長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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潜入 二

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 圭が手伝いを始めるまで依頼客の八割は外国人、二割は知人という状態だった。今では圭の姿を見て五割は留まるようになったが、外国人と少女という誤解が当たり前となりつつある。

「ご依頼を伺いましょう」

 圭に座るよう促して、隼人は帳面を開き、万年筆の蓋を外した。

「実は、上の娘に縁談があるのだよ。とても良い話で、わしも家内も両手を上げて喜んでいるのだが」

 富山は一冊の、千代紙の貼られた帳面を鞄から取り出した。

「上の娘は女子学習院を来年卒業する。

 親のわしがいうのもなんだが、まぁ、器量もなかなかだし、花嫁修業も完璧で、淑やかな、どこへ嫁がせても問題のない、自慢の娘なのだが、下の娘が少々」

「姉が高子たかこさん、妹が園子そのこさんでしたね。確か、一卵性双生児」

 二人を知らぬ圭への説明のつもりで呟く。

「そう、園子がね、どうやら男にたぶらかされているようなのだよ」

 富山が開いた頁には、成る程、新しい女の恋が綴られている。

『姉様も私の周りの女も親が決めた相手に唯々諾々と嫁ぐのだろう。

 しかし私は違う。自分の未来は自分で決める。たとえ父に逆らうことになろうとも、愛するあの方と共に新しい時代を育むのだ』

『男の言いなりになるだけの人生など私は望みはしない。私は自分で稼ぎ自分で生活し未来を切り拓く。自分だけの力で』

『あの方の告白は私を喜ばせた。私だけを愛していると。私も他の誰も見えはしない』

 ここ一月、毎日記された日記は、殆ど天気と授業、少女らしくその日頂いた甘い物など、差し障りのないのだが、内三日分はこの通りで、年頃の娘を持つ父親が慌てる気持ちは理解できる。

「園子も女子学習院へ行かせるつもりだったのだが、どうしても嫌だと言い張り、親が根負けした次第だ。我が儘な娘でね」

「相手は勿論、分からないのですね」

「わからない。

 我が家では使用人の男と言っても、若い者はいない。女学校への行き来は車だし」

「運転手は?」

「五十近い男だが」

「ありませんね」

「私の目の届かぬのは女学校だけ。

 隼人君、どうかお願いだ。妙な男に引っかかったり、いや、万一はらまされたりしたら」

「女学校で、それはないでしょう」
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