僕はまだ料理人ではないけれど異世界でお食事処を開きます。

佐間瀬 友

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25話 魚釣りと潮干狩り

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「う~ん。」
僕は大きく伸びをするとベッドから起き上がった。
数日振りにバルモアの家で目覚めた朝だ。高校が始まったこともあり、学校が終わった後に毎日来てはいたけど、寝る時はマンションに帰っていた。こっちの家に泊ったのは久しぶりだ。
今日は叔父さんがやっと長期出張から少しだけ帰ってきているので、叔母さんがマンションに戻っていた。叔母さんはまだ叔父さんをこの世界に招待するつもりはないらしい。

着替えて裏口から外に出る。家の裏手にある蛇口で顔を洗うともう一度伸びをした。ここの水も厨房と一緒で井戸から組み上げているので冷たくて気持ちいい。裏口のすぐ横に、湯舟はないけどシャワーがある。普通は水しか出ないらしいが、クローディアの魔法のお陰でこの家のシャワーはお湯が出る。
魔法って素晴らしい。

まだ、早い時間だと思うけど遠くの畑でもう働き出している人の人影が見える。
お隣りのエマの両親だろうか?

そう思って見ていると、隣の家の裏庭にある大きな鶏小屋からエマが籠を抱えて出てくるのが見えた。僕に気が付くと胸元で手を振って挨拶をしてくれる。こっちもお返しに手を振り返した。

家の中に入ろうと思ったら、エマが小走りにこちらに向かって掛けて来た。
「おはよう。」
まだ朝で空気が冷たいせいかエマの頬は赤かった。
「おはよう、いつも早いね。」
「卵がたくさん取れたけどいるかしらと思って。」
エマが抱えていた籠にはおが屑が入っていて、その上に卵がびっしり並んでいた。産みたての卵だ。
「うわぁ。いるいる。ありがとう!」

エマは自分の家の鶏小屋を任されているらしく、鶏の世話だけではなく毎朝生みたての卵を取ってくる役目もこなしていた。お隣さんのよしみで時々こうして卵を分けてくれる。
まだ温かい生みたての卵をいくつか分けてもらうと顔を拭いた布にくるんで気を付けて厨房まで運んだ。

「おっはよ~!」
カネルがいつものように元気に挨拶をしてくれる。おはようと僕も挨拶をして、今朝使う分だけ卵を取り分けると残りは保冷庫の棚にある籠に入れた。代わりに保冷庫の棚からバルトさんのところから買っておいたベーコンを持ってくる。

この辺りの家は自宅で鶏や牛を飼っていて、卵や牛乳は自家製だ。飼っていない家は他の家から分けてもらうのだが、僕はもちろん飼っていないので大体は叔母さんがバルトさんの家から分けてもらって保冷庫に入れておいてくれる。僕も鶏や牛を飼いたいけど、毎日世話をできるわけではないので仕方がない。

「カネルお願い。」そう言ってフライパンをコンロに乗せる。
「了解!!」カネルがそう言うとフライパンの下に火がついた。

ベーコンと目玉焼きで良いかな?そう思って振り向くとカウンター席にクローディアが座っていて驚いた。
「うわっ!ビックリした!」
僕のリアクションにもクローディアは反応せず、良く見るとずいぶん眠そうだった。
「おはようって顔じゃないね?寝不足?」
「...3日3晩、目を離せない薬を煮込んでいたから寝ていない。」

そう言うとカウンターに置いてあった、牛乳がたっぷり入ったピッチャーをぐいっと押してよこし、ふわぁ~と可愛い欠伸をした。どうやら、牛乳を差し入れてくれたようだ。今朝は叔母さんが居ないので牛乳は保冷庫に入っていなかったからありがたい。
「ありがとう。っていうか、3日も寝ていないって体に悪そう。」
「眠い。」
まあ、それはそうだろう。ついでにクローディアのお腹がきゅるきゅると鳴る。

僕はベーコンと目玉焼きだけの予定だった朝食を変更して、もう一度保冷庫に野菜を取りに行く。パプリカがあったのでそれとベーコンを細く刻んでオムレツを作ることにする。目玉焼きだけよりかさましできるし、栄養価も高いだろう。

バターをたっぷり溶かしたフライパンに卵を流し入れる。ジュワ~といい音がした。フライパンを振ってオムレツを作ると半分ずつ皿に盛り一つをクローディアの前に出した。クローディアが持ってきてくれた牛乳もコップに注いで出す。

