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20話 叔母さんが剣を持つ事を考える話①
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僕とクローディアは叔母さんが働いている宿でお茶を飲んでいた。正確に言うと何種類かのお茶を試飲していた。
この世界は食事の味付けは単調なのに、お茶の種類と質はなかなかだ。
ハーブティーが一般の人には親しまれているらしいけど。中国茶のようなものとか、日本茶のようなグリーンティーもある。コーヒーはバルトさんの宿には置いていないけど、叔母さんが言うには存在はしているらしい。
残念ながらコーヒーの美味しさをまだ理解できない僕にとってはどちらでも良かったけど。だって、クローディアの前でコーヒーが苦くて飲めないなんて言いたくないし。ああ、でもコーヒーゼリーとか、お菓子に使うならあるといいかも...。
とにかく僕にとってはコーヒーはまだ大人の飲み物だ。
バルトさんの宿では茶葉を王都に卸しに行く業者から仕入れている。その茶葉を分けてくれると言うので試し飲みをしていたのだ。
僕とクローディアはこの後に家で夕食の予定だったのでお茶のみだったけど、他の客は仕事の後のお酒を食事をしながら楽しんでいた。テーブルに乗っている料理は相変わらず芋とシチューのみだったけど...。
まだ、席はちらほら空いていて、それほど混んではいない。なので、僕たちもお茶だけで端の方のテーブルを占領することができていた。
これからもっと混み出す、そんな時間帯。
乱暴に入口の扉が開いたかと思うと大柄な男が二人、ドカドカと音を立てて入ってきた。
大きな声で宿が空いているかを聞く。叔母さんが空いているよと答えると、ゲラゲラと笑いながら近くのテーブルに腰かけた。
「いや~、また野宿になるかと思ったな!」
「危ねぇ、危ねぇ。」
そう言うと何がおかしいのかギャハハハとまた大きな声で笑い合う。
お世辞にも柄が良いとは言えない人達だった。
「おい!酒と何かつまみをくれ!」
ひとりがそう叫ぶ。給仕をしていた叔母さんが返事をしてキッチンに引っ込んだ。
周りの人達が自分たちをジロジロと見ているのも気にならないようだ。
大柄な二人で、ひとりがガッチリとしていて腕にびっしりと刺青が入っているのが見える、もうひとりは背は高いけどずいぶん細身で、この辺りの住人と比べて浅黒い肌をしていた。この辺りの人達は普段は剣を帯刀していることはないけれど、この二人は剣を腰に下げていた。
僕も思わずまじまじと見てしまう。
「何か面白いか?」
クローディアが余りにも僕が凝視していたので不思議に思ったのか聞いてくる。
「うん。本物の剣を腰に下げている人、初めてみたから。」
クローディアもそれを聞いて男達をチラリと見る。
「ああ、この辺りは比較的安全だからな。あれは、ずいぶん遠方から旅をして来たんだろう。あの刺青は南方の国のものだ。でも、仕事で王都に荷物を運ぶ時などはさすがに剣を持っていく者もいるんじゃないか?女子供だって短剣くらいは持っている。」
「へ~、そうなんだ。そういえば、鍛冶屋のハリマンさんの工房に行った時、奥の方に並んでいたかも。」
その時は、鍋に夢中で良く見ていなかったけど。農家の人が使うような鎌や鍬のような物も確かに並んでいた。
「そうだな、ここの鍛冶屋は頼まれれば何でもつくるが、王都には剣専用の鍛冶屋もいる。王都には軍隊も居るからな。」
クローディアが淡々と続ける。だいぶ最初の頃より、たくさん話してくれるようになった気がする。
「なるほど、需要が多くあれば専業でも成り立つからだね。」
「そうだ。良く分かったな。」
「それぐらいは僕でも分かるよ。」
まあ、クローディアからしたら子供にしか見えないんだろうけど。
「...いや別に馬鹿にしたつもりはなかったのだが。すまない。」
