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36話 赤と白
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お土産を付けるようになって、僕のスウィーツのレパートリーもだいぶ増えて来ていた。
今まではお菓子作りまではあまり手を出していなかったのだけど、作りだしてみると面白くなってくる。しかも、材料も和食を作るよりもむしろ手に入りやすい。色々試してみるのも面白そうだ。
その日は昼ご飯を簡単に済ませて、パンケーキを作っていた。
クローディアと叔母さんが二人でカウンター席に座ってパンケーキが焼けるのを待っている。
ジェイが作ってくれた鉄板が大いに役立ってくれて、パンケーキを何枚もまとめて焼くことができた。
しかも、僕が卵白を泡立てるのに苦戦していると、クローディアが魔法で簡単に泡立ててくれる。泡だて器が勝手にクルクルと回ると、ピンッと角が立つ立派なメレンゲがあっという間に出来上がった。手で押さえなくても勝手に泡立ててくれるので電動ミキサーより優秀だ。
バンッと大きな音がして表の扉が開いた。
「ヒルダ・ノルディカ!」
クローディアと同じぐらいの女の子が仁王立ちしていた。印象的な真っ赤なフワフワの髪の毛に大きなグリーンの目、華やかな顔立ちの美少女だ。見た目は全然クローディアとは違ったけど、恐らく魔女だと思った。服装がクローディアと同じ真っ黒だったから。黒いウエストを絞ったワンピースに黒いブーツにつば広の帽子。その少女が入ってくるなり叔母さんのこの世界でのフルネームを叫んだ。
一瞬、叔母さんがこの子に何か恨みでもかっているのかと頭をよぎったがそれは思い違いだったようだ。
叔母さんも立ち上がると「ミリー!」と呼んでその子を抱きしめたから。
「久しぶりだな!リコも元気だったか?」
そう言って叔母さんはミリーと呼ばれた少女の後ろに立っていたもう一人も抱きしめた。もう一人後ろにいたのに僕は全然気が付かなかった。
というのも、ミリーと呼ばれた彼女が真っ赤な髪に綺麗な緑の瞳、白い肌に黒い衣装と鮮やかな色彩を放っていたのに比べて、後ろに立っていた男は無彩色と言っても構わない色合いだったからだ。
白い肌に肩までの白い髪の毛、瞳の色は唯一色がついていたけどかなり淡いアメジスト色。着ている服はマーリーンさんのように真っ白なローブだったけど、凝った刺繍が入っていたマーリーンさんの物とは違い装飾がないシンプルなものだった。
ただ、顔立ちが整い過ぎるほど整っていて怖いくらいだった。そして、叔母さんのハグに対してもほぼ無表情だった。
「なんだ、クローディアもいたの?」
赤毛の少女はカウンター席に座っているクローディアを見ると嫌そうな顔をしてふんっとそっぽを向いた。クローディアはそれをちろりと見ると何も言わずにまた正面に向き直った。あれ?ルーやマーリーンさんと同じ魔法使いなのに仲が良いわけではないのかな?
「ミリー、リコ。あれが私の甥、姉さんの息子だ。」
叔母さんが僕の事を紹介してくれたので厨房から出て挨拶をする。
「お前がイルゼの子供か!」
そう言うと彼女は握手のために差し出した僕の手は無視して、勢いよく抱き着いてきた。いきなり初対面のしかも華やかな美少女に抱き着かれて困惑する。
「イルゼ?」
「イルゼって言うのは、お前の母さんのこの世界での名前だ。」
叔母さんが説明してくれる。そういえば聞いたような聞かなかったような?
「私は赤の魔法使い、ミリセント。ミリーと呼んでくれてかまわない。イルゼの息子。こっちが、白の魔法使い、リコだ。」
やっぱり、5人の魔法使いの残りの二人だったようだ。
彼女は抱き着いた腕は緩めてくれたけど、今度は僕の手を両手でぎゅっと力強く握りしめる。
リコと呼ばれた白の魔法使いは軽く頷いただけで握手をする気はなさそうだった。
「リコは人見知りで私にしか懐かないから気にしないで。」
ミリセントはそう言うと突っ立っている僕の両腕を離さずに感慨深げに言った。
「それにしても、良く無事に大きくなったな。」
え~と、見た目が自分より小さな女の子に言われても複雑な気分だ。しかも、心なしか彼女の目が潤んでいる。
「母さんの知り合いなんですね。」
初対面でこんなに息子の僕に対して親愛の態度を示してくれるなんて、どうやらよほど母さんと親しい知り合いだったのだろう。
「ああ、お前の母さんのイルゼとは仲良くさせてもらっていた。」
「ぷっ!仲良くさせてもらっていた~?」
何故か、叔母さんは噴出すとからかう様に笑った。
「ヒルダ!」
ミリセントの焦ったような声は無視して叔母さんは続ける。
「信奉していました~、の間違いじゃないのか?もしくは、好きで好きで仕方がありませんでしたか。」
「ヒルダ、黙れ!」
ミリセントが真っ赤になってプリプリと叔母さんに怒りだした。
「私はイルゼを人として尊敬していたんだ!お前のようなじゃじゃ馬と違って彼女は淑女の鏡だったからな!」
淑女の鏡?まあ、確かに僕にとっては優しくて大好きな母親ではあったけど、ちょっと抜けているところのある至って普通の人だったと思う。今となっては、知らない世界に飛ばされて色々と分からないことだらけで苦労したのだろうと分かるけど。いったい若い頃の母親はどんな人間だったのだろう。