「とりあえず、これ食べていて。」

クローディアは眠そうながらもコクりと頷くとフォークを掴んだ。
それを見てほっとすると僕は大量のじゃがいもを細く刻む。
それに塩コショウを振って良く混ぜるとこれもフライパンにドサッと入れる。ギュッとフライパンに押し付けて焼いていく。
ジュージューと良い音がする。じゃがいものガレットだ。
この国の主食はじゃがいもで、安価に手に入れることが出来る。

あと、嬉しかったのが乳製品!例えばチーズは保存食になるからか、色々な種類のものをどこの家庭でも作っていて、比較的手軽に手に入った。日本だとチーズは高くてたくさん使うとちょっと罪悪感にかられるけど、ここではそんなことはない。つい、色々な料理に使ってしまう。
今回もガレットをひっくり返して反対側も押し付けて焼き上げるとおろしたチーズをたっぷりかけて皿に盛る。
食べやすいようにいくつかに切れ目を入れるとガレットの大皿と自分の分のオムレツの皿を持ってクローディアの横に座った。

「ディア?お待たせ。大丈夫?」
オムレツはとっくに食べ終わっていたクローディアはフォークを握りしめたままうとうとしていた。

自分の分のガレットをひと切れオムレツの横に取ると、残りは大皿ごとクローディアの前に出す。
それを見てクローディアの目がパチリと開いた。

「熱いから気をつけて。」
僕の言葉が聞こえているのかいないのか猛然と食べ出す。
「良かった、この国の主食のじゃがいも料理だから口に合ったみたいだね。」
それを聞いて、猛然と食べていたクローディアの手が止まる。
「?」
「お前の料理は何でも美味しい。」
「!」
そういうとまたじゃがいもをぱくぱくと食べだした。
僕は思わず顔がにやけそうになり手で口を押えた。

「僕、今日は釣りに行ってくるから、もし上手く釣れたら夜は魚料理にするけど食べに来る?」
最後に作っておいた自家製ヨーグルトを出す。
こくんと頷くとヨーグルトも綺麗に平らげるてクローディアは言った。
「どこに、釣りに行くんだ?」
「いや、直ぐそこ。バルトさんの宿の裏だけど。」
道を挟んだ向かいにあるバルトさん家の宿は裏庭が海に面している。

シュミットさんが作ってくれた釣り竿で、遠くまで行かなくても小さめの魚なら結構簡単に釣れる。
この前もアジに似た魚が釣れたのでフライにしたら、ふわふわで美味しかった。獲れたての魚に新鮮な卵と牛乳、今までは味わった事のないものをこの世界に来てから堪能している。

「そうか、じぁあついでに、水際の砂を掘ってみると良い。貝が取れる。」
「貝?」
「ああ、この辺りでは貝を食べないから誰も捕らないし、たぶん簡単に取れるぞ。」
へ~、それは嬉しい。
「分かった!ありがとう。」
「私はいったん帰って夕方まで寝る。」
「そうだね。その方が良さそう。」
食事をして多少目が覚めたようだけど、そんなに寝てないなら早く寝た方が良い。

「そういえば、ディアっていつも良いタイミングで現れるけど、どうやって僕がこの家に居るって分かるの?」
いつも居るわけではないのに、この家で料理を始めるとちょうど良いタイミングで現れるからいつも不思議だった。
「それは、見ることができるから...。」
「見る?」どうやって?
「水鏡とか、他のものを使ってもいいが、魔法使いは遠見ができる。魔法使い同士ならそれを使って話すこともできる。知っている人間ならなおさら簡単だ。」
「なるほど。」
そんな便利な魔法があるのか。この前マーリーンさん達を呼んだのもそれを使ったのかな。

「別にいつも見ている訳ではないぞ...。腹が減った時とかだぞ?」クローディアは不安そうな顔をして尋ねてきた。
「うん、それは分かっているよ。」お腹が減った時というのがクローディアらしいけど。
「そうか?嫌じゃないか?」
「うん、全然。便利だよね。」お腹が減った時以外も来てくれていいんだけど。
「そうか。良かった。じゃあ、また夕方に来る。」

クローディアがホッとしたように言うとシュンと音を立てて消えた。最初の頃は扉から出て行ったのに、僕以外の人が居ないと魔法を使って帰っていく。
それが少し気を許してくれているようで嬉しかった。

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