長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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関係

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 帰り着くと、仏頂面の山上が漬物をバリバリやりながら、お茶を啜っていた。

「よ、不機嫌そうだな」

「どうにも怒りが治まらないね。

 生徒なんかどうでも良いんだとよ、あの女学校は。醜聞は御免だから、他言するなと言われた。

 他言しないと約束する書類に判を押せと言われたんで、無視して帰って来た」

「まぁ、あそこはお堅いので有名な女学校だからな」

「世間体ばかりを気にしてるだけだろ」

「世間体を考えれば、被害者もその親も、知られたかぁないだろう」

「そうも言われた。

 それは理解できるし、他言しようとは思わないさ。けどな、警察にも喋るなと言われりゃ、断るしかあるまい」

「そりゃ、そうだな。

 ところでな、富山家の姉娘の縁談だが、相手ってか、相手の家が分かった」

 まるで敵ででもあるかのようにバリバリと噛みしだいていた漬物の音が、突然止んだ。

「どこだ?」

「どこだと思う? まず考えつかない家だ」

「華族だろうと見当は付けているが」

「さすが隼人」

「新華族ではないだろう」

「正解」

「しかし、巾が広すぎる」

「どこだ?」

 漬物をすっかり飲み込んで、真剣な顔で山上が問う。

「八田伯爵家」

「八田伯爵家って、二つもあるのか?」

「八田男爵家はあるけど、伯爵家は一つだけだ」

「だったらおかしくないか? 八田には娘二人しかいないはずだ。どうして富山の娘と縁談が起こる?」

「乗っ取りだよ」

 どこで買って来たのか、勇一郎は紙包みを解き、饅頭を皆の真ん中に置き、反射のように隼人は、お茶を淹れるべく湯を沸かし始めた。

「姉姫の婿が、自分の甥を跡取りとして籍を入れ、八田伯爵家を継がせるつもりなんだ」

「常識的には八田側の親族から迎えるものじゃないのか?」

「いえ、それ以前に、次を継ぐのは百合子さんのお姉様のお子様では?」

「八田の姉姫は体が弱くて、子供は望めないだろうとの噂だよ」

「では、百合子さんのお子様が」

「彼女は……」

 隼人は言葉を切って、作り笑いを浮かべた。

「男、苦手だろう?」

「そいういうのは一時の感情であることが多い。

 しかしなんだ、婿の勝手を家族は黙っているのか?」

「口を出せる家族がいないんだよ。

 体が弱く、大人しい長女と、未成年の妹。八田家を破産させかけた当主と、暴力で人を従えようとする隠居。男共は養子だし、家にさほど興味はないらしい」
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