別に全然怒ってはいなかったけれど、僕みたいな子供にもきちんと謝ってくれるクローディアに嬉しくなって聞いてみる。
「やっぱり、クローディアもここのご主人のバルトさんみたいに男はガッチリマッチョじゃないと思う?」
「ガッチリマッチョ?」
何を言われたのか良く分からないのかクローディアがきょとんとした顔をする。その表情があどけなくて可愛い。本当に物凄く年上だとは思えない表情だ。
「だから、筋肉がしっかりついていて強そうなこと。剣を振ったら強そうな男の方がかっこいいと思う?」
何を想像したのかクローディアが真っ赤になる。肌の色が白いと本当に顔がボンって感じに赤くなるんだ。と思わず感心して見てしまう。
「…い、いや。私は別に筋肉はそ、そんなに気にならないぞ。」
「じゃあ、身長は?」
まだ延び盛りだと思うけど、学校では真ん中辺りの身長の僕は思わずテーブルに身を乗り出してクローディアに聞いた。
「身長!?」
「やっぱり自分よりは高い方が良いよね?」
「...良い?私は姿を変えられるから、自分より高いと言われてもいつの姿と比べて良いのか良く分からん。だいたい、何でそんなこと...。」
「おい、何をしているんだ?どの茶葉を分けてもらうか決まったのか?」
いつの間にかテーブルの横に立っていた叔母さんが、僕の頭を軽くポンポンと叩く。
「バルトさんみたいに、筋肉がついていた方がやっぱりいいなぁっていう話。」
「筋肉?なんでそれでクローディアが赤くなるんだ?」
「さあ?」それは良く分からないけど。
「だいたい、バルトは見た目はああだが中身はヘタレだ。」
え?そうなのか。それは複雑な気分だ。
「おい、なんだよ!芋しかないのかよ!」
さっきの二人連れが大声で文句を言っている。
「ここの宿の名物料理は芋とシチューだ。」
隣のテーブルから親切にもフォローの声が掛かる。
「まじかよぉ。やっぱり、王都まで行ってから泊ればよかったぜ。」
刺青の男がさらに続けた。それに、細身の男の方も同調してその場に響き渡る声で話す。
「全く、よくあんたらもこんなとこで飲んでるよなぁ。」
完全に周りを馬鹿にした態度だ。
この世界は食事の味付けは単調なのに、お茶の種類と質はなかなかだ。
ハーブティーが一般の人には親しまれているらしいけど。中国茶のようなものとか、日本茶のようなグリーンティーもある。コーヒーはバルトさんの宿には置いていないけど、叔母さんが言うには存在はしているらしい。
残念ながらコーヒーの美味しさをまだ理解できない僕にとってはどちらでも良かったけど。だって、クローディアの前でコーヒーが苦くて飲めないなんて言いたくないし。ああ、でもコーヒーゼリーとか、お菓子に使うならあるといいかも...。
とにかく僕にとってはコーヒーはまだ大人の飲み物だ。
バルトさんの宿では茶葉を王都に卸しに行く業者から仕入れている。その茶葉を分けてくれると言うので試し飲みをしていたのだ。
僕とクローディアはこの後に家で夕食の予定だったのでお茶のみだったけど、他の客は仕事の後のお酒を食事をしながら楽しんでいた。テーブルに乗っている料理は相変わらず芋とシチューのみだったけど...。
まだ、席はちらほら空いていて、それほど混んではいない。なので、僕たちもお茶だけで端の方のテーブルを占領することができていた。
これからもっと混み出す、そんな時間帯。
乱暴に入口の扉が開いたかと思うと大柄な男が二人、ドカドカと音を立てて入ってきた。
大きな声で宿が空いているかを聞く。叔母さんが空いているよと答えると、ゲラゲラと笑いながら近くのテーブルに腰かけた。
「いや~、また野宿になるかと思ったな!」
「危ねぇ、危ねぇ。」
そう言うと何がおかしいのかギャハハハとまた大きな声で笑い合う。
お世辞にも柄が良いとは言えない人達だった。
「おい!酒と何かつまみをくれ!」
ひとりがそう叫ぶ。給仕をしていた叔母さんが返事をしてキッチンに引っ込んだ。
