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上級生
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「こんな記事、気にすることはない。書いているのは噓ばかりだ」
「いいえ、確かに彼は、私の為に婚約を解消するつもりだと……」
項垂れた圭に椅子を勧めた。
向かい合って視線を避けるように項垂れたまま、新聞の内容は全くの噓では無いと言った。
「出会ったのは図書館ですし、彼の独逸語の発音の美しさに感動して、教えて欲しいと頼みもしました。
週に二三回、放課後の校庭の隅にある大きな櫻の木の下で、二時間くらい会っていました。
彼は語学に優れているばかりではなく、芸術関連にも造詣深く、話題は尽きませんでした。
私は、彼を尊敬していたのです」
「君はそうでも、彼はそうでは無かった」
「はい。
七月も終わろうとする頃、突然、婚約を解消しようと思うと言われました。
私は彼に婚約者がいるとは知りませんでしたし、正直に申し上げれば、興味はありませんでした。ですから、なぜ私にそんな話をするのかが理解できなかったのですが……」
生真面目な男なのだろうと思った。自分の気持ちに噓がつけないのだろう。しかし、圭の気持ちを理解しようとはしなかった。
いや、理解したつもりだったのかも知れない。自分と同じ気持ちに違いないと、思い込んだのだろう。
「お前の為に、婚約者も、家も棄てると言われて、私は戸惑いました。
どうしてそんな話になるのか理解できず、私は彼に、そういう感情を持ってはいないと、はっきり伝えました。もう二度と、二人だけでは会いません。と。
それから半月後、あの事件が起き、私は退学しましたから、彼とは一切、口も利かずに別れたのです」
まるで、上級生を棄てたような書き方をしていたが、圭が学校を去ったのは、母親が殺されるという最悪の事件に巻き込まれたからである。新聞記者が知らぬわけはあるまい。
それだけでもあの記事に、どれほどの悪意が盛り込まれているか分かるというものだ。
「その上級生以外に、親しくしていた相手はいるの」
圭は首を横に振った。
「いいえ。
私は人付き合いが苦手ですし、その……妙な手紙を渡されることも度々でしたから、なるべく関わらないようにしていました。
私は彼を、信頼していたのです」
「その上級生は、友達が多かった?」
「いいえ、確かに彼は、私の為に婚約を解消するつもりだと……」
項垂れた圭に椅子を勧めた。
向かい合って視線を避けるように項垂れたまま、新聞の内容は全くの噓では無いと言った。
「出会ったのは図書館ですし、彼の独逸語の発音の美しさに感動して、教えて欲しいと頼みもしました。
週に二三回、放課後の校庭の隅にある大きな櫻の木の下で、二時間くらい会っていました。
彼は語学に優れているばかりではなく、芸術関連にも造詣深く、話題は尽きませんでした。
私は、彼を尊敬していたのです」
「君はそうでも、彼はそうでは無かった」
「はい。
七月も終わろうとする頃、突然、婚約を解消しようと思うと言われました。
私は彼に婚約者がいるとは知りませんでしたし、正直に申し上げれば、興味はありませんでした。ですから、なぜ私にそんな話をするのかが理解できなかったのですが……」
生真面目な男なのだろうと思った。自分の気持ちに噓がつけないのだろう。しかし、圭の気持ちを理解しようとはしなかった。
いや、理解したつもりだったのかも知れない。自分と同じ気持ちに違いないと、思い込んだのだろう。
「お前の為に、婚約者も、家も棄てると言われて、私は戸惑いました。
どうしてそんな話になるのか理解できず、私は彼に、そういう感情を持ってはいないと、はっきり伝えました。もう二度と、二人だけでは会いません。と。
それから半月後、あの事件が起き、私は退学しましたから、彼とは一切、口も利かずに別れたのです」
まるで、上級生を棄てたような書き方をしていたが、圭が学校を去ったのは、母親が殺されるという最悪の事件に巻き込まれたからである。新聞記者が知らぬわけはあるまい。
それだけでもあの記事に、どれほどの悪意が盛り込まれているか分かるというものだ。
「その上級生以外に、親しくしていた相手はいるの」
圭は首を横に振った。
「いいえ。
私は人付き合いが苦手ですし、その……妙な手紙を渡されることも度々でしたから、なるべく関わらないようにしていました。
私は彼を、信頼していたのです」
「その上級生は、友達が多かった?」
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