45 / 184
根付 ニ
しおりを挟む
「今日とは限らないだろう?」
「まぁ、そうですな」
「麻上君、人に恨みを買った覚えは?」
「それなりにあります」
真剣な表情に、勇一郎は苦笑した。
「私は融通が利かない性格なので、嫌われていたと自覚しています」
「不真面目学生に。だな。
ってこたぁ、遊郭にわざと置いていくってのは、ありそうなことだな。
そういや、顔を見た奴がいるんだろう?」
大森は頷いた。
「ですが、一瞬だけだったそうで、はっきりは覚えていないと。ただ、綺麗な顔だったとだけ」
「まぁ、現場不在証明に関しては、ここにいる三人皆が証言するから」
勇一郎の言葉に頷いた後、圭から、中学の時、仲の悪かった生徒の名を聞いて、帳面に書き留めた。
「殺されたのが可哀想な娘でね。
父親が事業に成功して、社交界に出入りするようになった。で、娘を学習院に入れたものの、四年の時に破産してね。
男とは口も利くなと躾けられた箱入りが、次の日からは客を取らされるんだから、堪ったもんじゃありませんぜ。
金に困ったとは言え、自分の娘を売るなんざ、わしには信じられん所業ですわ」
「あれ? 大森さん娘いたっけ? 男の子三人じゃ」
突然、大森が相好を崩した。
「姪がいるんです。妹の子ですが、可愛くてねぇ。やはり、男の子とは違いますな。家に来ると華やぎます。かみさんも可愛がっていましてね。
あ、いや、息子も可愛いですが」
言いながら、山上を見てにやりと笑った。
「ところで山上さん、決まった方はおありで?」
山上はへの字口で、首を横に振った。
「実は姪が、先生に懸想していましてね」
「は? 俺は知りませんが」
「清水女学校の五年です。
昨日帰ってからずっと泣き通しだと聞いて、心配になって事情を聞いたら、山上先生が突然辞められ、もう会えないと、もう、目を真っ赤にしてですな。
いやぁ、なんというかもう、いじらしくてねぇ。
どうでしょう、山上さん。伯父のわしが言うのもなんですが、器量もなかなかの、優しい子なんですよ。花嫁修業もしとりますし」
「生徒は駄目ですよ」
山上はきっぱりと言い切ると、周りのニヤニヤ笑いを睨んだ後、下を向いた。
「生徒に手を出す教師なんて、厭でしょう? 親御さんにしても」
「しかしそりゃ、ずるいですよ。女学生は沢山おるのに、教わった子は駄目なんて」
「せめて三年は開けないと」
大森が笑顔になった。
「そりゃ、そうですな。三年あれば花嫁修業も完璧になるでしょうし。
いやぁ、山上さんは立派な先生ですな。あの子も見る目がある」
いや、大森さん。と、山上は必死に言い訳をしようとするが、全く聞いてはいない様子だった。
「まぁ、そうですな」
「麻上君、人に恨みを買った覚えは?」
「それなりにあります」
真剣な表情に、勇一郎は苦笑した。
「私は融通が利かない性格なので、嫌われていたと自覚しています」
「不真面目学生に。だな。
ってこたぁ、遊郭にわざと置いていくってのは、ありそうなことだな。
そういや、顔を見た奴がいるんだろう?」
大森は頷いた。
「ですが、一瞬だけだったそうで、はっきりは覚えていないと。ただ、綺麗な顔だったとだけ」
「まぁ、現場不在証明に関しては、ここにいる三人皆が証言するから」
勇一郎の言葉に頷いた後、圭から、中学の時、仲の悪かった生徒の名を聞いて、帳面に書き留めた。
「殺されたのが可哀想な娘でね。
父親が事業に成功して、社交界に出入りするようになった。で、娘を学習院に入れたものの、四年の時に破産してね。
男とは口も利くなと躾けられた箱入りが、次の日からは客を取らされるんだから、堪ったもんじゃありませんぜ。
金に困ったとは言え、自分の娘を売るなんざ、わしには信じられん所業ですわ」
「あれ? 大森さん娘いたっけ? 男の子三人じゃ」
突然、大森が相好を崩した。
「姪がいるんです。妹の子ですが、可愛くてねぇ。やはり、男の子とは違いますな。家に来ると華やぎます。かみさんも可愛がっていましてね。
あ、いや、息子も可愛いですが」
言いながら、山上を見てにやりと笑った。
「ところで山上さん、決まった方はおありで?」
山上はへの字口で、首を横に振った。
「実は姪が、先生に懸想していましてね」
「は? 俺は知りませんが」
「清水女学校の五年です。
昨日帰ってからずっと泣き通しだと聞いて、心配になって事情を聞いたら、山上先生が突然辞められ、もう会えないと、もう、目を真っ赤にしてですな。
いやぁ、なんというかもう、いじらしくてねぇ。
どうでしょう、山上さん。伯父のわしが言うのもなんですが、器量もなかなかの、優しい子なんですよ。花嫁修業もしとりますし」
「生徒は駄目ですよ」
山上はきっぱりと言い切ると、周りのニヤニヤ笑いを睨んだ後、下を向いた。
「生徒に手を出す教師なんて、厭でしょう? 親御さんにしても」
「しかしそりゃ、ずるいですよ。女学生は沢山おるのに、教わった子は駄目なんて」
「せめて三年は開けないと」
大森が笑顔になった。
「そりゃ、そうですな。三年あれば花嫁修業も完璧になるでしょうし。
いやぁ、山上さんは立派な先生ですな。あの子も見る目がある」
いや、大森さん。と、山上は必死に言い訳をしようとするが、全く聞いてはいない様子だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる