38 / 47
38話 看板
しおりを挟む
高校生活最初の夏休みに入って直ぐだった。叔父さんの学生時代のようにスポーツ選手として活動しているような、ごく一部の特殊な生徒。そんな生徒を除けば、同級生はそれほど盛んではない部活動か、アルバイトに励んでいる頃だろう。僕は夏休みのほとんどをバルモアで趣味の料理に費やそうと決めた。
前日から仕込んでおいた材料を使って僕は少し遅い昼食の準備をしていた。
ジェイとシュミットさんが会場の配置を整えてくれる。
4人掛けのテーブルを並べて長テーブルにすると、椅子は壁際に避けて並べる。
それでも足りないだろうと、エマが宿から借りてきた残りの椅子を家の外にも並べていた。
にんにくを効かせたローストビーフとチーズのサンドウィッチ、焼き立てのスコーン、新鮮なトマトとキノコのペンネ、鶏の唐揚げにカリカリに揚げたフライドポテトを山盛りに。搾りたての牛乳で作ったカスタードクリームがたっぷり詰まったシュークリーム、餡子とみたらしの串団子、フルーツの盛り合わせなどのデザート。和洋織り交ぜてビュッフェ形式で大皿に盛りテーブルに並べた。昼間なので飲み物は冷えたアイスティーとレモンジュースをピッチャーに入れて料理の大皿の横に並べておく。
続々と集落の人達が家の前に集まって来る。まるでちょっとしたお祭りの様だ。
まず、シュミットさんが集落の皆から贈られた看板を梯子を使って入口の扉の上に吊り下げてくれる。楕円形の木製の看板に書かれている文字はこの国で言うところのお食事処といった感じの意味合いらしい。
そう、遂にこの場所を店として改めてオープンすることにしたのだ。常連さんたち、アデルさんやエマ達、何故か女性陣の後押しもあり、店としてやっていこうと決めたのだ。実はスポンサーでもあるクローディアの「ぜひやるべきだ。」の一言が大きかったのもある。
といっても長期の休み以外は今までと同じ僕の都合で店を開ける日を決めるつもりだけど。あくまでも学業優先というのは叔母さんにも約束させられた。
でも今度から、黒板に今日のメニューでも書けるようにしようか、と考える。
その為にはこの国の文字を勉強しなくては。勇者の剣のお陰で言葉は話せても文字の読み書きはできないのだ。そう考えると日本語が話せて書ける叔母さんと母さんってすごかったんだなぁと今更ながら感心する。相当な努力が必要だっただろう。
看板を付けてもらうと見守っていた回りの人達から自然と拍手が沸き起こり僕は照れて頭を下げると「ありがとうございます。」とお礼を言った。
ちなみに看板を下げることイコールプロの飲食店と認められて税金が発生するそうだ。つまり、今までは看板がないもぐりの食べ物屋だったわけだ。
その辺りの事を王都に占いの店を構えているルーのところに行って相談すると、店自体はクローディアの持ち物だから税金は不要と言われた。
「だいたい、俺たち魔法使いがこの国にいるだけで十分な恩恵を授けているんだ。そんな物払う必要なんてないよ。むしろ居てくださってありがとうございますとお礼を頂きたいくらいだよ。」
そうルーは鼻息荒く言い放った。
それでも僕が不安に思っているのが分かったのだろう。だって、店をやるのは実際の所、魔法使いではなくただのよそ者なわけだし...。
クローディアがマーリーンにも一応確認してみようと言ってくれる。ルーも仕方がないなぁと言って、ルーが占いに使っているという大きな水晶玉に話しかけた。どこかの部屋に居るマーリーンさんの後姿が写った。
「マーリーン、ちょっといい?」
ルーが水晶玉のマーリーンさんに話しかけると振り返ったマーリーンさんの疲れ切った顔にぎょっとする。それでなくても白かった顔が更に青白くなって良く見ると綺麗な顔に隈が出来ている。
「ちょっと、マーリーン大丈夫!?まだ引きこもって新しい薬の調合してるの?」
ルーも心配そうに声を掛ける。
「ああ、ルーか。まあ、あと少しで出来上がりそうなんでね。ところで何だい?クローディアも一緒なのか?」
「ああ、それがさぁ...。」ルーが僕が店を開くことを説明してくれた。
「なるほど。まあ、税金は払う必要は無いが心配なら私が国の許可書を発行して届けさせるよ。いつ正式に開くのか分かったら連絡しておくれ。その頃までにはこれを仕上げて私もお祝いに伺おう。」
そう言ってどす黒い液体が入った怪しいビーカーを水晶玉越しにかざすとニヤリと笑ったマーリーンさんの姿は消えた。申し訳ないけど長い銀髪と青白い顔が美形の幽霊の様でなかなかの怖さだった。
ルーはだから言ったじゃないかと呆れたように言った。
「あのねぇ、なんでこのバルモア王国が他国からの侵略を受けないで平和なのか分かる?決してこの国の軍隊が強いからじゃないよ?この国に5人の魔法使いの内3人もがいるからだよ。そんなのこの世界の人間なら子供だって知っているんだから。まあ、クローディアは別にこの国に仕えている訳ではないけど、バルモア王国からしたらぜひいて欲しい訳だ。そんなんだから、クローディアからはもちろん、彼女の大のお気に入りのお料理番の君から何かを取ろうなんて恐ろしくて国王だって絶対しないよ。」
そんなわけで、特に問題もなくマーリーンさんから許可書が送られてきて今日の運びとなった。
前日から仕込んでおいた材料を使って僕は少し遅い昼食の準備をしていた。
ジェイとシュミットさんが会場の配置を整えてくれる。
4人掛けのテーブルを並べて長テーブルにすると、椅子は壁際に避けて並べる。
