こちら側が悪いのですから、ここまでは想定済み。
侯爵邸での針仕事から逃れられたと思えば、楽なものです。
4杯目のお茶を注ごうと手を伸ばしたときに、ようやく扉が開きました。
(カイル殿下?)
……なわけはありません。
入ってきたのは上等なタキシード姿のカイル殿下付きのベテラン執事さんでした(イーディス様のお供で何度も来ているので顔見知りです)。
「ベネット様。長らくお待たせいたしました。本日は何用でございますか?」
「イーディス様のお手紙を殿下にお届けに参りました」
「手紙を届けるだけのために、イーディス様の侍女であるあなたが参内なさったのですか」
執事さんは呆れ顔です。
確かに、手紙を届けるのは侍女の仕事ではありません。
侯爵家などの上位貴族に仕える侍女は、私のような一生独身コースの貧乏貴族か、行儀見習い目的で結婚までの腰掛け御令嬢がつく名誉職のようなものです。
お使いはもう少し下の使用人の役目なのですから。
貴人のお付きの侍女がお使いをするのは異例中の異例です。
「イーディス様、直々のお達しですので、私自ら参りました。この手で殿下にお渡しするようにと申しつかっておりますので、謁見のお願いできますか?」
「ベネット様。ご存知の通り、殿下はお忙しいお方なのです。アポイントなしでの謁見など本来ならば不可能なのですが……。ご婚約者のイーディス様のご要望とあれば仕方ありません。殿下にお取り次ぎをいたしましょう」
仕方ない+恩着せがましい感を全身からあふれさせながら、執事さんは壁に吊るされた呼び出し用のベルを一つ引きました。
しばらくして若い男性が現れました。
年のころはカイル殿下と同じくらいでしょうか。
でもカイル殿下よりも少しばかり精悍でイケメンな感じがします。
目元の黒子がとっても魅力的です。
「執事殿、お呼びでしょうか」
え?
このイケメンさん、殿下の侍従さんかしら?
顔だけでなく声もいいじゃないですか!
こんな完璧男子もいるのね、と惚れ惚れと見入ってしまいます。
執事さんは何かしらをメモし、完璧男子に渡し、
「ベネット様を殿下の元にお連れしてくれ。イーディス様の使いの方だ。失礼のないようにな。任せたぞ、ライト」
「かしこまりました」
ライトと呼ばれた青年は執事さんから渡されたメモをポケットに収め、居心地悪そうに眉を歪めて私を見ます。
「……あの、ベネット様。先ほどからずっと私をご覧になられているようですが、私の顔に何かついておりますか?」
「いいえ、全てが良すぎて……あ、すみません。何でもありません。案内よろしくお願いします。ライトさん」
美しいものは目の保養。
イケメンを見入ってしまうのは人間の業とでも言いましょうか。
いやほんと、ごめんなさい。
人の恋路になんて関わりたくもありません。
だっていいことなんて何もないじゃないですか?
あ、これは今までの経験上、学んだことですよ。
ダイナは18歳ですけどね。
今まで6周(1回鹿含む)回ってきていますから。
過去の経験だけはたっぷりあります。
例えば……。
恋愛相談して目移りされたり、しちゃったり。嫉妬に駆られたり。
寝取られたり、寝とったり?
まぁ6度も人生があれば、それなりにあるものです。
とにかく!
他人の恋に口は挟むべからず! です。
でも私は使用人。
被雇用者です。ご主人様の命令ならば、断ることはできません。
……実家に仕送りしているので、命令違反で減給なんかされちゃ困りますし。
それにイーディス様は可愛いですし。
王宮にもカイル殿下の思い人に会ってみたい気もしないでもないです。
――二つ返事で了承しました。
決して、決して、好奇心に勝てなかったなんてことはないですから!
ほんと私ってすごくいい侍女ですよね。うん。
翌日の午後、私は王宮のカイル殿下の宮でゆっくりと紅茶なんて啜ったりしていました。
さすが王宮。
最高級の茶葉で入れたお茶を一侍女である私にまで振舞ってくれるだなんて、どれだけ太っ腹なのでしょうか。
(王太子でもない王子の宮でもこれなのだから、ものすごく贅沢ね)
無駄使いじゃ……とかいう無粋なことは考えないでおきましょう。
王子宮の戸をくぐりすでに1時間。
アルカイックスマイル付きの『しばらくお待ちください』で放置されている最中なのです。
慰めは要りますよね?
そもそも、なぜこんな事になったのかといえば、貴族の訪問は事前に連絡が必要なのですが、その辺をするっとスルーしてノーアポイントメントで押しかけちゃったことが原因です。
イーディス様を快く思っていないカイル殿下のことです。
事前のアポなんて入れてもらえない可能性もあります。
それを踏まえての、突撃隣のお宅訪問……からの、待ちぼうけなのです。
こちら側が悪いのですから、ここまでは想定済み。
侯爵邸での針仕事から逃れられたと思えば、楽なものです。
4杯目のお茶を注ごうと手を伸ばしたときに、ようやく扉が開きました。
(カイル殿下?)
……なわけはありません。
入ってきたのは上等なタキシード姿のカイル殿下付きのベテラン執事さんでした(イーディス様のお供で何度も来ているので顔見知りです)。
「ベネット様。長らくお待たせいたしました。本日は何用でございますか?」
「イーディス様のお手紙を殿下にお届けに参りました」
「手紙を届けるだけのために、イーディス様の侍女であるあなたが参内なさったのですか」
執事さんは呆れ顔です。
確かに、手紙を届けるのは侍女の仕事ではありません。
侯爵家などの上位貴族に仕える侍女は、私のような一生独身コースの貧乏貴族か、行儀見習い目的で結婚までの腰掛け御令嬢がつく名誉職のようなものです。
お使いはもう少し下の使用人の役目なのですから。
貴人のお付きの侍女がお使いをするのは異例中の異例です。
「イーディス様、直々のお達しですので、私自ら参りました。この手で殿下にお渡しするようにと申しつかっておりますので、謁見のお願いできますか?」
「ベネット様。ご存知の通り、殿下はお忙しいお方なのです。アポイントなしでの謁見など本来ならば不可能なのですが……。ご婚約者のイーディス様のご要望とあれば仕方ありません。殿下にお取り次ぎをいたしましょう」
仕方ない+恩着せがましい感を全身からあふれさせながら、執事さんは壁に吊るされた呼び出し用のベルを一つ引きました。
しばらくして若い男性が現れました。
年のころはカイル殿下と同じくらいでしょうか。
でもカイル殿下よりも少しばかり精悍でイケメンな感じがします。
目元の黒子がとっても魅力的です。
「執事殿、お呼びでしょうか」
え?
このイケメンさん、殿下の侍従さんかしら?
顔だけでなく声もいいじゃないですか!
こんな完璧男子もいるのね、と惚れ惚れと見入ってしまいます。
執事さんは何かしらをメモし、完璧男子に渡し、
「ベネット様を殿下の元にお連れしてくれ。イーディス様の使いの方だ。失礼のないようにな。任せたぞ、ライト」
「かしこまりました」
ライトと呼ばれた青年は執事さんから渡されたメモをポケットに収め、居心地悪そうに眉を歪めて私を見ます。
「……あの、ベネット様。先ほどからずっと私をご覧になられているようですが、私の顔に何かついておりますか?」
「いいえ、全てが良すぎて……あ、すみません。何でもありません。案内よろしくお願いします。ライトさん」
美しいものは目の保養。
イケメンを見入ってしまうのは人間の業とでも言いましょうか。
いやほんと、ごめんなさい。
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