竜王、冒険者になりましたっ!〜最強チートの俺ですが、人間界の常識をゼロから学び直しています〜

森マッコリ

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第11話:ゴブリンとユニークモンスター

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洞窟の奥から響いてきた女性の悲鳴と獣の雄叫び。

それを聞いたシーラは、一瞬硬直したかと思うと、次の瞬間には駆け出していた。その目には恐怖や迷いはなく、ただひたすら怒りに燃えていた。

「おい!シーラ!一人で突っ込むな!」

アレンの叫びは、彼女の耳には届かなかった。シーラは一目散に暗闇の奥へ突入していく。

その場に残された2人だったが、ロナは焦りをにじませながら、耳をピクピクと動かしていた。

「ヤバいのだ。この奥、相当な数のゴブリンの匂いがするのだ。わっちでも、ちょっと引くのだ...」

「はぁ......」

アレンは一つ、大きく息を吐き出す。
竜王であるアレンにとって、ゴブリンは大した相手ではない。むしろ山狼族の方が余程強いくらいだった。そんなアレンだが、洞窟に入ることを少し躊躇していた。

凄く嫌な予感がする。胸騒ぎというか...
ここは本当にゴブリンの巣なのか...?もっと禍々しい何かの気配を感じる。

このまま入っても良いものかと考えたアレンだったが、シーラを放っておく事も出来ないため、決意を固める。

「まあ、考えてもどうしようもないか。なるようになれって感じだな。何より、シーラに一言ガツンと言ってやんねぇとな。」

悪態をつきながらも、アレンは踵を返し、ロナと共に洞窟内へ駆け出した。

洞窟に入ってしばらくすると、少しひらけた空間で、ゴブリンの群れとシーラが交戦している光景が目に入った。

数十人の村人の死体が転がる中、ゴブリンの群れが興奮したようにシーラを取り囲んでいる。
身長は120cm程で肌の色は緑色。それぞれ棍棒や短剣など、恐らく人から奪い取ったものであろう武器で、武装をしていた。

「流石に多すぎやしないかこれ。30体は居るよな。」

【モンスター情報】
モンスター名:ゴブリン
モンスターランク:D

シーラの様子を見ると完全に我を忘れており、魔力を練り上げ、愛剣を構えていた。

「この世から、存在を根絶してやる!! 緋炎ノ斬撃(スカーレットブレイク)!」

その技は横一線に剣を振るう大振りな炎の斬撃。威力は高いが、洞窟などの狭い場所で使うには、あまりに危険すぎる。
案の定、技を放つ前に剣が天井から突き出た岩の突起に当たり、シーラは体制を大きく崩してしまう。その一瞬の隙を、ゴブリンたちは見逃さなかった。

数体のゴブリンが手に持った武器を振り上げ、一斉にシーラへ攻撃を仕掛ける。

アレンは咄嗟に『魔鉄創成』を発動し、助けに入ろうとするが――

「わっちの仲間に手は出させないのだ!雪爪牙(せっそうが)!」

アレンの視界を遮るように、横にいたロナが矢のように駆け出した。
両手から生えているのは、短剣ほどの長さで光り輝く3本の爪。それが山狼族の血を引いているロナの戦闘形態であることを、アレンはすぐに理解する。

ロナは一瞬のうちにゴブリン達の間をすり抜け、爪を振るう。ゴブリン達は断末魔を上げる暇もなく切り裂かれると、その傷口からみるみるうちに凍りついて動きを止めた。

ロナには氷雪系魔法の才能があった。更に山狼族と人間のハーフという事もあり、身体の一部を獣人化させる事ができたのだ。
雪爪牙(せっそうが)は、ロナの山狼族の爪に氷雪系魔法を付与した、言わば魔法爪と呼べる技なのである。

「え......ロナって......こんなに強かったの?」

アレンが驚愕の声を漏らす中、ロナの背後に向けて、猛スピードで突っ込んでくる殺気を察知する。その速さは、スピードが取り柄のロナすら上回っていた。

「――っくそ!」

アレンは驚きを押し殺し、即座に『魔鉄創成』で剣を作り出し、間一髪で迎え撃った。

キンッ!

洞窟内に、甲高く鋭い金属音が鳴り響く。
突っ込んできたのは、ゴブリンだった。しかし、その見た目は他のゴブリン達とは一線を画している。

肌の色は他のゴブリンと同じ緑だが、背丈は190cmほどもあり、布ではなくしっかりとした衣服を着ている。両手に刀を持っていて、その身体は引き締まっており、無数の傷が歴戦の猛者ということを物語っていた。何より、その目には知性と、長き時を生き抜いた化け物が持つ鋭さを宿している。

「おいおい、この依頼どうなってんだよ……やっぱりDランクなんかじゃないよな」

そのモンスターを、そのユニークの存在を、アレンは竜王として生きてきた長き時の中で、確かに知っていた。

「こんなユニークモンスターが出てくるなんてよ......」

【モンスター情報】
モンスター名:マスターゴブリン(ユニーク)
モンスターランク:SS

それは、アレンと同じく長き時を生きる、この世界最強の一角であった。
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