それでも足りないだろうと、エマが宿から借りてきた残りの椅子を家の外にも並べていた。
にんにくを効かせたローストビーフとチーズのサンドウィッチ、焼き立てのスコーン、新鮮なトマトとキノコのペンネ、鶏の唐揚げにカリカリに揚げたフライドポテトを山盛りに。搾りたての牛乳で作ったカスタードクリームがたっぷり詰まったシュークリーム、餡子とみたらしの串団子、フルーツの盛り合わせなどのデザート。和洋織り交ぜてビュッフェ形式で大皿に盛りテーブルに並べた。昼間なので飲み物は冷えたアイスティーとレモンジュースをピッチャーに入れて料理の大皿の横に並べておく。
続々と集落の人達が家の前に集まって来る。まるでちょっとしたお祭りの様だ。
まず、シュミットさんが集落の皆から贈られた看板を梯子を使って入口の扉の上に吊り下げてくれる。楕円形の木製の看板に書かれている文字はこの国で言うところのお食事処といった感じの意味合いらしい。
そう、遂にこの場所を店として改めてオープンすることにしたのだ。常連さんたち、アデルさんやエマ達、何故か女性陣の後押しもあり、店としてやっていこうと決めたのだ。実はスポンサーでもあるクローディアの「ぜひやるべきだ。」の一言が大きかったのもある。
といっても長期の休み以外は今までと同じ僕の都合で店を開ける日を決めるつもりだけど。あくまでも学業優先というのは叔母さんにも約束させられた。
でも今度から、黒板に今日のメニューでも書けるようにしようか、と考える。
その為にはこの国の文字を勉強しなくては。勇者の剣のお陰で言葉は話せても文字の読み書きはできないのだ。そう考えると日本語が話せて書ける叔母さんと母さんってすごかったんだなぁと今更ながら感心する。相当な努力が必要だっただろう。
看板を付けてもらうと見守っていた回りの人達から自然と拍手が沸き起こり僕は照れて頭を下げると「ありがとうございます。」とお礼を言った。
ちなみに看板を下げることイコールプロの飲食店と認められて税金が発生するそうだ。つまり、今までは看板がないもぐりの食べ物屋だったわけだ。
その辺りの事を王都に占いの店を構えているルーのところに行って相談すると、店自体はクローディアの持ち物だから税金は不要と言われた。
「だいたい、俺たち魔法使いがこの国にいるだけで十分な恩恵を授けているんだ。そんな物払う必要なんてないよ。むしろ居てくださってありがとうございますとお礼を頂きたいくらいだよ。」
そうルーは鼻息荒く言い放った。
それでも僕が不安に思っているのが分かったのだろう。だって、店をやるのは実際の所、魔法使いではなくただのよそ者なわけだし...。
クローディアがマーリーンにも一応確認してみようと言ってくれる。ルーも仕方がないなぁと言って、ルーが占いに使っているという大きな水晶玉に話しかけた。どこかの部屋に居るマーリーンさんの後姿が写った。
「マーリーン、ちょっといい?」
ルーが水晶玉のマーリーンさんに話しかけると振り返ったマーリーンさんの疲れ切った顔にぎょっとする。それでなくても白かった顔が更に青白くなって良く見ると綺麗な顔に隈が出来ている。
「ちょっと、マーリーン大丈夫!?まだ引きこもって新しい薬の調合してるの?」
ルーも心配そうに声を掛ける。
「ああ、ルーか。まあ、あと少しで出来上がりそうなんでね。ところで何だい?クローディアも一緒なのか?」
「ああ、それがさぁ...。」ルーが僕が店を開くことを説明してくれた。
「なるほど。まあ、税金は払う必要は無いが心配なら私が国の許可書を発行して届けさせるよ。いつ正式に開くのか分かったら連絡しておくれ。その頃までにはこれを仕上げて私もお祝いに伺おう。」
そう言ってどす黒い液体が入った怪しいビーカーを水晶玉越しにかざすとニヤリと笑ったマーリーンさんの姿は消えた。申し訳ないけど長い銀髪と青白い顔が美形の幽霊の様でなかなかの怖さだった。
ルーはだから言ったじゃないかと呆れたように言った。
「あのねぇ、なんでこのバルモア王国が他国からの侵略を受けないで平和なのか分かる?決してこの国の軍隊が強いからじゃないよ?この国に5人の魔法使いの内3人もがいるからだよ。そんなのこの世界の人間なら子供だって知っているんだから。まあ、クローディアは別にこの国に仕えている訳ではないけど、バルモア王国からしたらぜひいて欲しい訳だ。そんなんだから、クローディアからはもちろん、彼女の大のお気に入りのお料理番の君から何かを取ろうなんて恐ろしくて国王だって絶対しないよ。」
そんなわけで、特に問題もなくマーリーンさんから許可書が送られてきて今日の運びとなった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
【短編】子猫をもふもふしませんか?〜転生したら、子猫でした。私が国を救う!
碧井 汐桜香
ファンタジー
子猫の私は、おかあさんと兄弟たちと“かいぬし”に怯えながら、過ごしている。ところが、「柄が悪い」という理由で捨てられ、絶体絶命の大ピンチ。そんなときに、陛下と呼ばれる人間たちに助けられた。連れていかれた先は、王城だった!?
「伝わって! よく見てこれ! 後ろから攻められたら終わるでしょ!?」前世の知識を使って、私は国を救う。
そんなとき、“かいぬし”が猫グッズを売りにきた。絶対に許さないにゃ!
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる