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第4章:婚約しちゃいました!
56.どう責任とってくれるの?
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その後、午餐会でメリッサ様と私は言葉を交わすことはありませんでした。
お互いに大人ですので、あえて無視するということはなかったのですが、何となく気まずくて、あえて積極的に関わろうとはしませんでした。
あんな騒ぎをおこしてしまったのに、イーディス様の手前、他の参加者からはスルーされることもなくて(でも親しくされることもありませんでした)、それはそれでとても気楽でよかったんですけどね。
社交界で生きていくための第一印象は大失敗です……。
他の方は別としても、メリッサ様とは友人関係は望みませんが、薄い親戚くらいの好感度は欲しかったなと思います。
だってメリッサ様はオーウェンの異母兄バージル様の婚約者ですし、これからも顔を合わすことを考えたら、わだかまりがない方が良いに決まっています。
あ、オーウェンを馬鹿にされて、言い返したことには1ミリも後悔はありませんよ。
でもでも。
すこーし心残りはあったりします。
私を嫌う真の理由だけは知りたかったなぁとは思うのです。
私は働いているとはいえ男爵家の人間です。
初対面でどうしてあそこまで目の敵にするのかわからなかったんですよね。
心当たりないのに、嫌悪感だけもたれるってのも、気持ちの良いものではないじゃないですか。
モヤっとしたまま時が経つのを見逃すほど、私は年を重ねてはいません。お人好しでもないので、心当たりに直球勝負かけてみることにしました。
「オーウェン、あなたメリッサ様と何かあったの?」
そうオーウェンに突撃!です。
腹黒く計算高いと有名なメリッサ様が攻撃的なのは性格もあるのかもしれませんが、それ以外にも理由があるのではと考えました。
やけにオーウェンのことを気にしていたということは……、
「過去にメリッサ様とオーウェンが恋愛してたとか、あるんじゃない?」
「は? ダイナ、何言ってんの。俺がメリッサ様と恋愛? あるわけないじゃないか」
と即否定しながらも、オーウェンの空色の瞳が微かにぶれます。
いつもは冷静なオーウェンなのですが、嘘をつくときだけはちょっと瞳が揺れます。じっくり見つめていないと気づかないくらいの、変化なのですが。最近わかるようになってきました(愛でしょうか!)
「嘘つき」
私はオーウェンの頬を両手で挟みます。
「メリッサ様のこと、好きだったの?」
「はぁ……。ねぇダイナ。俺にも好みがあるんだけど。メリッサ様に一度だけ誘われたことがあるだけだよ。断ったけど」
オーウェンはやれやれと眉を歪まると、私の手のひらを頬から外し、自らの唇に当てました。
「……2年くらい前だったと思うけど。カイル殿下の侍従をしていた時にね、ヒューズの家の祝賀会に呼ばれてね。そこで声かけられたんだ。まだバージルとの婚約前の話だよ」
私の腕を引き寄せ、オーウェンはじわじわと距離を詰めてきます。
いや、近い。
付き合っているので構わないんですけど、近すぎて焦ります!
なんというか、良い顔すぎて? 圧倒されます。
「メ…メリッサ様、オーウェンに振られたから、私に八つ当たりしたのかな」
「まさか。もう2年も経ってるんだよ。イーディス様じゃあるまいし、そこまで執着しないだろ」
ここはイーディス様の名誉の為に。
イーディス様は執着心の強い方ですが、それはカイル殿下にだけです。
イーディス様は“カイル殿下“か“その他“しかないので、カイル様のこと以外では基本的には人畜無害です。
「じゃあどうして?」
「そりゃあ……。ウォードがライトを商売敵視してるからだろ。規模的にどうにもならないことは分かっているだろうに、向こうが勝手にね、ライバルと思ってる。だから癪に触るんだろうさ」
メリッサ様の家、ウォード家は今は伯爵家ですが、元々は一商人に過ぎませんでした。
が、三代前に投資で莫大な富を得、成り上がり爵位を買った……ことは、貴族の間では広く知られています。
その財力は年を経ても変わらず、現当主が現国王の妹を降嫁され、ますます勢いを増しています(由緒だけはあるベネット男爵家とは大違いです)。
加えてベネット様がヒューズ公爵家と縁づいたことで、この世の春と思っているのかもしれません。
「ところで、ダイナさん。これ有名なんだけどな。知らないとは……将来のライト家の奥様は勉強不足にもほどがあるんじゃないの?」
オーウェンがしたり顔で私の髪をいじります。
「俺、疑われて傷ついたんだけど?」
なんだか、ちょっとオーウェンに熱がこもってきていませんか??
これは反則です。
「うっ……疑ってごめんなさい。あと優しい旦那様がフォローしてくれれば問題ないと思います……」
と私は顔をそらしました。
ほんと顔が熱い。
お互いに大人ですので、あえて無視するということはなかったのですが、何となく気まずくて、あえて積極的に関わろうとはしませんでした。
あんな騒ぎをおこしてしまったのに、イーディス様の手前、他の参加者からはスルーされることもなくて(でも親しくされることもありませんでした)、それはそれでとても気楽でよかったんですけどね。
社交界で生きていくための第一印象は大失敗です……。
他の方は別としても、メリッサ様とは友人関係は望みませんが、薄い親戚くらいの好感度は欲しかったなと思います。
だってメリッサ様はオーウェンの異母兄バージル様の婚約者ですし、これからも顔を合わすことを考えたら、わだかまりがない方が良いに決まっています。
あ、オーウェンを馬鹿にされて、言い返したことには1ミリも後悔はありませんよ。
でもでも。
すこーし心残りはあったりします。
私を嫌う真の理由だけは知りたかったなぁとは思うのです。
私は働いているとはいえ男爵家の人間です。
初対面でどうしてあそこまで目の敵にするのかわからなかったんですよね。
心当たりないのに、嫌悪感だけもたれるってのも、気持ちの良いものではないじゃないですか。
モヤっとしたまま時が経つのを見逃すほど、私は年を重ねてはいません。お人好しでもないので、心当たりに直球勝負かけてみることにしました。
「オーウェン、あなたメリッサ様と何かあったの?」
そうオーウェンに突撃!です。
腹黒く計算高いと有名なメリッサ様が攻撃的なのは性格もあるのかもしれませんが、それ以外にも理由があるのではと考えました。
やけにオーウェンのことを気にしていたということは……、
「過去にメリッサ様とオーウェンが恋愛してたとか、あるんじゃない?」
「は? ダイナ、何言ってんの。俺がメリッサ様と恋愛? あるわけないじゃないか」
と即否定しながらも、オーウェンの空色の瞳が微かにぶれます。
いつもは冷静なオーウェンなのですが、嘘をつくときだけはちょっと瞳が揺れます。じっくり見つめていないと気づかないくらいの、変化なのですが。最近わかるようになってきました(愛でしょうか!)
「嘘つき」
私はオーウェンの頬を両手で挟みます。
「メリッサ様のこと、好きだったの?」
「はぁ……。ねぇダイナ。俺にも好みがあるんだけど。メリッサ様に一度だけ誘われたことがあるだけだよ。断ったけど」
オーウェンはやれやれと眉を歪まると、私の手のひらを頬から外し、自らの唇に当てました。
「……2年くらい前だったと思うけど。カイル殿下の侍従をしていた時にね、ヒューズの家の祝賀会に呼ばれてね。そこで声かけられたんだ。まだバージルとの婚約前の話だよ」
私の腕を引き寄せ、オーウェンはじわじわと距離を詰めてきます。
いや、近い。
付き合っているので構わないんですけど、近すぎて焦ります!
なんというか、良い顔すぎて? 圧倒されます。
「メ…メリッサ様、オーウェンに振られたから、私に八つ当たりしたのかな」
「まさか。もう2年も経ってるんだよ。イーディス様じゃあるまいし、そこまで執着しないだろ」
ここはイーディス様の名誉の為に。
イーディス様は執着心の強い方ですが、それはカイル殿下にだけです。
イーディス様は“カイル殿下“か“その他“しかないので、カイル様のこと以外では基本的には人畜無害です。
「じゃあどうして?」
「そりゃあ……。ウォードがライトを商売敵視してるからだろ。規模的にどうにもならないことは分かっているだろうに、向こうが勝手にね、ライバルと思ってる。だから癪に触るんだろうさ」
メリッサ様の家、ウォード家は今は伯爵家ですが、元々は一商人に過ぎませんでした。
が、三代前に投資で莫大な富を得、成り上がり爵位を買った……ことは、貴族の間では広く知られています。
その財力は年を経ても変わらず、現当主が現国王の妹を降嫁され、ますます勢いを増しています(由緒だけはあるベネット男爵家とは大違いです)。
加えてベネット様がヒューズ公爵家と縁づいたことで、この世の春と思っているのかもしれません。
「ところで、ダイナさん。これ有名なんだけどな。知らないとは……将来のライト家の奥様は勉強不足にもほどがあるんじゃないの?」
オーウェンがしたり顔で私の髪をいじります。
「俺、疑われて傷ついたんだけど?」
なんだか、ちょっとオーウェンに熱がこもってきていませんか??
これは反則です。
「うっ……疑ってごめんなさい。あと優しい旦那様がフォローしてくれれば問題ないと思います……」
と私は顔をそらしました。
ほんと顔が熱い。
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