今まではお菓子作りまではあまり手を出していなかったのだけど、作りだしてみると面白くなってくる。しかも、材料も和食を作るよりもむしろ手に入りやすい。色々試してみるのも面白そうだ。
その日は昼ご飯を簡単に済ませて、パンケーキを作っていた。
クローディアと叔母さんが二人でカウンター席に座ってパンケーキが焼けるのを待っている。
ジェイが作ってくれた鉄板が大いに役立ってくれて、パンケーキを何枚もまとめて焼くことができた。
しかも、僕が卵白を泡立てるのに苦戦していると、クローディアが魔法で簡単に泡立ててくれる。泡だて器が勝手にクルクルと回ると、ピンッと角が立つ立派なメレンゲがあっという間に出来上がった。手で押さえなくても勝手に泡立ててくれるので電動ミキサーより優秀だ。
バンッと大きな音がして表の扉が開いた。
「ヒルダ・ノルディカ!」
クローディアと同じぐらいの女の子が仁王立ちしていた。印象的な真っ赤なフワフワの髪の毛に大きなグリーンの目、華やかな顔立ちの美少女だ。見た目は全然クローディアとは違ったけど、恐らく魔女だと思った。服装がクローディアと同じ真っ黒だったから。黒いウエストを絞ったワンピースに黒いブーツにつば広の帽子。その少女が入ってくるなり叔母さんのこの世界でのフルネームを叫んだ。
一瞬、叔母さんがこの子に何か恨みでもかっているのかと頭をよぎったがそれは思い違いだったようだ。
叔母さんも立ち上がると「ミリー!」と呼んでその子を抱きしめたから。
「久しぶりだな!リコも元気だったか?」
そう言って叔母さんはミリーと呼ばれた少女の後ろに立っていたもう一人も抱きしめた。もう一人後ろにいたのに僕は全然気が付かなかった。
というのも、ミリーと呼ばれた彼女が真っ赤な髪に綺麗な緑の瞳、白い肌に黒い衣装と鮮やかな色彩を放っていたのに比べて、後ろに立っていた男は無彩色と言っても構わない色合いだったからだ。
白い肌に肩までの白い髪の毛、瞳の色は唯一色がついていたけどかなり淡いアメジスト色。着ている服はマーリーンさんのように真っ白なローブだったけど、凝った刺繍が入っていたマーリーンさんの物とは違い装飾がないシンプルなものだった。
ただ、顔立ちが整い過ぎるほど整っていて怖いくらいだった。そして、叔母さんのハグに対してもほぼ無表情だった。
「なんだ、クローディアもいたの?」
赤毛の少女はカウンター席に座っているクローディアを見ると嫌そうな顔をしてふんっとそっぽを向いた。クローディアはそれをちろりと見ると何も言わずにまた正面に向き直った。あれ?ルーやマーリーンさんと同じ魔法使いなのに仲が良いわけではないのかな?
「ミリー、リコ。あれが私の甥、姉さんの息子だ。」
叔母さんが僕の事を紹介してくれたので厨房から出て挨拶をする。
「お前がイルゼの子供か!」
そう言うと彼女は握手のために差し出した僕の手は無視して、勢いよく抱き着いてきた。いきなり初対面のしかも華やかな美少女に抱き着かれて困惑する。
「イルゼ?」
「イルゼって言うのは、お前の母さんのこの世界での名前だ。」
叔母さんが説明してくれる。そういえば聞いたような聞かなかったような?
「私は赤の魔法使い、ミリセント。ミリーと呼んでくれてかまわない。イルゼの息子。こっちが、白の魔法使い、リコだ。」
やっぱり、5人の魔法使いの残りの二人だったようだ。
彼女は抱き着いた腕は緩めてくれたけど、今度は僕の手を両手でぎゅっと力強く握りしめる。
リコと呼ばれた白の魔法使いは軽く頷いただけで握手をする気はなさそうだった。
「リコは人見知りで私にしか懐かないから気にしないで。」
ミリセントはそう言うと突っ立っている僕の両腕を離さずに感慨深げに言った。
「それにしても、良く無事に大きくなったな。」
え~と、見た目が自分より小さな女の子に言われても複雑な気分だ。しかも、心なしか彼女の目が潤んでいる。
「母さんの知り合いなんですね。」
初対面でこんなに息子の僕に対して親愛の態度を示してくれるなんて、どうやらよほど母さんと親しい知り合いだったのだろう。
「ああ、お前の母さんのイルゼとは仲良くさせてもらっていた。」
「ぷっ!仲良くさせてもらっていた~?」
何故か、叔母さんは噴出すとからかう様に笑った。
「ヒルダ!」
ミリセントの焦ったような声は無視して叔母さんは続ける。
「信奉していました~、の間違いじゃないのか?もしくは、好きで好きで仕方がありませんでしたか。」
「ヒルダ、黙れ!」
ミリセントが真っ赤になってプリプリと叔母さんに怒りだした。
「私はイルゼを人として尊敬していたんだ!お前のようなじゃじゃ馬と違って彼女は淑女の鏡だったからな!」
淑女の鏡?まあ、確かに僕にとっては優しくて大好きな母親ではあったけど、ちょっと抜けているところのある至って普通の人だったと思う。今となっては、知らない世界に飛ばされて色々と分からないことだらけで苦労したのだろうと分かるけど。いったい若い頃の母親はどんな人間だったのだろう。
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