周りの人達が自分たちをジロジロと見ているのも気にならないようだ。
大柄な二人で、ひとりがガッチリとしていて腕にびっしりと刺青が入っているのが見える、もうひとりは背は高いけどずいぶん細身で、この辺りの住人と比べて浅黒い肌をしていた。この辺りの人達は普段は剣を帯刀していることはないけれど、この二人は剣を腰に下げていた。
僕も思わずまじまじと見てしまう。
「何か面白いか?」
クローディアが余りにも僕が凝視していたので不思議に思ったのか聞いてくる。
「うん。本物の剣を腰に下げている人、初めてみたから。」
クローディアもそれを聞いて男達をチラリと見る。
「ああ、この辺りは比較的安全だからな。あれは、ずいぶん遠方から旅をして来たんだろう。あの刺青は南方の国のものだ。でも、仕事で王都に荷物を運ぶ時などはさすがに剣を持っていく者もいるんじゃないか?女子供だって短剣くらいは持っている。」
「へ~、そうなんだ。そういえば、鍛冶屋のハリマンさんの工房に行った時、奥の方に並んでいたかも。」
その時は、鍋に夢中で良く見ていなかったけど。農家の人が使うような鎌や鍬のような物も確かに並んでいた。
「そうだな、ここの鍛冶屋は頼まれれば何でもつくるが、王都には剣専用の鍛冶屋もいる。王都には軍隊も居るからな。」
クローディアが淡々と続ける。だいぶ最初の頃より、たくさん話してくれるようになった気がする。
「なるほど、需要が多くあれば専業でも成り立つからだね。」
「そうだ。良く分かったな。」
「それぐらいは僕でも分かるよ。」
まあ、クローディアからしたら子供にしか見えないんだろうけど。
「...いや別に馬鹿にしたつもりはなかったのだが。すまない。」
別に全然怒ってはいなかったけれど、僕みたいな子供にもきちんと謝ってくれるクローディアに嬉しくなって聞いてみる。
「やっぱり、クローディアもここのご主人のバルトさんみたいに男はガッチリマッチョじゃないと思う?」
「ガッチリマッチョ?」
何を言われたのか良く分からないのかクローディアがきょとんとした顔をする。その表情があどけなくて可愛い。本当に物凄く年上だとは思えない表情だ。
「だから、筋肉がしっかりついていて強そうなこと。剣を振ったら強そうな男の方がかっこいいと思う?」
何を想像したのかクローディアが真っ赤になる。肌の色が白いと本当に顔がボンって感じに赤くなるんだ。と思わず感心して見てしまう。
「…い、いや。私は別に筋肉はそ、そんなに気にならないぞ。」
「じゃあ、身長は?」
まだ延び盛りだと思うけど、学校では真ん中辺りの身長の僕は思わずテーブルに身を乗り出してクローディアに聞いた。
「身長!?」
「やっぱり自分よりは高い方が良いよね?」
「...良い?私は姿を変えられるから、自分より高いと言われてもいつの姿と比べて良いのか良く分からん。だいたい、何でそんなこと...。」
「おい、何をしているんだ?どの茶葉を分けてもらうか決まったのか?」
いつの間にかテーブルの横に立っていた叔母さんが、僕の頭を軽くポンポンと叩く。
「バルトさんみたいに、筋肉がついていた方がやっぱりいいなぁっていう話。」
「筋肉?なんでそれでクローディアが赤くなるんだ?」
「さあ?」それは良く分からないけど。
「だいたい、バルトは見た目はああだが中身はヘタレだ。」
え?そうなのか。それは複雑な気分だ。
「おい、なんだよ!芋しかないのかよ!」
さっきの二人連れが大声で文句を言っている。
「ここの宿の名物料理は芋とシチューだ。」
隣のテーブルから親切にもフォローの声が掛かる。
「まじかよぉ。やっぱり、王都まで行ってから泊ればよかったぜ。」
刺青の男がさらに続けた。それに、細身の男の方も同調してその場に響き渡る声で話す。
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